受刑者に選挙権がないことは違憲であるとして、2019年、詐欺罪で懲役7年の実刑判決を受けた、長野刑務所にいる男性(36)が、8月1日に、次回の衆院選、国民審査で投票できることを 確認し、過去2回の選挙で投票できなかったことへの賠償を求める訴訟を提起した。
男性は、2021年衆院選と国民審査、今年の参院選に投票できず、精神的苦痛を受けたなどとして3万円を請求している。なお、原告の男性の刑の執行満了日は2026年3月8日。受刑者である男性の代理人を務める吉田京子弁護士(高野隆法律事務所)が会見し、「一律に選挙権まで奪うのは重大な権利侵害だ」と熱弁した。
公選法11条では、禁固以上の刑に処せられた者について「選挙権及び被選挙権を有しない」と規定されているが、2013年の大阪高裁は、選挙権についての憲法上の保障と受刑者の地位について検討し、違憲と判断しており、それにもかかわらず、その後も、国会で公選法改正の議論が進むことはなかった。そのため、原告側は「国会が必要な立法措置を怠った」と訴状で主張している。
国側は、以前の国会答弁で、「一般社会とは隔離されるような重大な犯罪を行った者を選挙に関与させるというのは適当でない」などと説明しているが、吉田弁護士は「国は今回も『受刑者は規範意識が低いから』という理由で反論してくると思う。受刑者でも、社会に関心が高い人、資格の勉強している人、処遇の改善を訴える人などさまざまいる。一律に主権者としての権利を奪うのは、重大な権利侵害」と強調し、今回の国家賠償訴訟の意義を強調する。
最高裁の判例では、選挙権の制限は原則として許されず、やむを得ない事由のある場合に限って認められるとされているが、選挙権については、成年被後見人も2013年までは認められていなかったが、東京地裁で違憲判決が出て改正されており、吉田弁護士は「本来はこの時に受刑者についても議論を進めるべきだったが、国会は放置した。最高裁には『やむを得ない事由』の検討をし、判断を示してほしい」とコメントしている。
原告の男性は、持病があるため刑務所内で治療を受ける中で、適切な医療を受けたいと処遇改善に関心を寄せていたところ、選挙権がないことについても不当だと気づいたとしている。
参考サイト:
吉田京子弁護士
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