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今後の景気動向 「拡大」「緩やかに拡大」が7割超  個人消費回復への期待の一方、円安や物価高が景気の足かせ  ~共同通信社企業アンケートで浮き彫りに~ 

今後1年間の景気動向について「拡大」「緩やかに拡大」と予想する企業は7割を超える一方、「横ばい」や「緩やかに後退」と見る企業も2割を超えていることが共同通信が行った主要企業へのアンケートでわかりました。

このアンケートは、各業界を代表する企業111社に7月中旬から8月初旬にかけて、共同通信が実施したもので、8月10日公表されました。

それによりますと、今後1年間の景気動向について「拡大」「緩やかに拡大」と予想する企業は72%で前年のアンケートよりも10ポイント減少しました。

景気拡大を見込む理由を複数回答で尋ねたところ、「個人消費の回復」が84%で最も多く、「設備投資の回復」が79%、「訪日客の消費拡大」が53%でした。

一方、「横ばい」や「緩やかに後退」と回答した企業は23%で、前年の15%から8ポイント増加しました。

横ばいや後退の理由について尋ねたところ、「個人消費の低迷」が64%と最も多く、「円安の悪影響」と「物価上昇の悪影響」が48%でした。

個人消費への回復の期待が続いた一方、円安や物価高が景気の足かせになると懸念している状況が浮き彫りになっていると分析しています。

アンケート実施後には、日銀の追加利上げと米国の景気減速懸念を背景に株式市場と為替市場で動揺が広がっていて、消費マインドに水を差す影響が実体経済にも波及すれば、企業の景況感を一段と下押しする可能性も出ています。

また、70%の企業は、自社の業績見通しが拡大傾向にあると答えました。

国内景気の現状に関しては、54%が「緩やかに拡大」していると答え、43%が「横ばい」と回答しています。

物価と賃金の動向では、製品やサービスの価格を今後1年間で引き上げると答えた企業が42%に上る一方、2025年春闘での賃上げ方針は76%が未定と回答しました。

岸田政権に特に実現を求める政策は、「少子高齢化対策」が35%、「円安・物価高対策」が34%でした。

自由記述では、経済成長を促す規制改革を求める意見が目立ちました。

経済安全保障の観点も踏まえて設備投資や研究開発投資、営業拠点整備を重点敵に進めたい国や地域を尋ねたところ、日本国内が58%、国外では北米の35%、東南アジアの32%が多い一方、中国は6%にとどまりました。

中国事業を拡大する方針の企業は10%で、縮小方針の9%とほぼ同じで、事業規模を維持するというの回答は40%でした。

外国為替市場で円相場が一時1ドル160円台の大台を突破した円安基調については、合わせて64%の企業が円相場の水準に「懸念がある」「やや懸念がある」と回答しました。

円安基調の要因について複数回答で尋ねたところ、「日本の低金利」と回答した企業が68%、「米国の高金利」が59%で、日米の金利差が意識されていていました。

円安は輸出企業にとっては追い風だが、原材料費の上昇や物価高による消費不振を招くため、日本経済や企業活動の重荷になるとの警戒感がうかがえました。

円安などによる物価高への対策で、政府は所得税・住民税の定額減税やガソリン補助、電気・ガス代軽減などを実施している点についても聞きました。

こうした政策が望ましいかや、継続実施すべきかどうかを聞いたところ「望ましくないため、実施すべきではない」が14%、「望ましくはないが、実施すべき」が12%で拮抗した。無回答が最も多くなりました。

ある商社からは、景気回復や家計支援のため必要だととしつつも「中長期的な財政の持続可能性、将来世代からの負担増に十分留意すべきだ」との回答が寄せられました。

今回の企業アンケートでは、今後も景気の拡大基調が続くとの見方がある一方で、円安や物価高による消費低迷を懸念する意見も目立ち、慎重姿勢もにじむ内容となりました。

大企業では賃上げの恩恵が広がっていますが、中小ではコスト増を取引価格に転嫁できず賃上げ原資を確保できない企業も多く、こうした点が改善が改善しなければ消費は力強さ

を欠いたままになります。

24年春闘の賃上げ率は連合集計で、大企業は5%を超えましたが、物価高による打撃は深刻で、東京商工リサーチによりますと、24年上半期の倒産件数は10年ぶりの高い水準で推移し、うち9割近くを従業員10人未満の企業が占め、大企業との明暗が浮き彫りとなっています。

政府は、発注側の大企業が下請けに不利な取引を強いる構造を問題視していて、公正取引委員会が下請法違反で再発防止を勧告する事例が今年に入って相次いでいます。

中小企業がコストの増加を大企業に転嫁できれば収益が改善し、賃上げの動きも力強さを増すことが期待されます。  賃上げや価格転嫁の裾野拡大ができるかどうかが問われます。

以 上

筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト

元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職事

件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。

その後、連合(日本労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。

政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。

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