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消費税が上がるたび、誰が得をしたのか経団連・大企業・外資に寄り添ってきた      日本政治と、「改革」の名で進んだ生活者切り捨て


この30年の日本を振り返ると、多くの国民が抱く違和感はかなり共通している。

給料は思うように増えない。社会保険料は重い。消費税は上がる。光熱費も食料品も高くなる。子どもは減り、農業は衰え、地方は疲弊する。

ところがその一方で、法人税は引き下げられ、大企業の内部留保は積み上がり、政府は外資を呼び込むことを成長戦略として誇ってきた。ユーザー提供の比較表が示す「世帯所得の低下」「税収増」「国民負担率上昇」「企業内部留保の膨張」という並びは、まさにこのゆがみを象徴している。

日本の消費税は1989年に3%で始まり、1997年に5%、2014年に8%、2019年に10%へと引き上げられてきた。財務省は2014年の5%→8%、2019年の8%→10%への引き上げを、社会保障の安定財源確保のためだと説明している。だが同じ財務省資料は、この時期に法人課税について「課税ベースを広げつつ税率を下げる」改革を進めてきたことも明記している。つまり政府の公式説明の中にすら、家計には消費課税を強め、企業には税率引き下げを進めるという二つの流れが並立している。

法人税率の推移を見ると、この違和感はさらに鮮明になる。財務省資料では、国税の法人税率は2014年度の25.5%から、2015年度23.9%、2016年度23.4%、2018年度23.2%へと段階的に引き下げられ、法人実効税率も「30%台前半から30%を切る水準」へ下がったと整理されている。政府はそれを「国際競争力」や「立地競争力」の強化と説明してきた。だが、その結果として起きたのが広範な賃上げや家計再建だったのかといえば、そこには大きな疑問符がつく。

むしろ現実には、企業の利益剰余金、いわゆる内部留保が膨張してきた。財務省の法人企業統計は、企業部門に巨額の利益剰余金が積み上がってきたことを示している。比較表にある「企業内部留保200兆円→620兆円」という問題意識は、細かな年次や定義の違いはあっても、大企業部門に富が蓄積し続けてきたという大きな流れとは整合的だ。つまり、「法人税を下げれば投資が増え、賃金が上がり、皆が豊かになる」という説明は、少なくとも日本では十分に実現してこなかったのである。

ここで無視できないのが、経団連の存在だ。経団連は公式に、政党の政策評価を示し、それを会員企業の政治寄付の判断材料とする仕組みを続けてきた。2006年の英語版説明でも、政策評価を物差しにして加盟企業に政治的支援を促していることを明言しているし、2024年の会長会見でも政策評価と政治との連携を継続している。批判的に見れば、これは単なる経済団体の意見表明ではない。財界が政策を採点し、資金を通じて政治を誘導する構造そのものだ。

その流れを大きく加速させたのが小泉政権だった。小泉純一郎元首相は「官から民へ」をスローガンに掲げ、郵政民営化を政権のど真ん中に据えた。首相官邸の当時の発信でも、郵政民営化は「改革の本丸」として扱われていた。もちろん、非効率な官業を見直すという理屈は分かりやすい。だが批判的に見るなら、郵政民営化は単なる合理化ではなく、郵貯・簡保という巨大資金を市場へ開き、金融化を加速させる象徴的な政策でもあった。公共性の高い仕組みを市場原理へ組み替える、この路線がその後の日本を決定づけた。

同時に小泉政権期は、労働の世界でも大きな転換点だった。2004年には労働者派遣法の改正で製造業務への派遣が解禁され、派遣労働の対象が大きく広がった。厚労省や関連資料は、この時期の制度緩和を確認している。ここで表向きに語られたのは「雇用の多様化」だったが、現場で起きたのは非正規化と不安定化の拡大だった。企業は正社員を抱えるリスクを減らし、景気に応じて労働力を調整しやすくなったが、そのしわ寄せは働く側に押しつけられた。

そして、この派遣法改正と切り離せず語られてきたのが竹中平蔵氏とパソナの問題である。竹中氏は小泉政権で経済財政政策担当、郵政民営化担当などを務め、退任後の2007年にパソナの特別顧問となり、のちにパソナグループ会長も務めたことが公式資料で確認できる。国会では、竹中氏が人材派遣最大手のパソナと深く結びついた状態で労働規制や国家戦略特区に影響力を持つことについて、「利益相反ではないか」「自社への利益誘導と見られても仕方がない」といった批判が繰り返し出された。もちろん、司法が違法な利益誘導と断定したわけではない。だが、規制緩和を進めた人物が、その恩恵を受ける業界の中枢へ移るという構図そのものが、国民に深い不信感を与えたのは当然だ。

竹中氏をめぐる批判は、労働だけにとどまらない。水道事業のコンセッション、空港民営化など、公共インフラを「民活」で運営する路線でも、竹中氏は一貫して推進側に立ってきた。厚労省資料によれば、水道コンセッションは施設の所有権を自治体に残しつつ、運営権を民間事業者に設定する仕組みである。政府はこれを「完全民営化ではない」と説明する。だが利用者から見れば、水のような生活基盤が長期にわたり民間収益の対象になることへの不安は消えない。

しかも、この水道民営化路線には、外資参入とISDSの問題が重なる。外務省は、ISDS手続が日本の締結する多くの投資関連協定に規定されており、投資家が国家を国際仲裁に訴え、賠償を命じる仕組みであることを公式に説明している。つまり、水道のような公共サービスに外資が深く入った後、自治体や国が料金や契約の見直しを試みれば、投資家保護条項との衝突が生じうる。この懸念自体は空想ではなく、政府自身が認める制度上の論点だ。だから「ISDSを十分に織り込まずに水道コンセッションを進めたのではないか」という批判は、感情論ではなく制度論として成立している。

関西空港の民営化も象徴的だ。公式資料では、関西空港と伊丹空港の運営は2016年からオリックスとフランスのVINCI Airportsを中核とするコンソーシアムが担い、日本初の本格的空港コンセッションとなった。オリックス自身もこれを「日本初の本格的空港コンセッション」と位置づけている。批判的に見れば、これは単なる効率化ではなく、国家の戦略インフラを民間、しかも外資を含む陣営に長期で委ねる大転換だった。空港運営をビジネスとして磨くこと自体は可能でも、安全保障や地域主権、公共性との緊張は残り続ける。

さらに安倍政権になると、この流れはより洗練された形で本格化した。安倍政権の成長戦略は、法人税率引き下げ、規制緩和、コーポレートガバナンス改革、そして対日直接投資の拡大を柱とした。2013年の日本再興戦略、さらに2021年の対日直接投資戦略では、政府が「対内直接投資残高35兆円」をKPIとして掲げ、外資を呼び込むことを国家目標にしてきたことが確認できる。政策側の言葉では、それは「成長」「国際競争力」「イノベーション」だ。しかし裏返せば、日本市場を外資にとって入りやすい場所に作り替える国家戦略でもあった。

もちろん、外資そのものが悪だと言うつもりはない。問題は、誰の利益を優先して制度が設計されてきたかである。家計が苦しみ、出生数が減り、農業人口が減少し、地方が衰弱していく一方で、政治は経団連や大企業、そして外資にとって魅力的な制度を整えることに熱心だった。消費税増税は「社会保障のため」と説明され、法人税減税は「競争力のため」と説明され、水道や空港の民営化は「効率化のため」と説明され、派遣拡大は「多様な働き方のため」と説明された。だが、その帰結を一つに束ねれば、国民の生活基盤を市場へ差し出し、企業と資本の自由度を高める方向に、日本の政治が一貫して傾いてきたということになる。

「改革」という言葉は、本来、国民を豊かにするためのものだったはずだ。ところが日本ではいつしか、改革とは、公共を市場へ、正規を非正規へ、国内の意思決定を外資の論理へ近づけることを意味するようになった。小泉政権はその扉を開き、安倍政権はそれを体系化し、経団連は背後から後押しし、竹中平蔵氏はその象徴になった。

いま問うべきなのは、「改革に反対か賛成か」ではない。

誰のための改革だったのか。誰が得をし、誰が失ったのか。

その問いを避けてきたこと自体が、日本衰退の大きな原因なのではないか。


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