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【和歌山砒素カレー事件〈映画『マミー』二村監督が語る〉「冤罪の可能性があるなら、証拠を見直すべきだと考えた」】

2025年5月4日、横浜・Naked Loftで開催されたゴールデンウィーク中のトークショーに、林真須美死刑囚の長男・林コウジ氏(仮名)、その友人でロックバンド「the band apart」の原昌和氏(46)、そして林死刑囚とその家族を題材にしたドキュメンタリー映画『マミー』の監督・二村真弘氏(46)が登壇。司会は、『学校の怪談 めちゃ怖 「呪われた心霊フィルム」』などのホラー映画監督、住倉カオス氏(55)という異色の組み合わせとなった。

映画『マミー』は、2024年8月の公開以降、全国各地を巡回上映してきたが、その旅路も終盤に差し掛かっている。ぜひともネット配信が待たれる。

〈『マミー』、関東での上映は貴重〉

二村監督「この映画、関東で観る機会はなかなか無いんです」

『マミー』は、和歌山毒物カレー事件を再検証するドキュメンタリー映画であり、監督とコウジ氏が関東で並んで登壇するイベントは、今回が初めて。事件に関する対話の場が極めて限られているなか、貴重な機会となった。

住倉「なぜ、この題材を映画にしようと思ったんですか?」

二村「7年前に新宿のロフトプラスワンで、コウジ氏がトークイベントをやったんです。その頃、彼が本を出版し、Twitter(現X)を始めた時期でもあって。それを初めて知ったんですよ。当時、僕は日本映画学校(現・日本映画大学)で映画を学んでいて、事件が起きたときはまだ20歳でした。」

住倉「僕はドキュメンタリーゼミの5期生です。」

二村「僕は12期なので、たぶん先輩ですね。僕は映像ジャーナルというゼミでした。」

住倉「へえ、そうなんですね。」

二村「あのトークイベントを観に行ったのは、正直“林真須美の息子ってどんな人だろう?”という興味本位でした。ただ、その場にテレビ局のドキュメンタリー制作クルーもいて、“いずれ番組になるのかな”と思っていたら、後に『冤罪を追及するような内容は放送できない』として、お蔵入りになったと聞きました。」

住倉「なるほど…」

二村「僕もテレビ業界にいたので、そういう事情はわかります。死刑が確定した事件で冤罪を扱うには、非常に高いハードルがあります。もしそれが本当に冤罪だったとすれば、司法や政治の根幹が揺らぐ大問題になる。だから企画が通らないのも理解できるけれど、それでも冤罪の可能性があるなら、追及すべきだと思ったんです。その後、コロナ禍が来て、仕事がすべて無くなったとき、“じゃあ今、本当にやりたいことは何だろう”と考えて、和歌山に通い始めたんです。」

住倉「最初から“これは冤罪かもしれない”と感じていたんですか?」

二村「いえ、最初は全くわかりませんでした。まずは一から検証しようと思っただけです。」

住倉「冤罪の可能性がなければ、取材も始めなかったのでは?」

二村「YouTubeで配信を始めた当初は、どちらに転ぶか分からないという前提で、純粋に取材を進めていました。現地の人や関係者に話を聞いて、そのまま動画にしていく、というスタンスでした。」

〈現地取材から見えてきた“裁判の穴”〉

二村「両論があって、どちらの意見も納得できる部分がありました。だから判断は保留しながら、現地の住民や事件に関係した人の話を記録していきました。でも、映画を制作する段階には、“これは冤罪の可能性が高いのではないか”と感じるようになりました。コウジさんが先ほど話していたように、裁判で下された死刑判決の根拠は、“認定が不十分”で、“これは少なくとも再審して証拠を見直すべきではないか”と考えるようになりました。」

住倉「無罪かどうかは別として、有罪と判断するには不十分だったのでは、と?」

二村「そうです。無実かどうかは彼女しかわかりませんが、それを証拠に基づいて認定するのが裁判の役割。その役割が果たされていないように感じたんです。」

住倉「人間・林真須美よりも、“なぜこのような判決に至ったのか”というシステムを描こうと?」

二村「はい。コウジさんとの関係も、最初はお互いに警戒しあっていました。僕は“情”を見せないようにしていましたし、彼も心を開こうとはしませんでした。あくまで目撃者として彼が何を見たかに焦点を当てていました。彼の人生や受けた苦労には、あまり踏み込みませんでしたが、後に『この人、何考えてるんだろうと思っていた』と聞かされました。」

原「監督は“不透明な部分をクリアにしたい”という純粋で率直な探究心から始めたんですね。」

〈長女は4年前に子供を抱えて関空連絡橋から飛び降り自殺〉

住倉「ご姉弟は?」
林「4人です。長女、次女、僕、妹。僕だけ男です。」
住倉「お姉さんの話は、知っている方は知っているんだと思いますけど」
原「悲惨…だよね」
住倉「とは言え、言い方は悪いようですが、大いに影響があるというか、家族の歴史の中では重要な事実…」
林「そうですね。影響はかなり与えていると思います。」
住倉「端的にに言うと亡くなられたんですよね。」
林「4年前に子供を抱えて関西国際空港連絡橋から飛んでいるんです。とてつもない高さです。その前に前の旦那との娘も亡くなっています。で、(この時までは)カレー事件が風化しつつあったんですよね。この事件をきっかけにネット上では再炎するような…」
住倉「その時監督はもう取材を始めてたんですか?」
二村「始めてましたね」
住倉「じゃ、びっくりしたんじゃないですか?」
二村「そうですね」
林「マスコミが集中して集まったんですけど監督だけ、気を遣ってくれて、『マスコミが集中している時には行っちゃダメでしょう?』って感じで、一段落してからまた映画の撮影が再開しました。」
原「なるほどね…結構長い期間撮ってたんですか?」
二村「足掛け3、4年くらいですか?」
原「その間にこの事件が起こったんですね…」
住倉「原因は色々考えられるんでしょうけど。大分精神的にまいられてたんでしょうね。」
林「姉もほぼPTSDみたいな状況でした。僕も家に帰ったらマンションの下とかにマスコミがちらほら居たりとか…『どんな気持ちですか』って聞かれて、でもこんな非常識なことって無いじゃないですか?向こうからしたら仕事ですね?遺族取材も、亡くなった人の家族の家にインターホン押しに行くとか。一般的から見たら相当非常識なことやってる。これを30社くらいからやられたときに、ちょっともう、吹っ切れた。『このまま行ったら潰されるわ』だから、もうやりたいことやって行こう、って、今日も、その一環で。」と、トークショーで話すことにしたという。

林コウジ氏は辛い状況の下においても自身を客観的に捉えられている『技術』を身に着けている。

悲しい結果になった長女は、責任感ゆえ全部自分で受け止め、押しつぶされてしまったのだとしたら、どれほど苦しかっただろう。もしあのとき、もう少しだけ誰かに頼ることができていたとしたら。

もしもコウジ氏のように、苦しみの中でも一歩引いて自分を見つめる力があれば、違った未来があったのかもしれない。

〈ドキュメンタリーの演出とリアリティ〉

住倉「ドキュメンタリー映画って、撮る側にも負荷が大きいですよね」

原「例えばNHKの『クローズアップ現代』なんかでも『あちらから歩いてきてください』とか演出を求められることがありますよね」

住倉「そうそう。“考え事をしているポーズをしてください”とか、演出が入るケースも多いですよね」

林「人って、〇月〇日にカメラが来るってわかったら、格好つけたくなるものです。うちの父親なんか、角刈りにしてクロムハーツって書いたTシャツ着て待ってました(笑)。日常を撮りたいのに、そんなのいらないからって何度も言いました。」

住倉「どこまでが“本物”かという線引き、難しいですよね。監督の意図がある限り、登場人物もその方向に引っ張られてしまう可能性がありますよね」

二村「僕は“自然に”とは考えていませんでした。切り取った時点で、こちらの意図が100%反映されてしまうと思っているので」

住倉「それでも“訴えたいこと”があったわけですよね?」

二村「はい。ナレーションは使わず、登場人物の声だけで伝えることにこだわりました。“こちらの感情を押し付けない”ことを意識していました。」

〈冤罪の構造は繰り返されるのか 大川原化工機冤罪事件と和歌山毒物カレー事件―この二つの共通点〉

関東での上映は終了しつつあるが、最終日にはほぼ満席となり、他地域での上映やネット配信も強く待ち望まれている。

大川原化工機冤罪事件と和歌山毒物カレー事件――この二つの事件に共通して見られるのは、

状況証拠と不確かな鑑定に頼った立証

検察による強引な取り調べ

「有罪ありき」の捜査姿勢

大川原化工機事件では、検察官が「起訴に間違いはなかった」と謝罪を拒否しつつ、内部では「不安だった」と語り、ついには“でっち上げ”の事実も明るみに出た。

和歌山カレー事件もまた、動機の曖昧さや証拠の不確実性が、かねてから問題視されている。

これらは、「成果主義」や「人質司法(長期勾留による自白強要)」といった構造的な問題が冤罪を生む背景にあることを示している。

幾度となく繰り返される再審請求や賠償訴訟を通じて、司法の在り方が問われている。検察改革や取調べの透明性が進まなければ、冤罪のリスクは今後も無くならない。

和歌山カレー事件の再審の行方は、今後の日本の司法における信頼性の試金石となるはずだ。

〈3回目の再審請求を審理中〉

林死刑囚は現在、3回目となる再審請求を和歌山地裁に起こしている。


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映画『マミー』公式サイト
https://mommy-movie.jp/

映画『マミー』本編予告編
https://www.bing.com/videos/search?view=detail&q=%e6%98%a0%e7%94%bb+%e3%83%9e%e3%83%9f%e3%83%bc+%e6%9e%97%e7%9c%9f%e9%a0%88%e7%be%8e&&mid=4E7BD0AA5DFFB51758F94E7BD0AA5DFFB51758F9&FORM=VAMGZC&PC=U531

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