東京地検特捜部は11月15日、東京・千代田区に拠点を置く「鈴木康之法律事務所」の代表である弁護士・鈴木康之容疑者(53歳)を、法人税法違反などの疑いで逮捕しました。鈴木容疑者は、事務所のコールセンターにAIシステムを導入するという名目で架空の費用を計上し、およそ1億1100万円の所得を隠して法人税約2700万円を脱税したとされています。
〈容疑の詳細〉
特捜部の調べによれば、鈴木容疑者は2017年と2019年にかけて架空の業務委託費を計上し、所得を隠していた疑いが持たれています。
費用計上の名目は、コールセンター業務の効率化を目的としたAIシステム導入のためのコンサルティング費用とされています。
しかし、実際にはその業務が実施されておらず、架空の支出だったとみられています。脱税により得た資金の一部は、株式投資などに使われていた可能性があるとされ、東京地検特捜部と東京国税局が押収資料をもとに経緯を詳しく調べています。
〈鈴木容疑者の供述〉
関係者によると、逮捕前の事情聴取において鈴木容疑者は「コンサルタント業務を依頼したのは事実であり、脱税をしようと思ったわけではない」と容疑を否認していました。また、「すでに業務を頼んでおり、導入を進める予定だった」として、架空計上であることを否定していたとのことです。
〈法律事務所の背景〉
鈴木康之弁護士は2002年に弁護士登録を行い、2009年に「鈴木康之法律事務所」を設立しました。同事務所は債権回収、不動産の明け渡し訴訟、「過払い金返還請求」などを専門業務としており、千代田区の本部のほか、大阪市と名古屋市にも拠点を構えています。また、所属弁護士はおよそ10名で、地域ごとに業務を分担して活動しているといいます。
〈事件の影響〉
鈴木容疑者はこれまでに金融機関や通信販売会社を代理して債権回収業務を請け負うなど、業界で一定の評価を得ていた人物でした。
しかし、今回の逮捕により、その経営実態や事務所の信頼性に疑問の声が上がることが予想されます。
特捜部は今後、脱税に至った経緯や資金の使途についてさらに調査を進める方針です。
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