今年元日に発生した能登半島地震をはじめ、8月8日に宮崎県南部で最大震度6弱の地震が発生したことをきっかけに、制度が始まった2017年以降はじめて「南海トラフ地震臨時情報 巨大地震注意」も発令されました。
また、台風や集中豪雨による被害も続いています。
地震や災害対策など各省庁が要望した来年度25年度概算要求の主な項目をまとめます。
国土交通省 住宅の耐震化促す事業盛り込む
【参考資料1 国土交通省概算要求】
国土交通省は、能登半島地震で古い耐震基準の住宅の被害が多かったことを受けて、全国を対象に住宅や、緊急車両が通行する道路沿いの建物の耐震化を促す事業などに300億円を盛り込みました。
耐震工事を行う場合に、自治体からの補助に加え、国からも補助を上乗せすることなどを念頭に予算編成にあたって具体的な制度を検討するとしています。
また、地震の断水対策として、上下水道の主要な施設への耐震化についても支援制度を設けるとしています。
このほか、羽田空港で起きた航空機どうしの衝突事故を踏まえ、全国の主要な空港で滑走路への誤った進入を防ぐシステムを導入する事業などに19億円、バスやタクシーなどの移動手段の確保が難しい「交通空白地」と呼ばれる地域の解消に向けて、ライドシェアの普及や自動運転の実用化を進める事業に331億円を盛り込んでいます。
国土交通省の概算要求の一般会計の総額は、今年度予算を18%上回る7兆330億円となりました。
斉藤鉄夫国土交通相は、「能登半島、豪雨防災、南海トラフ地震臨時情報の発表なども踏
まえ、防災減災対策は喫緊の課題だ。国民の安全安心の確保の実現に向けて必要な予算をしっかり確保し、全力で取り組んでいくことを固く決意している」と述べています。
気象庁「巨大津波観測計」整備へ
【参考資料2 気象庁概算要求】
気象庁の概算要求によりますと、元日の能登半島地震を受けて、3メートルを超える津波
も観測できる「巨大津波観測計」を全国9つの予報区に新たに整備するとしています。
整備を計画しているのは、福井県と山口県日本海沿岸、佐賀県北部といった日本海沿岸をはじめ、陸奥湾と兵庫県瀬戸内海沿岸、淡路島南部、福岡県瀬戸内海沿岸、有明・八代海、大分県瀬戸内海沿岸で、これに伴って「巨大津波観測計」は101か所に増えます。
また、火山活動が活発になる可能性があると指摘されている鹿児島県のトカラ列島の「中之島」について、24時間体制で観測するため監視カメラや地震計などを整備することにしています。
このほか、AI技術を活用した業務の体制強化に向けて「AI戦略企画官」という役職を新たに設けることにしていて、概算要求の費用はデジタル庁を通じて要求するシステムの改修経費などを含め、気象庁の概算要求額は総額で今年度の予算より約50億円多い599億円余りとなっています。
警察庁大規模災害の備えを強化へ能登半島地震の教訓踏まえ
【参考資料3 警察庁概算要求】
警察庁によりますと、能登半島地震では土砂崩れなどで道路が寸断され、救出活動のため石川県に向かった警察の広域緊急援助隊が陸路で現地に到着したのは、輪島市で発生翌日の午後1時、珠洲市では午後9時と、発生後20時間から1日以上の時間がかかったということです。
警察庁は、この教訓を踏まえ、大規模災害への備えを強化するため、来年度予算案の概算要求に17億8900万円を盛り込みました。
この中で、隊員や資機材をいち早く現地に入れるため、悪路での走行が可能な大型の4輪
駆動車をすべての都道府県に1台ずつ配備する費用として3億8200万円、断水が続き水が不足した教訓から水をろ過して繰り返し使うことができる装置などの整備費用として、4億800万円を計上しました。
この他、厳しい寒さの中で、多くの隊員が自前の手袋や長靴で対応せざるをえなかった教訓から、積雪や寒冷地での活動に備えた防寒手袋や防寒靴などの整備に1億7000万円を要求することにしています。
警察庁は予算要求と合わせて、各地の警察で実践的な訓練も実施し、災害への対処能力の向上を図りたいとしています。
総務省小型消防車両配備費盛り込む
【参考資料4 総務省概算要求】
総務省は、一般会計の総額で、今年度予算より6221億円多い、18兆8327億円を計上し概算要求を行いました。
この中では、能登半島地震では、初期対応に時間を要したとして、消防や地域の防災力を強化するための費用としておよそ105億円を盛り込んでいます。
具体的には、◇道路の寸断などで大型の車両が通行できない場合でも人員や資機材を被災地に送るため、機動力の高い小型の車両を消防に配備するほか、◇大規模な火災が発生した際に、消防隊員の安全を図りながら消火活動にあたれるよう、無人で走行する放水ロボットを整備する方針です。
このほか、能登半島地震で停電や通信ケーブルの切断で広い範囲で携帯電話が使えなくなったことを踏まえ、基地局に大容量の蓄電池や発電機などを整備する費用として33億円を計上しています。以 上
筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト
元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職事件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。
その後、連合(日本労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。
政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。
☆出稿資料☆
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