9月12日告示された自民党の総裁選挙は、23日、党主催の政策討論会が行われました。
9人の候補者は、27日の投開票に向け、最終盤の活動を強化していきます。
主な政策についての9氏の政見を整理しました。
上編は、立候補決意、政治とカネの問題についての9氏の政見です。【届出順】
【参考資料:9氏の政見、発言比較票】
■立候補の決意
●高市早苗・経済安保相
高市氏は、「国の究極の使命は、国民の生命と財産、領土・領海・領空・資源、そして国家の主権と名誉を守り抜くことだ」と述べています。
その上で「総合的な国力の強化が必要だ。それは外交力、防衛力、経済力、技術力、情報力であり、すべてに共通する人材力だ。何よりも経済成長が必要だ。経済成長をどこまでも追い求め、日本をもう一度世界のてっぺんに押し上げたい」と強調し、危機管理分野への投資によって国民の安心と安全を確保し、成長分野などに戦略的な財政出動を行って、強い経済を実現すると話しています。
●小林鷹之・前経済安保相
小林氏は、「当選4回、40代、普通のサラリーマン家庭で育った私が派閥に関係なく今、この場にこうして立っている事実こそが自民党が本気で変わろうとする象徴になる」と述べています。
政策面では経済政策を最初に挙げ「『経済は財政に優先する』というのが基本的な考え方で、世界をリードする戦略産業を育成する。あわせて物価高への対策パッケージをことし中に打ち出す」と話しています。
●林芳正・内閣官房長官
林氏は、「持てる経験と実績をすべて生かしてこの国のために使わせてもらいたい」と述
べています。
そして、「防衛大臣や農林水産大臣、外務大臣など閣僚を経験し、党では税制調査会や行政改革などの政策に取り組んだ。来年、議員生活が30年になるが持てる経験と実績をすべて生かしてこの国のために使わせてもらいたい」と話しています。
●小泉進次郎・元環境相
小泉氏は、「自民党が真に変わるには改革を唱えるリーダーではなく改革を圧倒的に加速できるリーダーを選ぶことが必要だ」と述べています。
その上で「長年、議論ばかりを続け、答えを出していない課題に決着をつけたい。総理・総裁になったら1年以内に実現する改革と中長期を見据えた改革の方向性を説明する。そしてできるだけ早期に衆議院を解散し、中長期の改革プランについて国民の信を問う」と話しています。
●上川陽子・外相
上川氏は、「外務大臣として『一意専心』、職務を遂行することに全力を注いできたが、熟慮の末、決断した。総理大臣として難問から逃げず国民と新たな日本を築きたい」と述べています。
その上で「政治と縁のない家庭に生まれ育ったからこそ国民目線でその声に耳を傾け応えていきたい。声なき声や届きにくかった女性や子どもたち、あるいは犯罪被害者の声をしっかり受け止めてきた。『日本の新しい景色』をぜひ一緒につくりたい」と話しています。
●加藤勝信・元内閣官房長官
加藤氏は、「最優先で推し進めたいことは国民の所得倍増だ。これ以上に重要な政策はない。待ったなしで強い覚悟で取り組み、国民の豊かな生活を実現し、短期間で必ず成果を出す」と述べています。
そして、社会保障をめぐっては、厚生労働大臣を3回務めた経験に触れ「制度が持続可能なのかという懸念の声を聞く。必要な人に必要なサービスが提供される仕組みと、能力に応じて負担し支え合う仕組みを構築していく」と話しています。
●河野太郎・デジタル相
河野氏は、「さまざまなところで直面している有事を乗り越えるため、これまでの経験を生かして、日本のリーダーとしてこの国をさらに前に進めたい」と述べています。
その上で「日本の果たすべき責任や役割は何なのか、明確に主張すると同時に行動に移さなければならない。次の総理大臣たる自民党の総裁を選ぶ選挙で、世界の形をしっかりと議論しなければならない」と話しています。
●石破茂・元幹事長
石破氏は、「38年間の政治生活の集大成として、これを最後の戦いとして原点に戻り、全身全霊で支持を求めていく」と述べています。
その上で「党よりも国民一人ひとりを見るのが私の政治生活の原点だ。子どものころ、神社で夏祭りがあり本当ににぎやかだった。日本は今ほど豊かではなかったが、若い人も、子どもたちも、高齢者も皆、笑顔だった。もう一度にぎやかで皆が笑顔で暮らせる日本を取り戻していく」と述べ、地方の再生に全力を挙げる考えを話しています。
●茂木敏充・幹事長
茂木氏は、「目標を掲げ、チームを束ね、結果を出す。これが目指す新政権の姿だ。実行力のある安定した政権で内外のさまざまな事態にしっかり対応する」と述べています。
その上で、経済成長により見込まれる税収増やいわゆる外為特会など税外収入の増加などを挙げ「必ず結果を出し、3年以内に結果が出なければトップが、総理大臣が責任を取る」と話しています。
■政治とカネをめぐる問題について
●高市早苗・経済安保相
高市氏は、「お金の入りと流れから属人性を完全に排除し、会計や財務の専門家の力も借りて、特定の幹部が使途を決めるのではなく、公平に配分され、使途をチェックできる仕組みをつくる」と訴えています。
●小林鷹之・前経済安保相
小林氏は、「党改革を断行する。政治資金改革の徹底は当然だ。また、当選回数が少なくても能力のある議員や、ベテランで経験豊富な議員など 本当の意味で適材適所の人事を断行する」と訴えています。
●林芳正・内閣官房長官
林氏は、「アメリカのFEC=連邦選挙委員会をモデルに透明性を高め、改革を行う。政党交付金の使い方を見直し、議員がパーティーに頼らなくていい配分を実現する」と訴えています。
●小泉進次郎・元環境相
小泉氏は、「今回の総裁選挙は自民党が本当に変わるか、変えられるのは誰かが問われる選挙だ。政治資金の透明化に加えて党改革や国会改革も進める。一丸となって国民の共感を取り戻したい」と訴えています。
●上川陽子・外相
上川氏は、「政治への信頼を大きく傷つけたことを心からおわびする。国民目線で国民の声に耳を傾けていきたい。私がスタートラインに立てたこと自体が新しい自民党の姿を示
す一歩だ」と訴えています。
●加藤勝信・元内閣官房長官
加藤氏は、「政策活動費は原則として公開する。国会に独立した第三者機関を設け、政治資金の透明性を確保する。旧『文書通信交通滞在費』の未使用分は国庫への返納を徹底する」と訴えています。
●河野太郎・デジタル相
河野氏は、「難しい問題も国民にきちんと説明し、この国を任せられるのは自民党しかないという国民の信頼を勝ちえるのが今回の総裁選挙だ。ひるまず論戦を挑んでいきたい」と訴えています。
●石破茂・元幹事長
石破氏は、「政治不信の中、国民に対して説明責任を果たし、国民が納得するまで総裁として全力を尽くす。国民から信頼される自民党、未来を切りひらく自民党でありたい」と訴えています。
●茂木敏充・幹事長
茂木氏は、「まったく新しい自民党をつくっていく覚悟を示し、二度と同じ問題を起こさないために、党の規律や運営体制、財務体質をゼロベースで見直し、政策活動費も廃止する」と訴えています。
今後の日程
終盤戦に入っている総裁選挙は、党員、党友による投票が26日までに締め切られたあと、27日に国会議員の投票が行われ、あわせて開票され、新総裁が決定します。
以 上
筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト
元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職事件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。その後、連合(日本
労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。
政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会
議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。
☆出稿資料☆
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