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南海トラフ地震防災対策推進地域でのBCP(事業継続計画)策定率  ~高知県が33.3%、静岡県26.8%、香川県23.3%で続く~

2024年8月8日16時43分ごろ、宮崎県沖の日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生しました。

気象庁は、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を初めて発表し、巨大地震の発生に備え、防災対策の推進地域に指定されている1都2府26県の707市町村に地震への備えを改めて確認してほしいと呼びかけています。 

地域への警戒だけではなく、私たちが働く職場での地震への備えはどうなっているのか?

帝国データバンクが今年5月に実施した「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2024年)」から「企業(事業所)での地震への備え」の現状を検証します。

この調査は、能登半島地震から半年が経ったこと、サイバー攻撃を受ける企業が出ていることから、自然災害にとどまらず、サイバー攻撃やテロ、感染症、地政学的リスクなどさまざまな経営上のリスクが高まり、企業には危機管理・リスク発生に備えた準備が強く求められているという観点から実施されたもので、事業継続計画(BCP)に対する企業の見解などについて回答を求めています。

        【参考資料1 事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2024年)】

調査期間は24年5月20日から31日で、調査対象は全国2万7,104社で、有効回答企業数は1万1,410社、回答率42.1%でした。

それによりますと、BCP策定率は全国平均で19.8%でした。

南海トラフ地震防災対策推進地域(内閣府)が含まれる29都府県におけるBCPを「策定している」割合は 指定された29都府県のうち高知県が33.3%で、以下、静岡県26.8%、香川県23.3% の順でした。

今回の地震で震源に近い宮崎県は18.1%と全国平均を下回る結果で、事業継続計画(BCP)策定は進んでいないことが判明しました。

【参考資料2 事業継続計画(BCP)の策定状況(2024年)-南海トラフ地震防災対策推進地域-】

それぞれの企業に、事業継続計画(以下、BCP)の策定状況について尋ねたところ、「策定している」企業の割合(以下、BCP策定率)は19.8%でした。

前回調査(2023年5月)から1.4ポイント増加し、これまでで最も高くなりました。

 さらに、「現在、策定中」(7.3%、前年比0.2ポイント減)と、「策定を検討している」

(22.9%、同0.2ポイント増)を合計したBCPに対して『策定意向あり』とする企業は

50.0%(同1.4ポイント増)と全体の半数でした。 

都道府県別に見ていきますと、最も高いのが「高知県」で68.4%、次いで「静岡県」の58.3%、「石川県」の57.7%、「富山県」と「愛媛県」が57.6%などとなりました。

南海トラフ地震の被害が想定される地域、震災から半年の北陸地域でBCPの策定意向が高い様子がうかがえました。 

また、企業規模別に見てみますと、「大企業」が37.1%、「中小企業」が16.5%でした。「大企業」は2016年調査からは9.6ポイント上昇した一方で、「中小企業」の策定状況の伸びは低調となっています。

BCPについて『策定意向あり』とする企業に対して、どのようなリスクによって事業の継続が困難になると想定しているか複数回答で尋ねたところ、地震や風水害、噴火などの「自然災害」が71.1%となり最も高く、次いで、サイバー攻撃など含む「情報セキュリティ上のリスク」44.4%でした。

さらに、インフルエンザ、新型ウイルス、SARSなどの「感染症」が39.9%、電気・水道・ガスなどの「インフラの寸断」39.6%、「設備の故障」(39.1%)などとなりました。

BCPについて『策定意向あり』とする企業に対して、事業が中断するリスクに備えて実施あるいは検討している内容を複数回答で尋ねたところ、「従業員の安否確認手段の整備」が68.9%で7割近くにのぼり、「情報システムのバックアップ」57.9%、「緊急時の指揮・命令系統の構築」42.6%などとなりました。 

BCPを「策定していない」企業にその理由を複数回答で尋ねたところ、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が41.6%で最も多くなりました。次いで、「策定する人材を確保できない」が34.3%、「策定する時間を確保できない」が28.4%が続き、BCPの策定にはスキル・人手・時間の3要素が企業規模を問わず大きな障壁となっている実態が浮き彫りとなりました。

一方で、「中小企業」では、「必要性を感じない」が21.0%と「大企業」より5ポイント以上高い結果となり、さらに従業員数「5人以下」の企業では30.3%と3割を超える企業

で「必要性を感じない」と捉えていて、企業からもBCPがなくても「社員が少ないため口頭で十分伝わる」といった意見が複数寄せられました。 

BCPについて「策定意向あり」と回答した企業は5割となり、都道府県別では、高知県や静岡県、石川県、富山県などで策定意向の割合が高く表れました。

能登半島地震の発生、南海トラフ地震への警戒が強く意識されて実態が反映されたと言えます。

また、企業活動を行う上で、想定するリスクとしては「自然災害」の他に、サイバー攻撃などの「情報セキュリティ上のリスク」と回答した企業も多く、新たな危機管理への対応が迫られていることも浮かびあがりました。

一方で、「スキル・ノウハウ」「人手」「時間」がないことを理由にBCPを策定していない企業も多く、これら3要素が大きな障壁になっている実態も改めて判明しました。

加えて、必要性を感じないという企業も一定数存在していて、行政などからのさらなる要請、理解の醸成も必要となっています。 

BCPの策定は、事業の継続にとどまらず、企業価値の維持・向上の観点からも日頃から緊急事態に対する準備を進めることが肝要です。

企業活動を行う上で、BCPを考えることは優先順位の低くなりがちな取り組みかもしれないが、自社には関係ない・必要ないとはせず、自分事(自社事)として捉え、同業他社や行政などと連携し備えていくことが非常に重要な「備え」となっています。以 上

筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト

元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職事

件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。

その後、連合(日本労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。 

政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。 

☆出稿資料☆

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