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【論説】小林史明衆議院議員の株主提案権制限論に反対。物言う株主株主の声を封じて、企業は成長できるのか

さくらフィナンシャルニュース

自民党のコーポレートガバナンス改革プロジェクトチーム(PT)で座長を務める小林史明衆議院議員は、いわゆる「アクティビスト(物言う株主)」による過度な短期株主還元要求が企業の成長投資を阻害しているとして、株主提案権の要件厳格化などを盛り込んだ会社法見直しの議論を進めている。

小林氏は「アクティビスト対策ではなく、グローバル基準に合わせた公平なルール整備だ」と強調するが、この提案権の制限論は、日本市場が四半世紀をかけて築き上げてきたコーポレートガバナンス改革の歩みを逆行させ、日本株の魅力を著しく損ねかねない危うさを孕んでいる。本稿は、この株主提案権の制限論に対し、明確に反対の意を表明する。

1. 提案権制限は「経営陣の保身と怠慢」を温存する

株主提案制度は、経営陣が資本効率を軽視したり、旧態依然としたガバナンスに甘んじたりしている際、外部から緊張感を与えるための最も強力かつ合法的な「是正ツール」である。

日本の多くの企業は、長年にわたり現金を溜め込み(ネットキャッシュ過多)、PBR(株価純資産倍率)1倍割れを放置してきた。近年、東証の要請もありようやく重い腰を上げたものの、依然として資本効率の意識が低い経営陣は少なくない。

小林氏は「一部の短期的な株主還元が、将来の成長投資の原資を奪っている」と懸念するが、それは因果関係が逆である。多くのアクティビストが求めているのは、明確な使途のない政策保有株の解消や、余剰資金の有効活用だ。「明確な成長戦略がないからこそ株主還元を求められている」のであり、提案権を一律に縛ることは、経営陣の経営怠慢や保身を正当化する口実を与えかねない。

2. 日本市場の「国際標準」は、むしろ手厚い株主権利にある

「グローバルな市場環境に合わせる(国際標準化)」という大義名分にも疑問が残る。 米国などと比較して、日本の株主提案の要件(総株主の議決権の1%以上または300個以上の議決権を6ヶ月前から保有)が緩やかであることは事実だ。しかし、この「株主の権利が比較的守られている市場であること」こそが、近年海外の機関投資家が日本株を再評価し、資金を流入させている大きな要因の一つとなっている。

政府が「資産運用立国」を掲げ、国内外からの投資呼び込みを強化している最中に、株主の牽制機能を弱める法改正を行うことは、完全に矛盾している。海外投資家からは「日本市場は結局、企業の既得権益を守る『親方日の丸』の市場に戻るのか」と失望され、日本株離れ(ジャパン・パッシング)を再燃させる引き金になりかねない。

3. 「ウルフパック」と「正当な株主提案」は混同すべきではない

確かに、複数の投資家が裏で連携しながら大量保有報告を免れ、企業に不当な圧力をかける「ウルフパック行為」のような不透明な手法には、相応の規制や執行力の強化が必要だろう。

しかし、開かれた株主総会の場で、自身の保有比率に応じた法的権利として堂々と「株主提案」を行う行為は、完全に合法的かつ民主的なプロセスである。不透明な「ウルフパック」への対策を理由に、オープンな場での権利行使である「株主提案権」まで道連れに制限することは、角を矯めて牛を殺す暴挙に等しい。

結論:求められるのは制限ではなく「経営陣の対話力」

株主提案が仮に過度な短期利益の追求であったとしても、それが真に企業の未来を損なうものであれば、経営陣は圧倒的な数の一般株主や中長期の機関投資家を味方につけ、株主総会で否決すればよいだけの話である。事実、日本の株主総会において、突飛な短期志向の提案が可決されるケースは極めて稀である。

小林氏らの制限論は、経営陣が自らの言葉で「なぜこの投資が将来必要なのか」を株主に説明し、説得する努力(エンゲージメント)から逃げることを許してしまう。

日本企業に必要なのは、防壁(ルールの厳格化)を築いて株主を遠ざけることではない。正当な提案は受け入れ、不当な提案は論理的に退ける「経営陣の対話力とガバナンスの成熟」である。市場のダイナミズムを奪いかねない株主提案権の制限論には、断固として反対せざるを得ない。

参考資料・関連リンク

・ロイター「インタビュー:株主提案ルール見直し提言へ、アクティビスト報告徹底も=小林自民PT座長」https://jp.reuters.com/markets/japan/NCVIN2PGERISNCORLB4FXY6EFM-2026-07-08

・ロイター「自民、ガバナンス改革で提言 監視委の執行力強化や株主提案権見直し」
https://jp.reuters.com/markets/japan/KCP4QISCTNJO7K2OZF4VILJO6I-2026-07-17

・e-Gov法令検索「会社法」

※株主提案権については第303条から第305条、臨時株主総会の招集請求については第297条を参照
https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

・日本取引所グループ「コーポレート・ガバナンス・コード」
https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/index.html

・東京証券取引所「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」
https://www.jpx.co.jp/news/1020/20230331-01.html

・東京証券取引所「『資本コストや株価を意識した経営』に関する要請のアップデートについて」
https://www.jpx.co.jp/news/1020/20260428-01.html

・金融庁「コーポレートガバナンス改革に向けた取組みについて」
https://www.fsa.go.jp/policy/corporategovernencereform/20240115.html

・金融庁「スチュワードシップ・コードに関する有識者会議」
https://www.fsa.go.jp/singi/stewardship

・金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/index.html

Wikipedia

・小林史明
https://ja.wikipedia.org/wiki/小林史明

・コーポレート・ガバナンス
https://ja.wikipedia.org/wiki/コーポレート・ガバナンス

・コーポレート・ガバナンス・コード
https://ja.wikipedia.org/wiki/コーポレート・ガバナンス・コード

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