経団連(日本経済団体連合会)は、5日、今年の大手企業の賃上げ率を公表しました。それによりますと、今年の賃上げ率は5.58%となりました。
7月に連合が公表した集計でも今年の賃上げ率は5.10%で、2024春闘は、労使の集計でともに1991年以来、33年ぶりに賃上げ率が5%を超える高い水準となりました。
経団連は、今年の春闘について、従業員500人以上の企業を対象に妥結結果をまとめ、5日、最終集計として135社の結果を公表しました。
【参考資料1 経団連:2024年春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果】
それによりますと、定期昇給にベースアップを加えた月額賃金の引き上げ額は平均で1万9210円で、去年の最終集計を5848円上回りました。
引き上げ額は、今の集計方法となった76年以降で最も高くなりました。
また、賃上げ率は5.58%で、去年と比べて1.59ポイント上昇し、91年以来、33年ぶりに5%を超えました。
業種別でみてみますと、16業種のうち「鉄鋼」、「機械金属」、「造船」など15業種で去年の妥結結果を上回りました。
経団連は「非常に高い水準と受け止めている。この流れを来年も継続し、構造的な賃金引き上げの実現につなげていくことが大事なことだ」とコメントしています。
一方、労働側の連合(日本労働組合総連合会)は、7月3日、今年の春闘の最終集計を公表しています。
【参考資料2 連合:2024春季生活闘争第7回回答集計結果】
それによりますと、回答があった5284社の最終集計では、定期昇給分とベースアップ相当分を合わせた賃上げ額は、平均で月額1万5281円、率にして5.10%となりました。
引き上げ額は、去年を月額で4721円、1.52ポイント上回り、率が5%を超えたのは、やはり、91年以来33年ぶりとなりました。
一方、従業員300人未満の中小企業3816社の平均の賃上げ額は、月額1万1358円、率にして4.45%となりました。こちらは92年以来、32年ぶりの水準となりました。
連合の担当者は「働く人の暮らしがよくなったという実感が広がってるのかと言えば、それは少ないだろうと思うのでしっかりと賃上げを継続していくことが大事だ。中小企業で5%台に届かなかったのは価格転嫁の取り組みが不十分だったことが考えられ、中小企業が賃上げしやすい環境を整えていきたい」と話しています。
厚生労働省は、6日、公表した「毎月勤労統計調査」によりますと、今年6月の働く人1人当たりの基本給やボーナスなどを合わせた現金給与の総額は、前の年の同じ月と比べて4.5%増加し、およそ27年ぶりの高い伸び率となりました。
【参考資料3 厚生労働省:毎月勤労統計調査】
厚生労働省は全国の従業員5人以上の事業所、3万余りを対象に「毎月勤労統計調査」を行っていて、今年6月分の速報値を公表しました。
それによりますと、基本給や残業代、ボーナスなどを合わせた現金給与の総額は、1人当たり平均で49万8884円と、前年の同じ月に比べて4.5%増加し、97年以来およそ27年ぶりの高い伸び率となりました。
このうち、基本給などにあたる所定内給与は26万4859円と2.3%の増加で、ボーナスなど特別に支払われた給与は21万4542円と7.6%増加しました。
こうしたことから、物価の変動分を反映した実質賃金は、前の年の同じ月に比べて1.1%増加し、27か月ぶりのプラスに転じました。
厚生労働省は「今年の春闘の影響で所定内給与が引き上げられた。さらに6月にボーナスを支払う事業所の数も例年以上に増え、実質賃金がプラスに転じたとみられる。今後も物価高騰は続くとみられるが、プラスを維持できるのか注視したい」と分析しています。
NHKの報道によりますと、林官房長官は、6日の記者会見で「賃上げの明るい動きが明確になってきた。春闘の力強い成果が今後さらにあらわれるとともに、秋以降に地域別最低賃金が改定され、非正規雇用労働者や中小企業の賃上げにつながることが見込まれており引き続き注視していきたい」と述べました。
その上で「政府としては中小・小規模企業のため、労務費の価格転嫁をよりいっそう図るとともに、自動化や省力化投資の推進などを通じた労働生産性の向上を全力で支援し、賃上げの実感を確かなものとしていきたい」と述べたと報じています。以 上
筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト
元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職事件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。
その後、連合(日本労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。
政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。
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