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2025年度概算要求:過去最大の117兆6059億円 こども子育て、教育、社会保障などの要求額まとめ

財務省の発表によりますと、8月30日までに各省庁からの提出を取りまとめた来年度2025年度予算案の概算要求は、一般会計の総額で117兆6059億円となり、過去最大となりました。

こども子育て、教育、社会保障などの概算要求についてまとめます。

こども家庭庁:6兆4600億円 日本版DBS準備費など計上

こども家庭庁の来年度2025年度予算案の概算要求は6兆4600億円で、今年度の当初予算からおよそ2400億円増えています。

子どもを性暴力から守るための新たな制度「日本版DBS」の実施に向けた準備費などが計上されました。

こども家庭庁の概算要求によりますとは、厚生労働省から新たに移管される事業を含め、一般会計と特別会計を合わせて6兆4600億円で、今年度2024年度の当初予算から約2400億円増えています。

新規事業では、子どもに接する仕事に就く人に性犯罪歴がないか確認する、新たな制度「日本版DBS」の実施に向けたシステム開発費などのほか、各自治体に不登校の児童・生徒を支える、専門の支援員を新たに配置する費用が計上されました。

さらに、重い病気の子どもがサポートを受けながら家族と過ごせるホスピスの普及や、民間企業と連携した若い世代への結婚支援の強化策も盛り込まれています。

政府の「こども未来戦略」に明記された3人以上の子どもを扶養する「多子世帯」を対象に、大学授業料を実質無償化する事業などは、金額を示さない「事項要求」とされていて、今後の編成過程での検討が焦点となります。

文部科学省:5兆9530億円 

   

教員の処遇改善や働き方改革などへの対応

文部科学省は、教員の処遇改善などを議論してきた中教審の特別部会の提言を受けて、教員に残業代を支払わない代わりに支給する給与の上乗せ分を現在の月給の4%から13%に引き上げる案をまとめ要求しています。

教員の働き方改革や処遇改善を議論してきた文部科学省の中教審=中央教育審議会の特別部会は、今年5月に審議結果をまとめ、公立学校の教員の給与について「給特法」という法律で残業代を支払わない代わりに一律で月給の4%を上乗せしている分を、少なくとも10%以上に引き上げることなどを文部科学省に提言しています。

これを受けて文部科学省が、上乗せ分について現在の月給の4%から13%に引き上げる案をまとめ、来年度2025年度予算案の概算要求に盛り込みました。

また、文部科学省は「給特法」の改正案を2025年の通常国会に提出する予定で、実現すれば、給与の上乗せ分の引き上げは約50年ぶりとなります。

このほか、学級担任への手当の加算や管理職手当を改善するほか、「教諭」と「主幹教諭」の間に「教諭」より給与の高い新たな中堅ポストの創設についても概算要求に盛り込み、教員の処遇改善を進めることにしています。

全国の公立小中学校と高校 ネット環境改善

児童や生徒にタブレット端末などが1人1台配備され授業で活用されるなか、学校内の通信速度の低下などが課題となっているとして、文部科学省はネットワーク環境の改善に必要な支援を行うことにしました。

公立の小中学校では、1人1台にタブレット端末やパソコンなどが配備され、授業や家庭との連絡などに活用されています。

一方で、文部科学省が去年、全国の公立の小中学校と高校のおよそ3万2000校を対象にネットワーク環境を調べたところ8割近くの学校が国が推奨する通信速度を満たしていないことがわかりました。

大規模な学校ほどこうした傾向にあり、多くの児童や生徒がタブレット端末などを同時に使うことが原因とみられるということです。

今後も学校現場ではこうした端末の幅広い活用が想定されることから、文部科学省は公立の小中学校と高校に来年度2025年度から支援を始めることにしました。

具体的には、通信速度などの調査や回線契約の切り替えにかかる初期費用を補助するほか、セキュリティー対策や教職員への研修についても経費を支援することにしています。

また、今後、校内での業務に使用するクラウドシステムを各都道府県で統一して整備することを想定し、各学校のネットワーク環境の実態調査や整備に向けた工程の作成などを支

援することにしています。

文部科学省は、これらの関連費用として88億円を来年度予算案の概算要求に盛り込みました。

国立大学への運営費交付金 増額要求

国から国立大学に配分される運営費交付金について、文部科学省は来年度の概算要求で今年度と比べて3%余増額して要求しました。

ただ、ここ7年、増額要求は認められておらず、物価の高騰などを受けて国立大学から窮状を訴える声が上がる中、増額が実現するか、注目されます。

国から国立大学に配分される運営費交付金は、今年度は1兆784億円で、20年前から1600億円余り、率にして13%減少しています。

全国86の国立大学でつくる国立大学協会は、今年6月、緊急の声明を公表し、物価の高騰や円安などで切迫した財務状況にあるとして、運営費交付金の増額や、産業界からの経済的支援などを求めていました。

こうした中、文部科学省は、国立大学の活動を支える経費を十分に確保する必要があるとして、運営費交付金について来年度予算の概算要求で今年度より360億円、率にして3.3%多い1兆1145億円を求めています。

文部科学省はこれまで概算要求で運営費交付金の増額を繰り返し求めてきましたが、2018年度以降ここ7年、要求は認められず、逆に減額されてきました。

運営費交付金をめぐっては東京大学が減額などを理由におよそ20年間据え置いてきた年間の授業料の引き上げを検討していることも明らかになっていて、増額が実現するか、注目されます。

厚生労働省:過去最大の34兆2763億円計上

厚生労働省がまとめた来年度の概算要求によりますと、一般会計の総額は34兆2763億円と、今年度の当初予算より4574億円増えて過去最大となりました。

高齢化の進展に伴って、医療や年金などにかかる社会保障費が、32兆4375億円と当初予算より3677億円増えたことなどによるものです。

重点施策では、◇新薬の開発強化に向けて国際レベルの治験や臨床試験を行うための体制整備、海外で承認されている薬が国内で使えない「ドラッグ・ロス」の解消への取り組みなどに113億円、◇医薬品の安定供給に向けたシステム開発などに17億円を計上しています。

また、◇新たな感染症の流行への備えとして330億円が計上され、来年4月に設立される「国立健康危機管理研究機構」の運営にかかる経費などが盛り込まれています。

このほか、今の健康保険証の代わりとなるマイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」の利用促進や、薬の処方箋を電子化し、医療機関と薬局の間でオンラインでやりとりする「電子処方箋」の普及など、医療・介護分野のデジタル化の推進などに358億円が計上されています。以 上

筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト

元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職事件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。

その後、連合(日本労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。 

政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。

☆出稿資料☆
            

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