■臨時国会召集、衆参両院で石破氏が首相に指名
第214臨時国会がきょう10月1日召集されました。
午後1時半ごろから開かれた衆議院本会議で総理大臣の指名選挙が行われました。
その結果、自民党の石破茂・総裁が291票、立憲民主党の野田佳彦・代表が100票、日本維新の会の馬場伸幸・代表が45票、共産党の田村智子・委員長が10票、国民民主党の玉木雄一郎・代表が7票、無所属の吉良州司・衆議院議員が5票、れいわ新選組の山本太郎・代表が3票で、石破茂総裁が自民党や公明党の支持を受けて、総理大臣に指名されました。
また、午後2時すぎから開かれた参議院本会議でも総理大臣の指名選挙が行われ、自民党の石破総裁が143票、立憲民主党の野田代表が45票、日本維新の会の馬場代表が21票、国民民主党の玉木代表が12票、共産党の田村委員長が11票、れいわ新選組の山本代表が5票、国民民主党の伊藤孝恵・参議院議員が1票、無所属の伊波洋一・参議院議員が1票、参政党の神谷・宗弊代表が1票、自民党の高市早苗・衆議院議員が1票、自民党の茂木敏充・衆議院議員が1票で午後3時すぎ石破総裁が総理大臣に指名され、第102代の総理大臣に選出されました。
これに先立ち、岸田文雄・首相は、けさの閣議で閣僚の辞表を取りまとめ、岸田内閣は総辞職しました。2021年10月に発足した岸田政権は、およそ3年で幕を閉じました。在任期間は10月1日まで1094日で、岸田内閣は戦後8番目の長さとなりました。
■石破内閣発足!
◆総務相に村上誠一郎氏
村上氏は衆議院愛媛2区選出の当選12回で72歳です。自民党では無派閥で活動しています。愛媛県今治市出身で1986年の衆議院選挙で初当選し、これまでに行政改革担当大臣や財務副大臣などを務めました。
今回の総裁選挙では、石破総裁の推薦人の1人として名を連ねました。石破首相としては、
みずからに近く行財政に知見のあるベテランの村上氏の起用を通じて地方行政を後押しする政権の姿勢を示すねらいがあるものとみられます。
◆法相に牧原秀樹氏
牧原氏は衆議院比例代表北関東ブロック選出の当選5回で53歳です。自民党旧谷垣グループ出身で、現在は無派閥で活動しています。弁護士で、経済産業省の職員を経て2005年の衆議院選挙で初当選しこれまでに厚生労働副大臣や経済産業副大臣などを務めました。
今回の総裁選挙では上川陽子氏の推薦人となり、選挙期間中には外国出張中の上川氏の代理として候補者の政策討論会に出席しました。石破首相としては、法律分野を含め、牧原氏の政策手腕を評価するとともに、中堅・若手議員の登用を積極的に進める姿勢を示すねらいもあるものとみられます。牧原氏は初めての入閣です。
◆外相に岩屋毅氏
岩屋氏は衆議院大分3区選出の当選9回で67歳です。今年2月に自民党麻生派を退会し、いまは派閥に所属していません。衆議院議員秘書や県議会議員を経て、1990年の衆議院選挙で初当選しました。これまでに外務副大臣や衆議院文部科学委員長などを歴任し、2018年に安倍内閣の防衛大臣として初入閣しました。
今回の総裁選挙では、石破総裁の推薦人代表となりました。石破首相としては、みずからに近く、安全保障分野に精通する岩屋氏を外務大臣に起用することで安定的に外交を展開したいねらいがあるものとみられます。
◆財務相に加藤勝信氏
加藤氏は衆議院岡山5区選出の当選7回で68歳です。自民党旧茂木派の出身です。旧大蔵省で勤務したあと、義理の父親の加藤六月元農林水産大臣の秘書などを経て、2003年
の衆議院選挙で初当選しました。安倍内閣では官房副長官や党の総務会長などを歴任し、2020年に発足した菅内閣では官房長官として支えました。厚生労働行政をはじめ、幅広い分野の政策に明るいことで知られ、これまでに厚生労働大臣を3回、務めています。
加藤氏は、今回、初めて総裁選挙に立候補し、「所得倍増」などの政策を訴えましたが、1回目の投票で最下位となりました。石破首相としては、加藤氏の豊富な経験と安定した政治手腕を評価するとともに、総裁選挙で争った相手を重要閣僚に起用することで挙党態勢の構築を図るねらいもあるものとみられます。
◆文部科学相に阿部俊子氏
阿部氏は衆議院比例代表中国ブロック選出の当選6回で65歳です。おととし自民党麻生派を退会し、いまは派閥に所属していません。大学の助教授や日本看護協会の副会長を経て2005年の衆議院選挙で初当選しこれまでに外務副大臣などを務めたほか現在は、文部科学副大臣を務めています。
今回の総裁選挙では、加藤勝信氏の推薦人の1人として名を連ねました。石破首相として
は、阿部氏の内政・外交両面の知見をいかし、教育行政を推進していきたいねらいがあるものとみられます。阿部氏は初めての入閣です。
◆厚生労働相に福岡資麿氏
福岡は参議院佐賀選挙区選出の当選3回で51歳です。自民党旧茂木派の出身です。衆議院議員を1期務めたあと、2010年の参議院選挙で初当選しました。これまでに内閣府副大臣や党の厚生労働部会長、それに参議院議院運営委員長などを歴任し、現在は党の参議院政策審議会長を務めています。
石破首相としては、厚生労働分野に精通した福岡氏を起用することで、政策の円滑な実現を図るねらいがあるものとみられます。福岡氏は初めての入閣です。
◆農水相に小里泰弘氏
小里氏は衆議院比例代表九州ブロック選出の当選6回で66歳です。自民党旧谷垣グループ出身で現在は無派閥で活動しています。大手証券会社の勤務を経て、父親の故・小里貞利元総務会長の政策秘書を務めたあと、貞利氏の政界引退に伴い、2005年の衆議院選挙で初当選しました。これまでに環境副大臣や農林水産副大臣などを歴任し、去年9月から農山漁村地域活性化担当の総理大臣補佐官を務めています。
今回の総裁選挙では、石破総裁の推薦人を務めました。石破首相としてはみずからに近く、農林水産行政にも精通した小里氏を起用することで、農林水産業の活性化などを加速させるねらいがあるものとみられます。
小里氏は初めての入閣です。
◆経済産業相に武藤容治氏
武藤氏は衆議院岐阜3区選出の当選5回で68歳です。自民党麻生派に所属しています。衆議院議員の秘書や建築資材会社の社長などを経て、2005年の衆議院選挙で初当選し、
これまでに外務副大臣や経済産業副大臣などを務めました。
今回の総裁選挙では、河野太郎氏の推薦人の1人として名を連ねました。石破首相としては、企業経営の経験もある武藤氏を起用することで、より実効性のある経済産業政策を進めたいねらいがあるものとみられます。
武藤氏は初めての入閣です。
◆国土交通相に斉藤鉄夫氏
公明党の斉藤氏は、衆議院広島3区選出の当選10回で72歳です。公明党の副代表を務めています。建設会社勤務を経て、1993年の衆議院選挙で初当選し、これまでに、環境大臣や党の幹事長、政務調査会長などを歴任しました。岸田内閣の発足に伴い3年前から国土交通大臣を務めています。
石破首相としては、連立を組む公明党の意向を踏まえるとともに党の要職を務めてきた斉藤氏の手腕や実績を評価し、政策の継続性も重視して、引き続き起用することにしたものとみられます。
◆環境相に浅尾慶一郎氏
浅尾氏は参議院神奈川選挙区選出の当選3回で60歳です。自民党麻生派に所属しています。銀行員を経て1998年の参議院選挙で当時の民主党から立候補して初当選しました。その後、みんなの党で衆議院議員となり党の代表も務めました。党の解散後は無所属を経ておととしの参議院選挙に自民党の候補として臨み国政復帰を果たしました。
政策通として知られていて、今回の総裁選挙では河野太郎氏の推薦人1人として名を連ねました。石破首相としては、幅広い分野の政策に明るい浅尾氏を起用することで、政策を着実に実行していくねらいがあるものとみられます。浅尾氏は初めての入閣です。
◆防衛相に中谷元氏
中谷氏は衆議院高知1区選出の当選11回で66歳です。自民党旧谷垣グループの出身で現在は無派閥で活動しています。陸上自衛隊を経て、1990年の衆議院選挙で初当選し、防衛庁長官や党の安全保障調査会長などを歴任しました。第3次安倍内閣では防衛大臣として、戦後日本の安全保障政策の大きな転換となった安全保障関連法の成立に取り組みました。岸田内閣では人権問題を担当する総理大臣補佐官を務め、現在は、衆議院憲法審査会の与党側の筆頭幹事として憲法論議に取り組んでいます。
石破首相としては、安全保障分野に精通する中谷氏を起用することで、政策の推進を図りたいねらいがあるものとみれらます。
◆官房長官に林芳正氏
林氏は衆議院山口3区選出の63歳、旧岸田派の出身です。商社に勤務したあと、大蔵大臣を務めた父・義郎氏の秘書官などを経て、1995年の参議院選挙で初当選しました。参議院選挙には5回連続で当選し、この間、防衛大臣や農林水産大臣、文部科学大臣などを歴任しました。
3年前の衆議院選挙で山口3区に立候補して初当選し、岸田内閣で去年9月まで外務大臣を務めたほか、去年12月に自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で松野前官房長官が辞任したのに伴って、後任の官房長官に就任しました。
今回の総裁選挙では、旧岸田派の議員を中心に支持を集めて1回目の投票で4位となり、一定の存在感を示しました。
石破首相としては、総裁選挙で争った林氏の起用を通じて挙党態勢を築くとともに、重要ポストを多く務め、政治経験が豊富な林氏の手腕をいかすことで政権運営を円滑に進めたいねらいがあるものとみられます。
◆デジタル相に平将明氏
平氏は衆議院東京4区選出の当選6回で57歳です。自民党内ではかつて石破氏が率いた派閥に所属し、現在は無派閥で活動しています。東京青年会議所の理事長などを経て、2005年の衆議院選挙で初当選しました。これまでにIT政策や地方創生を担当する内閣府副大臣などを歴任し、現在は、衆議院の原子力問題調査特別委員長を務めています。自民党内ではデジタル政策に精通した議員として知られ、党のデジタル社会推進本部でAIに関す
る作業チームの座長も務めています。
今回の総裁選挙では、石破総裁の推薦人の1人として名を連ねました。石破首相としては、デジタル分野の政策に詳しい平氏を起用することで、関連施策の着実な実現を図るねらいがあるものとみられます。平氏は初めての入閣です。
◆復興相に伊藤忠彦氏
伊藤忠彦氏は衆議院愛知8区選出の当選5回で60歳です。自民党旧二階派の出身です。愛知県議会議員を2期務めたあと、2005年の衆議院選挙で初当選し、これまでに総務政務官や環境副大臣などを務めました。
今回の総裁選挙では河野太郎氏の推薦人の1人として名を連ねました。
石破首相としては、復興や環境分野を中心にした伊藤氏の幅広い経験を評価し、起用を決めたものとみられます。伊藤氏は初めての入閣です。
◆国家公安委員長に坂井学氏
坂井学氏は衆議院神奈川5区選出の当選5回で59歳です。自民党内では無派閥で活動しています。衆議院議員の秘書を経て、2005年の衆議院選挙で初当選しました。これまでに財務副大臣や総務副大臣などを歴任し、菅内閣では官房副長官を務めました。
石破首相としては、菅副総裁に近い坂井氏を起用することで、政権基盤を固めたいねらいがあるものとみられます。坂井氏は初めての入閣です。
◆こども政策相に三原じゅん子氏
三原じゅん子氏は参議院神奈川選挙区選出の当選3回で60歳です。自民党では無派閥で活動しています。俳優としてテレビドラマなどで活躍したあと、2010年の参議院選挙で初当選し、厚生労働副大臣や党の女性局長を務めたほか、岸田内閣では、男女共同参画な
どを担当する野田少子化担当大臣の大臣補佐官にも就任しました。また、44歳の時にがんを患って闘病した経験から、命や健康を守る政策のほか、女性の雇用をめぐる問題などに取り組んできました。
三原氏は今回の総裁選挙で、小泉進次郎氏の推薦人の1人として名を連ねました。石破首相としては、知名度のある三原氏を起用することで、女性活躍を推進する姿勢を示すねらいもあるものとみられます。三原氏は初めての入閣です。
◆経済再生相に赤澤亮正氏
赤澤氏は衆議院鳥取2区選出の当選6回で63歳です。自民党では、かつて石破氏が率いた派閥に所属し、現在は無派閥で活動しています。国土交通省の職員を経て、2005年の衆議院選挙で初当選しました。これまでに、内閣府副大臣や衆議院環境委員長などを歴任し、現在は財務副大臣を務めています。
今回の総裁選挙では、石破総裁の推薦人の1人として名を連ねました。石破首相としては、みずからに近く経済分野に強いことで知られる赤澤氏を起用することで、安定した経済財政運営を図るねらいがあるとみられます。赤澤氏は初めての入閣です。
◆経済安保相に城内実氏
城内氏は衆議院静岡7区選出の当選6回で59歳です。自民党旧森山派の出身です。外務省職員を経て2003年の衆議院選挙で初当選し、2005年に郵政民営化関連法案に反対して自民党を離党しましたが、その後、復党しました。これまでに外務副大臣や環境副大臣のほか、衆議院外務委員長などを務めました。
石破首相としては、外交経験を通じて経済安全保障分野にも精通した城内氏を起用することで、関連施策のいっそうの強化を図るねらいがあるものとみられます。城内氏は初めての入閣です。
◆地方創生相に伊東良孝氏
伊東良孝氏は衆議院北海道7区選出の当選5回で75歳です。自民党旧二階派の出身です。北海道議会議員や釧路市長を務めたあと、2009年の衆議院選挙で初当選し、これまで財務政務官や農林水産副大臣などを歴任しました。
今回の総裁選挙では、石破総裁の推薦人を務めました。石破首相としては、自治体の実情などに詳しい伊東氏を起用することで、自身が力を入れる地方創生分野の政策を着実に前に進めたいねらいがあるものとみられます。
伊東氏は初めての入閣です。
石破内閣の閣僚は、初入閣が13人、再任が2人、閣僚経験者の再入閣が4人となっています。
所属する派閥や出身の旧派閥ごとに見ますと、麻生派と旧茂木派、旧二階派がそれぞれ2人、次いで旧岸田派と旧森山派がそれぞれ1人となっています。旧安倍派からの起用はあ
りませんでした。
一方、無派閥の議員は10人と最も多くなりました。このうち2人は、かつて石破氏が率いた派閥に所属していました。公明党はこれまでと同じ1人でした。
また、今回の総裁選挙で石破氏の推薦人となった20人の議員のうち6人が起用されることになりました。
衆議院議員の閣僚を当選回数別にみますと、最も多いのは村上氏の12回です。次いで中谷氏が11回、斉藤氏が10回となっています。
一方、当選回数が少ないのは参議院議員として5回当選し、3年前に衆議院議員に転じた林芳正氏を除けば、当選5回で、牧原氏、武藤氏、伊藤氏、坂井氏、伊東氏の5人です。このほか、当選9回が1人、7回が1人、6回が5人となっています。
一方、参議院議員の3人は、いずれも当選3回となっています。
女性の入閣は阿部氏と三原氏の2人で、去年9月に発足した第2次岸田第2次改造内閣に比べて3人少なくなりました。
参議院からの入閣は、福岡氏、浅尾氏、三原氏の3人で、去年9月に発足した第2次岸田第2次改造内閣と同じです。
石破氏と19人の閣僚の平均年齢は、石破内閣が正式に発足する10月1日時点で、63.55歳と、去年9月に第2次岸田第2次改造内閣が発足した際の63.5歳とほぼ同じ水準となりました。
最高齢は地方創生担当大臣に起用される伊東氏で75歳。最年少は厚生労働大臣に起用される福岡氏で51歳です。
石破氏と19人の閣僚を年代別にみますと、70代が3人、60代が12人、50代が5人となっていて、40代以下はいません。
■今後の日程
石破首相は、4日に衆参両院で所信表明演説を行ったあと、7日衆議院、8日参議院で代表質問が行われ、9日には衆参両院で予算委員会か党首討論が開催される見通しで、石破総裁は、9日に衆議院の解散を行い、15日公示・27日投開票の日程で総選挙に臨みます。
以 上
筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト
元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職事件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。その後、連合(日本
労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。
政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会
議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。
☆出稿資料☆
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