サイモン・ジョンソン氏は2024年10月14日にノーベル経済学賞を受賞した3人のうちの1人です。
受賞理由は、「制度がどのように形成され、国家の繁栄や貧困にどのような影響を与えるか」を解明した点にあります。 特に、政治的・経済的制度が国家間の繁栄の差にどう関与し、その違いが長期に存続する理由を明らかにしたことが評価されました。 また経済学に政治体制や社会制度の分析手法を応用した革新性も高く評価されています。
ジョンソン氏は制度を「包括的制度」と「抽出的制度」に分類し、「包括的制度」は法の支配や財産権の保護を行い、 すべての国民に経済的な機会を提供する制度であるとしています。 一方、「抽出的制度」はエリート層が国民から搾取し利益を独占するもので、経済発展には「包括的制度」が不可欠であり、 これが社会の安定と長期的な繁栄の基盤になると結論付けています。
彼の研究は、制度の歴史的背景、特に植民地時代に導入された制度が現代の制度形成にどのように影響しているかを実証しました。 植民地化の際、現地の疾病リスクが制度の形成に重要な影響を与えたとされ、ヨーロッパ人が健康に定住できた北米やオーストラリアでは「包括的制度」が導入されましたが、 疾病リスクが高く定住が難しかったアフリカ・中南米・南アジアでは「抽出的制度」が採用されました。 この制度の違いがその後の経済発展に大きな影響を与え、現在も経済的格差の要因となっていることを示しています。
さらに、ジョンソン氏は、貧困削減や経済成長を目指す国々に対し、教育の普及や法制度の改善、平等な経済政策に注力して「包括的制度」を強化するよう提唱しています。 こうした改革は社会全体の安定と成長を促し、発展途上国の貧困や経済停滞の解決に寄与すると期待されており、 彼の研究は、特に発展途上国の持続的な発展政策に新たな視点を提供しています。
サイモン・ジョンソン氏の経歴
サイモン・ジョンソン氏は、1963年1月16日にイギリスのシェフィールドで生まれ、オックスフォード大学で経済学と政治学の学士号(1984年)、マンチェスター大学で経済学の修士号(1986年)、マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学の博士号(1989年)を取得しました。
1991年から1997年までデューク大学のフュークア・スクール・オブ・ビジネスで助教授及び准教授を務め、2004年からはMITスローン経営大学院のロナルド・A・カーツ起業家精神教授を務めています。また、2004年から全米経済研究所(NBER)の研究員としても活動中です。2007年から2008年には国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミスト兼研究部長を務め、2014年から2017年には米国財務省金融調査局(OFR)の金融研究査諮問委員会メンバーを歴任しました。2021年2月にはファニーメイの取締役会メンバーに就任しました。
主な業績としては、ジェームズ・クワックとの共著である「13 Bankers: The Wall Street Takeover and the Next Financial Meltdown」や、ダロン・アセモグルとの共著である「技術革新と不平等の1000年史」などがあります。
参考サイト:さくらフィナンシャルニュースnote
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