斎藤元彦・兵庫県知事とは?
斎藤知事は、2021年7月18日に行われた県知事選挙で初当選しました。総務省出身の官僚で、直前まで大阪府財政課長として大阪維新の会・吉村府政を支えていました。
選挙戦では、5期20年務めた前任の知事の後継をめぐって自民党が分裂し、維新の会の推薦も受け勝利しました。大阪以外での初めての維新系知事として話題になりました。
斎藤知事「パワハラ疑惑」とは
今回指摘されている様々な斎藤知事の疑惑について整理します。
斎藤知事は、就任後、副知事ら一部側近による「密室政治」との批判を浴びる一方「パワハラ」「おねだり」といった不適切な行動が指摘されていました。
今年3月12日、当時の西播磨県民局長が「斎藤元彦兵庫県知事の違法行為等について」と題された文書を県議、報道機関、県警などに配布し実名告発に踏み切りました。
文書の内容は、「職員へのパワーハラスメント」「複数企業への贈答品のおねだり」「2021年知事選での県幹部による事前運動」「業界団体に対する次期知事選の投票依頼」「政治資金パーティーにおける県信用保証協会理事長らによる購入依頼」「セ・パ優勝パレードにおけるキックバック」など7項目の疑惑が記載されていて、優勝パレードを担当した総務課長(当時)は一連の不正行為と大阪府との難しい調整が原因でうつ病を発症したとも書かれていたと報じられています。
同時に、告発文書作成の職員は県公益通報窓口に通報を行いましたが、この告発は内部通報制度に基づいて処理されず、知事側が指揮した内部調査は「パワハラはなかった」との判断を示しました。
6月13日、県議会は百条委員会を設置し、14日委員会を開会しました。しかし、7月7日、告発者の職員の死亡が確認され、10日、県職員組合が知事に辞職を申し入れ、12日には副知事が辞職しました。
更に7月14日、自民党県連大会で、事実上、斎藤に辞職を求める発言もなされました。
7月16日、県議会百条委員会の非公開理事会では、斎藤知事が公務出張した際、兵庫県上郡町の特産品のワインについて「まだ飲んだことがない」「折を見てお願いします」と所望する音声データが提出されました。
何が問題なのか?
公益通報者保護法では通報者への不利益な取り扱いを禁じ、その保護が義務付けられています。内部告発した元局長への拙速な処分は妥当だったのかどうか。公益通報制度を揺るがす事態ともなりかねない恐れがあります。
県幹部職員が死を選ばざるを得ない状況に相次いで追い込んだ斎藤県政のあり方に極めて厳しい視線が注がれ、兵庫県政は混迷を極めています。
何よりも元局長が自らの死をもって抗議した斎藤知事のパワハラ疑惑に関する真実の究明が何よりも求められています。
大石賢吾・長崎県知事とは
大石知事は、医師で厚生労働省などで勤務していました。その一方で自民党の衆議院議員候補公募に応募し続けましたが落選、しかし、県連と県医師会が中心となり2022年の知事選候補となりました。2月20日の知事選で541票という僅差で現職を下して初当選しました。
大石知事を巡る疑惑と刑事告発について
選挙直後の22年4月28日、県内の2つの政治団体が、大石知事、陣営出納責任者、選挙コンサルティング会社「ジャッグジャパン」社長の大濱﨑卓真氏らを公職選挙法違反(買収)容疑で長崎県警本部に刑事告発しました。
選挙運動費用収支報告書などによると、大石陣営はジャッグジャパンに、電話料金やショートメッセージ送信費などの「通信費」として402万円を支出していましたが、同社には電話関連業務は含まれていないため「選挙運動の報酬の可能性がある」ということです。
さらに、6月17日、元東京地方検察庁検事の郷原信郎氏と神戸学院大学の上脇博之教授が、同様の理由により公選法違反容疑(買収)で出納責任者と大濱﨑氏に対する告発状を長崎地方検察庁に提出し2024年1月15日、郷原と上脇がオンラインで記者会見しました。
今年6月24日、大石の資金管理団体「大石けんご後援会」が22年の知事選期間中に自民党・江真奈美県議会議員の資金管理団体「ごうまなみ後援会」から286万円を借り入れていたことが判明しました。
これは、医療法人など9団体が支出した286万円が自民党支部と県議の団体を経由する形で大石知事の後援会に貸し付けられていたもので、企業・団体から政治家個人や公職の候補者の資金管理団体への寄付を禁じる政治資金規正法に抵触する「迂回(うかい)献金」との疑惑を持たれているものです。
さらに、後援会の外部監査を行った経営コンサルタントから「2000万円の架空貸し付け」や「655万円詐取」の指摘を受け、重ねて刑事告発されています。
大石知事は、7月17日、県議会各派代表者会議で説明を行いましたが、県議からは「謎が深まるばかり」「納得いかない」と不満の声が相次ぎ、全員協議会(全協)開催との意見も出ています。
大石知事は、スイス・ジュネーブで行われる「核拡散防止条約(NPT)」の再検討会議準備委員会への出席を見送り、国などへの予算要望活動など、県政への影響も出始めています。
自民党の派閥の政治資金パーティーを巡る「裏金事件」が中央政界で起こる一方で、地方県政では、選挙をめぐる資金の使途、政治資金をめぐり大きな疑惑が浮上しています。まずは、大石知事から「真実」を明らかにすることが求められています。そして、告発を受けた事案について、厳正な捜査が求められています。
以 上
筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト
元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネ
コン汚職事件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。
その後、連合(日本労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙
戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。
政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。
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