2024年11月13日、カナダのコンビニ大手から買収提案を受けているセブン&アイ・ホールディングスは、傘下のスーパー「イトーヨーカ堂」を設立した創業家が関わる企業などからの提案を受けて、非上場化を検討していることがわかった。
セブン&アイ・ホールディングスが、カナダの大手コンビニチェーン「アリマンタシォン・クシュタール」から7兆円規模の買収提案を受けたことに対しての対応策であるという。
こうした中、セブン&アイは13日、傘下のスーパー「イトーヨーカ堂」を設立した創業家の資産管理会社である「伊藤興業」などから新たな提案を受けたと発表した。
この資産管理会社は現在セブン&アイの株式の8%余りを保有。
創業家側の提案はセブン&アイの株式を買収し非上場化するMBO=マネジメント・バイアウトと呼ばれるもので、今後、クシュタール社が敵対的な買収に踏み切った際の対抗策として備えるねらいがあると専門家は捉えている。
セブン&アイの時価総額は6兆円規模で、買収には多額の資金が必要である。
セブン&アイは「潜在的な株主価値を最大化するため、あらゆる選択肢を客観的に検討しています」とコメント。
今回の提案は、社外取締役のみで構成される特別委員会で検討される予定だが、クシュタール社の動向によっては対抗策が実現できるのか未定だ。
〈クシュタール社の買収提案〉
カナダのコンビニ大手「アリマンタシォン・クシュタール」によるセブン&アイ・ホールディングスへの買収提案が明らかになったのは今年8月。
390億ドル、現在の為替レートで(1ドル=155円)およそ6兆円でグループ全体を買収するというものであった。
これに対し、セブン&アイは9月上旬、社外取締役のみで構成される特別委員会でこの提案を検討し、「当社の価値を著しく過小評価している」などと反発、提案を受け入れられないとする内容の書簡をクシュタール社に送った。
すると2ヶ月後10月上旬に、クシュタール社は買収金額を従来の提案より約20%増額し、7兆円規模に引き上げる新たな提案を提示した。
先月の会見で、セブン&アイの井阪隆一社長は「提案内容を真摯に受け止め、対応を検討する」と言及したにとどめたが、新たな提案に対する具体的な回答は現時点では示されてはいない。
MBOのメリットと過去の事例
MBO=マネジメント・バイアウトは、経営者が事業の継続を前提として一般株主から自社の株式を取得する、企業買収の手法の1つであり、経営者が資金の全部または一部を出資し、上場企業の株式を非上場化する手段としても使われる。
経営陣が株主となることで、株主の意向に左右されずに経営にあたることができるため、大胆な事業構造改革などに取り組めるメリットがある。
反面、経営陣が主要株主となることで、外部からの経営監視機能が低下し、経営状況の透明性が減少する可能性も指摘される。古い経営体制をそのまま維持し、MBOを計るのならば選択として厳しい。
〈国内企業におけるMBOの新風〉
2023年から今年にかけて大正製薬ホールディングスやベネッセホールディングス、それに永谷園ホールディングスなどがMBOを行った。
国内では、これまで大正製薬ホールディングスが行った7000億円余りのMBOがもっとも規模が大きい。
もし仮にセブン&アイのMBOが実現すれば、大正製薬ホールディングスを超える過去最大の事例となる見込み。
クシュタール社の提案を拒否するだけでは回答は不十分であった。既存株主の要求に応えるためには新たな提案が必要だ。
そのため今回、その一つの選択肢として創業家による買収提案が示されたと言うことだろう。
関係者によると、MBOに必要な資金の調達先は、セブン&アイの株式約8%を保有する創業家「伊藤興業」のほかにも、3メガバンクや伊藤忠商事などから調達する案が検討されているという。創業家以外からクシュタール社の7兆円を超える資金が用意できるのかが大きな「壁」となる。
参考サイト:
セブン&アイHD、創業家から買収提案受ける 株式の非上場化も検討
セブンが総額9兆円でMBO、会社は創業家から買収提案と発表 ….
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