2024年10月25日に大阪地裁で開かれた初公判。部下の女性検事への性的暴行の準強制性交等の罪に問われている北川健太郎被告(65歳)が性加害について「争いません」と言ったことは記憶に新しい。
2024年12月10日、新しく北川被告の代理人となった中村和洋弁護士(53歳)が大阪市内で記者会見を行った。
中村和洋主任弁護士
「今後裁判では無罪を争う方針です。北川さんには事件当時Aさん(被害を訴えている女性検事)が抗拒不能であったという認識はなく、またAさんの同意があったと思っていたため犯罪の故意がありません。」
2回目の裁判の前に弁護士が交代。これまでの弁護方針を一転させ無罪を主張すると表明したのだ。
〈公訴事実を認め、争うことはしません、と初公判で述べたのに…〉
北川被告は大阪地検の検事正だった6年前2018年9月、酒に酔って抵抗できない状態だった部下の女性検察官に性的暴行を加えた罪に問われているとして大阪地検の10月25日、裁判の初公判で、北川被告は、起訴内容を認め謝罪したばかり。
初公判で検察側は泥酔状態の女性検事が官舎に連れ込まれ気がついたときには性交されており「やめて」と拒否の態度を表したが「これでお前は俺の女だ」と言われ、抵抗すれば殺されるという恐怖を感じたと指摘している。
北川被告は逮捕当初は容疑を否認していたが、しかし初公判では
「公訴事実を認め、争うことはしません。被害者に深刻な被害を与えたことを反省し謝罪したい」
と憔悴しきった声で謝罪の言葉を口にし、争わない姿勢を示していた。
しかし、それから2ヶ月足らず、北川被告が起訴内容を争わない姿勢をみせたことで量刑を争う展開になるかと思われていたが記者会見では事態が一転する。
〈検察に批判されたから「無罪」貫く〉
北川被告側中村弁護士
「北川さんが、第1回公判期日で公訴事実を争わないと答弁しているが、その理由はそうすることで、事件関係者を含め検察庁にこれ以上の迷惑をかけたくないということにあった。しかしその後の検察庁に対する組織批判により北川さんはそのような方針が間違っていたのではないかと悩み、自らの記憶と認識に従って主張をすることにした。」
と言い、
「北川さんとしては内心、相手が抵抗できない状態とは思っていなかったし、その行為を受け入れている、つまり同意があると言うふうに思っていたとこの点が争いになる。」
10日、大阪地裁で行われた協議で弁護側は罪状認否の変更と改めて争点や証拠整理のための「期日間整理手続」を行うことを求めた。
被害者にとっては一番嫌な要点を蒸し返す事となる。被害者を愚弄させ、疲れさせて和解に持ち込むという方法でも模索したのだろうか。
〈1,000万円支払ったが逮捕されたので被害者に返した〉
弁護側は、事件の翌年(2019年)女性検事側から民事訴状の訴状案とともに慰謝料1,000万円の支払いを求める書面が届き支払ったものの北川被告の逮捕後に変金された、と説明した。
中村弁護士は、
「示談書というものは作られておらず、ただ相手方の要求通りの金銭を支払ったので少なくとも民事の請求に関してはこちらは要求に応じたと、それで一旦話は終わっていると言うか、解決したと理解した、と聞いている。」
と説明した。
これに対して、女性検事は
「被害者が支払いたいと申し出た。示談はしていない。」として真っ向から主張が対立している。
〈性犯罪の被害申告するのがどれほど過酷で、深刻か、知ってほしい〉
中村弁護士の記者会見翌日、11日午後に女性検事が会見を開いた。女性検事は「性犯罪の被害申告するのがどれほど過酷で、深刻か、知ってほしい」と訴えた。
特に弁護人が会見で「同意があると思っていた」と主張を一転させたことについて、
「性犯罪事件で、どのように主張すれば無罪判決を得やすいかを熟知した(元検察官である)被告らが、姑息な主張をして無罪をあらそうことは、私だけでなく、性犯罪被害に苦しんでいる方々をどれほどの恐怖や絶望に陥れ、被害申告を恐れさせるか。そして今後、多くの性犯罪者に『同意があった』と主張させて、性犯罪を撲滅させるどころか、むしろ助長させることになる。」
「被告人は事件当初から弁解を二転三転させてきた。たくさん嘘もついてきた。被告人の再びの嘘を誰が信用するだろうか。」
「被害者の苦しみを想像せず、罪を償おうと思わなかったことは、悲しく、検事として情けない。長期の実刑判決を求める」
と強く非難した。
〈検察組織内の誹謗中傷の全容解明調査を申立て〉
また、被害者女性は、検察組織内で誹謗(ひぼう)中傷される二次被害を受けているとして、検察庁に調査を申し立てたことを明らかにした。
女性検事はさらに
「被告人(北川)が、親しい女性副検事に情報漏えいさせるなどしてきた疑いがあり、それについても処罰の可能性が出てきたことから、自己保身ゆえに再び否認に転じたのだと思う。」
と延べ、職場で同僚の副検事Fから 「金目当ての虚偽告訴」誹謗ひぼう 中傷などの二次被害を受けているとして、現在所属する大阪地検に対し、ハラスメント
の調査を申し立てている。
名誉 毀損きそん 容疑などで副検事を大阪高検に告訴・告発済みだ。
そして女性検事の知人の元警察官らによって、支援の会が立ち上がったことを明らかにした。
高検は11日、告訴・告発を受理したことを明らかにした。小橋常和次席検事は「事実関係を解明するため、必要な捜査を行っている」とのコメントを出した。
次回の公判の日程は、まだ未定だ。
◆こんなケースも…
〈永野耕平岸和田市長 被害者が「疲れた」和解へ〉
永野耕平岸和田市長が2024年11月14日に大阪府岸和田市の永野耕平市長(46歳/日本維新の会/2期目)から性行為を強要されたとして、被害者女性が損害賠償2280万円を求めた民事訴訟が、11月14日に和解。
被害者女性は一時記憶の一部をなくすなど解離状態となり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。
和解が成立したが、必ずしも被害者の本心としては、和解などしたくはなく、警察に被害届を提出してから長い期間争ってきて、心身ともに疲れ、これ以上被告(永野耕平市長)と関わりたくない、裁判を早く終わらせたいと和解に至った。
参考サイト:さくらフィナンシャルニュースnote
元大阪地検検事正が無罪主張、性的暴行の被害訴えた女性検事「どこまで愚弄すれば気が済むのか」
【永野耕平岸和田市長 不合意性行為 和解でも許さない 異常行為 複数人と強要も】
https://www.sankei.com/article/20241211-P6AHKYGOG5OERO2VW66YCW3ABU
「被害者保護はおろそか」「被害者とともに泣く検察どこへ」 現職検事2人がコメント
被害者の女性検事「絶句し、泣き崩れた」 元大阪地検検事正の一転無罪主張に反論
元検事正の無罪主張「泣き崩れた」 被害女性が会見―準強制性交事件
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