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東京都知事選 石丸伸二氏の得票「165万票」=衆議院比例東京ブロックでは「5議席」獲得も         ~その分析と検証~

東京都知事選挙は、石丸伸二氏が165万票を獲得し2位になりました。既成政党の推薦や応援を断り、特に東京に支援組織も持たない石丸氏が、参議院議員として過去4回東京選挙区で戦った斎藤蓮舫氏の得票数を上回ったことに、政界では衝撃が走っています。きょうは石丸氏の得票数「165万票」について様々な角度から分析を行います。

(1)石丸伸二氏とは?

まず、SNSや知事選期間中の発言などから石丸氏の経歴を振り返ります。

1982年、広島県旧・吉田町(現・安芸高田市)生まれの41歳。地元の小・中学校そして県立祇園北高校から京都大学経済学部に進学しました。

大学卒業後は、大手銀行にて経済を分析・予測する専門家(アナリスト)として勤務し、4年半にわたってニューヨークに駐在した経験あるとのことです。

また、唎酒師、剛柔流空手道初段で、趣味はキャンプ、ジャグリング。高校時代の後輩にNHK大河ドラマの主演も務めた有名な女優がいるということです。

石丸氏は、参議院広島県選挙区における河井克行議員らによる選挙買収事件に関連して、当時の安芸高田市の市長が辞職したことを受けて行われた2020年の市長選挙に立候補し、当時の副市長を破り、第4代安芸高田市長に就任しました。

石丸氏は、市長就任直後の20年9月、市会一般質問中の議員の居眠りをX(旧ツイッター)に投稿したことを発端に、市議会側との対立が始まり、21年1月に市が2人目の副市長を公募して候補者を決めましたが、財政難などを理由に市議会に否決されるなど市議会との対立が深まり、こうした対立が報道されるケースが多くなっていきました。

(2)都知事選立候補へ

石丸氏は、今年5月16日、都内で行われたセミナーで都知事選に立候補する意向を明らかにし、翌日正式に立候補を表明しました。

「やらないといけないことがある。地方の衰退、これを止めるという作業だ」と動機を語

り、「政治再建、都市開発、産業創出」の3つの政策、そして「東京を動かし、日本を動かそう。東京が変われば、日本が変わります。これからも世界に誇れる国であり続けるた

めに。私達が東京を動かしましょう。」と訴えました。

(3)選挙戦は

石丸氏は、1日10か所以上で街頭演説をこなしました。具体的な政策を語るよりも、「政党に属さない人間が知事になれば、政治が変わる」などと強調し、演説時間も1回20分程度でした。

演説の動画は、陣営ボランティアによって組織的に拡散され、さらに動画を見た人が支援を申し出るサイクルができ、ボランティアの登録は陣営の発表で約5000人に達しました。ボランティアはビラ配りなどに投入され、1日15万枚のビラを配る態勢が構築されたといいます。

また、街頭演説の聴衆は日を追うごとに増え、オンラインで募った個人献金も合計2億円を超え「ネットと街頭での活動を融合させ、幅広い年代の政治に対する関心を呼び起こす」選挙戦が展開されました。

(4)「165万票」の意味を考える

石丸氏は、市長の経験があるとはいえ、政党からの支援は受けず、東京に強い支持基盤があるわけではありません。

その石丸氏が、立憲民主党、共産党などが強く支援した蓮舫氏を上回ったことに政界では衝撃が広がっています。

石丸氏の躍進の原動力となったのは、無党派層からの高い支持です。

NHK出口調査によりますと、無党派層の投票先では、石丸氏は、小池氏とほぼ同じ30%余の支持を集めました。一方で、蓮舫氏は、20%あまりにとどまりました。

同様に、朝日新聞と讀賣新聞が行った出口調査でも、無党派層の36%が石丸氏に投票したと回答しています。

また、石丸氏は、自民党支持層から10%台後半、国民民主党の支持層からもおよそ40%の支持を集めました。小池氏を自主的に支持した政党の支持層を、一定程度切り崩したことも、躍進の要因になったと見られます。

年代別の投票先をみますと、世代間で投票行動の違いが際立っています。

10代から30代までは、石丸氏が小池氏を抑えてトップです。

特に、10代から20代では、石丸氏への投票が、40%あまりにも上っています。

地域別に石丸氏の得票結果を検証します。

世田谷区での得票率が28.1%と最も高く、次いで、渋谷区、中央区などとなりました。

品川区、目黒区、港区でも27%以上の得票率で、合わせて17の自治体で得票率が25%(投票に行った4人に1人が投票)を超え、得票率が20%(5人に1人が投票)を超えたのも46か所でした。

23区内に限ればすべてで蓮舫氏を上回り、都全体でも53か所で石丸氏が蓮舫氏をリードしました。

そのうちのおよそ半数の26の開票所で、石丸氏と蓮舫氏の2人の得票率に5ポイント以上の差がつき、都心の中央区、港区、千代田区、品川区などは10ポイント以上開きました。

最も注目すべき点は「東京都で165万票」を獲得したことです。

今年10月には「衆議院議員の任期が残すところ1年」となり、政界では、「衆議院の解散総選挙はいつ行われるのか」が大きな焦点となっています。

都知事選と衆議院選挙は、選挙は異なりますが、編集部が行った試算では、「石丸氏の165万票」は「衆議院比例東京ブロック5議席」を獲得する得票数となります。

                            【別紙:編集部試算票あり】

石丸氏は、今後の政治活動について「まだ決めていない」と述べる一方、国政選挙について「選択肢としては当然考える」と述べています。

石丸氏が若い世代から高い支持を受けたことで、政界では、「与野党問わず既成の政党への厳しい批判が示された」、「新しい政治を求める動きが強まるのではないか」という見方が出ています。

都知事選は、全国の有権者の10%超が対象となるだけでなく、無党派層の投票動向が大きく選挙情勢するだけに、与野党各党にとっては、SNSをどう活用するかという選挙戦略にとどまらず、若者・若い世代にどう向き合うか、これまでの姿勢を抜本的に見直す必要に迫られる可能性が出て来ました。以 上

筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト

元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネ

コン汚職事件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。

その後、連合(日本労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙

戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。 

政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。

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