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全国知事会議 人口減少問題 政府に政策推進の司令塔設置求める

今年の全国知事会議は、8月1~2日、福井市で開催されました。人口減少問題が我が国の最大の戦略課題だとして、政府に対し、政策を推進する司令塔組織の設置を求めていくことなどを盛り込んだ宣言を採択し、日程を終えました。今回は全国知事会を取り上げます。

全国知事会とは

全国知事会は、地方自治法第263条3に基づき設立された都道府県知事の全国的連合組織です。

戦後、選挙により知事が選ばれることになったことを受け、1947年10月に「全国地方自治協議会連合会」として設立され50年10月に「全国知事会」に改称しています。

現在は、村井嘉浩・宮城県知事が第15代の会長を務めています。

主に地方行財政に関し、国への要望や政策提言を行い、全国都道府県議会議長会、全国市長会、全国市議会議長会、全国町村会、全国町村議会議長会と共に地方自治確立対策協議会を組織し、「地方6団体」と呼ばれます。

全国知事会議は、都道府県知事が一堂に会して、地方の課題や政策について議論するものです。

2024全国知事会議の主な議題

今回の全国知事会議では、「子ども・子育て政策を強力に推進するための提言」をはじめ「人口戦略対策本部の設置及び決議案について」、「学校教育を担う人材の確保に関する取組の充実について、高等学校段階におけるデジタル人材育成の抜本的強化について」、「3巡目国スポの見直しに関する考え方」など24の議題が議論されました。

また、「大規模災害時に備えた防災DXの取組」、「大阪・関西万博をきっかけとした交流人口増加」、「人口減少社会への戦略」、「休み方改革」の4点について自由討議が行われた他、「重点支援地方交付金の活用(物価高騰に対する医療機関への支援)に関する申し入

れ」、「航空燃料の安定供給に関する緊急要望」など11項目について政府はじめ関係機関に要請することを決定しました。

                       【参考資料1 全国知事会議議事次第】

このうち、人口減少問題への対応についての議論では、平井伸治・鳥取県知事から「47の大切なふるさとが人口減少で変わろうとしている。地方も大都市も人口減少を食い止めることが必要で、待ったなしの課題だ。行動を起こさなければならない」との提起がなされました。

「地方だけでは限界。活力ある都市分散が望ましい」(新田八朗・富山県知事)や「東京一極集中にメスを入れなければ解決しない」(浜田省司・高知県知事)などの意見も出されました。

さらに、自治体の財政力によって、子育て環境に格差が生じないよう全国一律での子ども医療費助成、高校授業料無償化などに向けた地方財源確保、大学や企業の本社機能、研究開発部門の地方分散推進も求め、企業が拠点を地方に移すと税が軽くなる「地方拠点強化税制」の拡充を求めていくという指摘もなされました。

そして、人口減少問題への対応を強化するため、平井知事を本部長とする対策本部を知事会に設置することを決めるとともに、政府に対し、構造的な課題の解決に向けて、戦略を総合的に推進する組織や体制を整備することなどを求めていくことになりました。

提言では、妊娠や子育て環境の整備にとどまらず、経済や災害などの危機管理といった観点からも人口減少対策を進める政府の司令塔組織設置を要請します。

小池百合子・東京都知事からの反論

一方、こうした「人口や産業が特定の地域に集中している」と指摘した意見について、小池百合子・東京都知事から「日本全体の問題であり、パイの取り合いを考えていたのでは本質的な解決はできない」と反論がありました。

この中で、小池知事は「特定の地域への人口や産業の集積と 日本全体の人口減少を関連づけたような考え方は因果関係が不明確」と意見を述べた上で、「人口減少は国全体の問題であり、国内でパイの取り合いを考えていては 課題の本質的な解決につながらない」として、東京の一極集中のメリットを否定する議論ではなくオールジャパンで議論を進めていくよう訴えました。

決議案に謳われていた「人口や産業が特定の地域に集中している」という文言について疑問を呈しましたが、文言は変更しないものの、東京都の主張を追記する形で決議がまとめられ、政策を推進する司令塔組織の設置などを求めていくことを盛り込んだ「福井宣言」を採択しました。

全国知事会会長・村井・宮城県知事は記者会見で「人口減少問題にいちばん危機感を持たなければならない政府が対策を真剣に考えていない。民間とも力をあわせて政府の厚い壁を突き破っていきたい」と述べました。

国民スポーツ大会、被災地支援、万博支援も

また、開催する都道府県の負担などが課題となっている国民スポーツ大会(旧国民体育大会)の見直しに向けての議論も行われました。

毎年の開催は維持しつつも、大会の効率化を図り、複数の都道府県での広域開催、国などに開催費用の半分以上を負担するよう求めていく意見をまとめ、日本スポーツ協会が、9月上旬に開催する予定の有識者会議に要請することにしています。

さらに、「能登半島地震をはじめとする大規模災害の被災者が一刻も早く日常の生活を取り戻せるよう、被災地の迅速な復旧・復興の支援に、都道府県の力を結集して取り組む」こと、開幕まであと9か月となった大阪・関西万博の成功をその後の日本経済の成長・発展に着実に結び付けていくため、全国の機運醸成、オールジャパン体制で推進していく」ことを宣言に盛り込みました。

               【参考資料2 令和6年7月 全国知事会議 福井宣言 】

                                     以 上

筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト

元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネ

コン汚職事件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。

その後、連合(日本労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙

戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。 

政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。

☆元NHK記者・選挙アナリスト平木雅己記事はこちら☆

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