2024年7月2日三重県津地裁民事部で裁判長を務める竹内浩史判事(61歳)が、国を相手取り減額分の報酬計約238万円の支払いを求め、名古屋地裁に訴訟を起こし、
「転勤によって『地域手当』が減額されたことは、裁判官の報酬の減額を禁じた憲法80条2項に違反する」と提起した。
竹内氏は弁護士を16年間努め、後の2003年、弁護士会連合会の推薦を受けて判事に任命される。
その後大阪、名古屋の高裁を経て、21年度から現在の津地裁で勤務。大阪や名古屋では陪席裁判官だったが、津では裁判長を務めている。
決して仕事は楽になっていないが、年を追うごとに報酬を減らされて、現在は大阪時代と比べて10%ほど報酬が少ないという。
「明らかに憲法違反」として竹内判事は争う姿勢を見せた。
原因は、勤務地によって国家公務員に支払われる「地域手当」の支給割合だ。これが高い都市部から低い地方へと転勤になると、結果としてトータルで報酬を減らされてしまうとのことだ。
裁判官は高給取りで知られており、竹内判事も大阪や名古屋で勤務していた頃は、年収が1800万円以上だったとみられる。
裁判官は他の国家公務員とは異なる給与体系を持っている。
憲法80条2項により任官中の減俸禁止が記されている。よって、減俸を余儀なくされてしまう現状は明らかに憲法違反ではないのか。
「是正される気配がないので、私自身の減俸もさることながら、この問題を世に問わなくてはいけないと思ったのです。」
これは裁判官だけの問題ではないという。
他の国家公務員についても同様に、勤務地により報酬が異なる現状は、憲法14条で定められた法の下の平等に反していると考えられます。国家公務員の給料が地方にいくほど低く抑えられている。
そのため、地方公務員の給料も地域ごとに格差が生じ、その連鎖が、地方の民間企業の給料や最低賃金にまで反映されているという。私の訴訟を気に労働者全体の問題を一つの契機にしてほしいと竹内判事は考えている。
不合理な制度で多数の裁判官が不満を訴えている。なんとかしないと地方に行く裁判官がいなくなってしまうと竹内判事は言う。
個人の訴訟の形を取りながら、最終的には政策の形成を目指すいわゆる“公共訴訟”というもの。社会の構造や矛盾に切り込む裁判を「公共訴訟」という。
参考サイト:
「普通の裁判官とは違うんですよ」 “減額分の給料を払え”と国を訴えた61歳裁判官の素性とは
「大都市優遇、地方切り捨てだ!」国を訴えた“現職の裁判官”が語る「公務員の地域手当の改定」深刻すぎる問題点
「地域手当の差で報酬減額は憲法違反」 現職の裁判官が国を提訴へ
高橋俊成
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