立憲民主党は、9月末に泉健太代表の任期を迎えることから、9月7日告示、23日投開票にて党代表選挙を実施することを7日の両院議員総会にて決定しました。
これを受けて、前代表の枝野幸男衆議院議員が、9日立候補の意向を表明しました。
泉代表も再選を目指しているほか、野田佳彦・元首相にも立候補を求める意見があるなど、他の議員も立候補を模索するなど代表選挙に向け、党内の動きが表面化してきました。
動き出した立憲民主党代表選挙の現状をまとめます。
立憲民主党代表選挙の仕組み
立憲民主党代表選挙は、党所属の国会議員のほか、衆参の国政選挙の公認候補予定者、地方議員、党員・サポーターに割り当てられるポイントの合計で争われます。
有権者となる、衆参国政選挙の公認候補予定者などの人数は、告示の1週間前までに確定することになっています。
8月7日の時点では、ポイントの合計が732ポイントとなる見込みで、過半数を獲得した候補者が代表に選出されます。
具体的には、◆衆参両院の副議長を含む136人の国会議員に1人2ポイント、◆現在、94人いる衆参国政選挙の公認候補予定者に1人1ポイントの、合計366ポイントが割り当てられる見込みです。
国会議員と国政選挙公認候補予定者は、9月23日の臨時党大会で直接、投票します。
また、◆全国1200人余の地方議員と、◆党員・サポーターにはそれぞれ183ポイントが割り当てられる見込みです。
地方議員と党員・サポーターの投票は、郵便かインターネットで行われ、得票数に応じていわゆる「ドント方式」でポイントを配分します。
過半数のポイントを獲得する候補者がいなかった場合は、上位2人による決選投票が行われます。
決選投票は、◆国会議員に1人2ポイント、◆国政選挙の公認候補予定者に1人1ポイント、◆各都道府県連の代表者に1人1ポイントを割り当て、合計413ポイントで争われる見込みです。
【参考資料1 党内資料 代表選挙の公告】
【参考資料2 党内資料 説明会及び届出】
過去2回の代表選挙
立憲民主党は、これまで2回、代表選挙を行っています。
第1回代表選挙 20年9月10日
17年に結党された立憲民主党に、旧国民民主党の議員はじめ、社会保障を立て直す国民会議、無所属フォーラムなどから合流することで、改めて現在の立憲民主党が結党された際に行われました。
枝野氏と泉氏が争い、枝野氏107票と泉氏42票で、枝野氏が代表に選ばれ、泉氏は政調会長に就任しました。
【参考資料3 枝野氏 泉氏 推薦議員リスト】
第2回代表選挙 21年11月30日
21年10月に行われた衆議院議員選挙敗北の責任を取り、枝野氏が辞任したことで実施されました。
泉氏の他、逢坂誠二、小川淳也、西村智奈美の各衆議院議員が立候補して争われました。
1回目の投票で、泉氏が189ポイント、逢坂氏が148ポイント、小川氏が133ポイント、西村氏が102ポイントを獲得しましたが、過半数の287ポイントを上回る候補者はなく、泉氏と逢坂氏の上位2人による決選投票に持ち込まれました。
決選投票は国会議員に各2ポイント、公認候補予定者に各1ポイント、47都道府県連の代表者に各1ポイントの合計333ポイントで争われました。
決選投票の結果、泉氏は205ポイント、逢坂氏128ポイントで、泉氏が第2代の代表に就任しました。
【参考資料4 逢坂氏 小川氏 泉氏 西村氏 推薦議員リスト】
泉体制での選挙結果と今回の代表選をめぐる党内の動き
今年9月末、泉代表が任期を迎えることから今回、代表選挙が行われることになりました。
泉執行部発足後の22年参議院選挙では、選挙区で6議席減らし 比例代表の得票数は約677万票にとどまり、約785万票を獲得した日本維新の会に「比例での野党第1党」の座を奪われる惨敗となりました。党幹部人事の刷新を行いました。
一方、今年4月に行われた衆議院の3つの補欠選挙では、すべて公認候補が勝利しましたが、7月に行われた都知事選挙での惨敗、同時に行われた9つの都議会議員補欠選挙で1議席しか獲得できなかったこと、日本維新の会や国民民主党などとの選挙協力が進んでいないことから、党内では「泉代表では次の衆議院選挙を戦えない」という意見が公然と噴出しています。
大臣や党執行部を経験したいわゆる「党内実力者」の発言や動きについての報道を紹介します。
●小沢一郎衆議院議員
◆7月9日、自らが率いる党内グループ「一清会」の会合にて、泉氏が続投した場合は 「だめじゃねえか。沈没じゃねえかよ」(産経新聞)
◆7月19日、野田氏と8年ぶりに食事しながらの会談を行い、代表選挙について意見 交換(NHKほか各社報道)7月31日にも野田氏と会食。
◆7月25日、自治労や日教組などの連合出身議員が多くメンバーとなっている党内グ ループ「サンクチュアリ」に影響力を持つ赤松広隆元衆議院議長と会談(NHK)
◆7月27日、横浜市で講演「泉代表に代わる候補者を擁立したい」という考えを示し ました。「いまの執行部体制では、なかなかほかの野党と協力関係ができない。なんと しても他党と協力関係ができる体制にして、いつ選挙があっても、政権が取れる政党に したい」(NHK)
◆8月6日、「一清会」会合にて、泉代表のままでは他の野党との連携が進まず政権交 代は困難だとして、泉氏以外の候補者の擁立を目指す方針を確認しました。(NHK)
●泉代表
◆7月22日、国民民主党の玉木雄一郎代表、連合の芳野友子会長と会食し、次期衆院 選での連携を巡り意見交換。(7/23時事通信)
◆7月23日、日本維新の会の馬場伸幸代表と会談、7月25日、社民党の福島みずほ党 首と会談(いずれもNHK)
◆7月31日、記者団に対して、「政権交代に向けた準備を進める。自分自身の歩みを振 り返り、次の立民に何が必要なのか答えを出していきたい」と述べ、代表選に意欲を示
しました。自身を支える党内グループ「新政権研究会」幹部とオンラインの会議(8/1 讀賣新聞)
◆8月5日、奈良市内で、立候補を模索している馬淵澄夫・元国土交通相と会談
●枝野前代表
◆7月25日、党所属の地方議員と懇談し、代表選への立候補を促された(NHK)
◆7月30日 小沢一郎衆議院議員と会談(NHK)
◆8月9日、「逃げることなく時代の転換の先頭に立つのがわたしの使命だ」と述べ、 立候補する意向を明らかにし、21日に正式な立候補会見を行うことに。(NHK)
●その他の動き
◆8月2日、党内の中堅・若手議員グループ「直諫の会」を率いる重徳和彦・衆議院議 員は、泉代表は若さを強みにできていないと指摘した上で、予防医療の強化や、農業を 軸とした地域振興などを盛り込んだグループの政策を発表しました。(NHK)
立憲民主党内には多くの議員グループが存在します。
自治労や日教組など連合出身の議員が多く所属する「サンクチュアリ」、菅直人元首相が率いる「国のかたち研究会」、泉代表を支える旧国民民主党議員が多く所属する「新政権研究会」、かつて所属していた細野豪志衆議院議員が作った「自誓会」、旧みんなの党や維新の会出身が多い「直諫の会」、野田元首相が主宰する「花斉会」、中村喜四郎元建設相が小選挙区勝利する議員を育てようと呼びかけた「小勝会」、江田憲司衆議院議員の「ブリッジの会」、そして小沢氏の「一清会」です。
来年(25年)夏には東京都議会議員選挙と参議院議員選挙が行われます。また、25年10月に任期満了を迎える衆議院議員の選挙がいつ行われるのか。
衆参議員選挙を控え、立憲民主党は誰をリーダーに選ぶのか。代表選日程が決定したことで党内の各グループの合従連衡も表面化しています。
編集部では、引き続き、立憲民主党代表選挙の状況をお伝えします。
以 上
筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト
元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職事
件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。
その後、連合(日本労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。
政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。
☆出稿資料☆
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