9月7日告示された立憲民主党の代表選挙は、23日、都内のホテルで臨時党大会が開催され投開票が行われました。
1回目の投票で、過半数を獲得した候補者がいなかったため、野田佳彦・元首相と枝野幸男・前代表による決選投票が行われ、野田氏が新しい代表に選出されました。
【参考資料 各候補の獲得ポイント票】
代表選挙は、22日までに締め切られた地方議員と党員・サポーターによるいわゆる「地方票」の結果がまず発表され、370ポイントのうち、野田氏が139ポイント(地方議員58ポイント・党員サポーター81ポイント)、枝野氏が123ポイント(地方議員71ポイント・党員サポーター52ポイント)、泉氏が59ポイント(地方議員33ポイント・党員サポーター26ポイント)、吉田氏が49ポイント(地方議員23ポイント・党員サポーター26ポイント)を獲得しました。
このあと1人2ポイントを持つ国会議員135人と、1人1ポイントの国政選挙の公認候補予定者98人が投票を行い、有効投票の368ポイントのうち野田氏が128ポイント、枝野氏が83ポイント、泉氏が84ポイント、吉田氏が73ポイントを獲得しました。
この結果、1回目の投票全体では、野田氏が267ポイント、枝野氏が206ポイント、泉氏が143ポイント、吉田氏が122ポイントとなりましたが、いずれの候補者も過半数371ポイントを獲得できず、1位の野田氏と2位の枝野氏の上位2人による決選投票が行われることになりました。
決選投票は、国会議員に1人2ポイント、国政選挙の公認候補予定者と各都道府県連の代表者に1人1ポイントずつの合計417ポイントで争われ、その結果、◆野田氏が国会議員144ポイント、公認候補予定者 60ポイント、都道府県連の代表者 28ポイント、合計232ポイント、◆枝野氏が国会議員 126ポイント、公認候補予定者 35ポイント、都道府県連の代表者 19ポイント合計180ポイントをそれぞれ獲得し、その結果、野田氏が新しい代表に選出されました。
野田佳彦・元首相の経歴
野田氏は、衆議院千葉4区選出の当選9回で、現在67歳です。
松下政経塾出身で、千葉県議会議員を経て1993年の衆議院選挙に当時の日本新党から立候補して初当選しました。
2011年に民主党政権として3人目となる総理大臣に就任し、2012年には、消費税率の引き上げを含む社会保障と税の一体改革の関連法を成立させましたが、直後の衆議院選挙で敗北し、政権を失いました。その後、無所属などを経て、4年前の2020年に立憲民主党に参加しました。
今回の代表選挙では、当初は「『昔の名前で出てます』ではいけない」などとして立候補に慎重な姿勢を示していましたが、ベテランの小沢一郎・衆議院議員からの期待に加え、中堅・若手議員などから要請が相次いだことを踏まえ、立候補を決断しました。
座右の銘は松下政経塾を設立した故・松下幸之助氏のことばで成功まで志を貫くという意味の「素志貫徹」です。
主な政策課題についての野田氏の発言
●衆議院選挙に向けた野党連携のあり方について
野田氏は、「野党の議席の最大化こそ自公政権を過半数割れに追い込むことになり、対話の中で政権を一緒に担う野党も出てくる。いちばん近いところにいる国民民主党は代表選挙が終わったら協議しなければならない。日本維新の会とも一致できるか探っていきたい」
と述べています。
●政治改革の具体策について
野田氏は、「『裏金事件』は脱税であり、何もけじめがついていない。世襲議員も多すぎて、民主主義の国家と言えるのか。弊害が多いと思っている。被選挙権年齢を引き下げ、女性のチャンスを拡大し、世襲を制限することで有為な人材にチャンスをつくる被選挙権改革をしたい」と述べています。
●消費税について
野田氏は、「税率を1回下げたら戻すのが大変だと思っていて軽々に下げていいとは思わない。税制全般を見直す中で消費税の扱いをどうするか議論すべきだ」と述べています。
●経済・財政政策
野田氏は、「自民党は大企業優先だが、われわれは個人の家計を重視することが決定的な違いだ。税の再分配としての消費税の還付や、ベーシックサービスの拡充、それに教育の無償化など家計が元気になるような政策を打ち出すことが大事だ」と述べた上で、「金利が低い状況は政府にとって借金がしやすく最近はのほうずに借金している傾向がある。日銀と政府がどういう目標で金融や財政政策をしていくか、共同声明=アコードをもう1回見直すところから始めないといけない」と訴えています。
●地域活性化の政策
野田氏は、「農業の就業者減少に歯止めをかける政策が自民党政権にはない。令和版の国立農業公社をつくり、就農したい人を研修し、給料も社会保険もつけ、5年間は中山間地域で働いてもらう」と訴えています。
●社会保障・教育無償化・格差是正
野田氏は、「今の公的年金制度の『財政検証』の内容を検証する。給付水準を物価や賃金
の上昇率より低く抑える『マクロ経済スライド』の妥当性も含めて検討し、持続可能な年金制度を構築していきたい」と述べた上で、「一番大きなテーマが教育の無償化だ。大学に行きたいと思う人なら誰もがチャンスをつかめる国にしたい。学ぶチャンスを与え、将来世代に投資する世の中をつくることを誓いたい」と訴えています。
●選択夫婦別姓について
野田氏は、「多様性を認め合う共生社会をつくり、ジェンダー平等を実現するため選択的夫婦別姓を速やかに実現する。自民党が反対する状況が続いてきたが、経団連も早期実現
を主張するようになった。チャンスを逃してはいけない」と述べました。
●外交・安全保障政策について
野田氏は、「総理大臣だった時に、日本とアメリカを軸にルールづくりをして、地域が繁栄し平和を確保する『太平洋憲章』を思い描いていた。ダイナミックな構想の中で現実的な外交戦略を描いていく」と述べた上で、「日米同盟こそが外交・安全保障の基軸であるのは間違いなく、深化させなければならない。アメリカをアジアの問題に関与させることは日本の役割だ。外交は一定の経験値が必要で私には経験値があると強調したい」と訴えています。
●原発含むエネルギー政策/災害対策について
野田氏は、「再生可能エネルギーの普及を高め、原発に依存しない社会を実現する姿勢で臨む。再稼働は避難計画の策定と地元の同意が必要というプロセスをたどり、増設はしない姿勢が大事だ」と述べています。
災害対策について、野田氏は「災害対応では復旧・復興にどれくらいの予算が必要か積み上げて補正予算案を編成することが基本で、われわれも予算案には賛成する。政府が予備費ばかり支出するのは財政民主主義に反する」と述べています。
●憲法改正について
野田氏は、「憲法は不磨の大典ではなく、一字一句変えてはいけないという立場ではない。議論はあってしかるべきで、立憲主義にもとづく『論憲』が基本的な立場だ」としています。
以 上
筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト
元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職事件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。
その後、連合(日本労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。
政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。
☆出稿資料☆
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