横浜市教育委員会は2024年5月21日、2019年度から今年4月にかけて横浜地裁で公判があった教員によるわいせつ事件で、多数の職員を動員して法廷の傍聴席に行かせ、一般の人が傍聴出来ないようにしていた行為があったことを発表しました。
きっかけは東京新聞の取材でした。
強制わいせつ罪に問われた神奈川県内公立小の元校長の裁判前の出来事です。4月下旬、午前11時開廷30分ほど前に法廷に向かうと、入り口にはスーツ姿の男女60人ほどの長い列が出来ていました。関係者によりますと、午前10時ごろには50人以上が並んでいたとのことでした。
しかし傍聴席は48席しかなく、この日の論告求刑の取材を断念せざるを得ませんでした。
振り返れば3月も、同じ裁判で傍聴席はスーツ姿の人で埋め尽くされていたそうです。被害者保護の観点から、裁判所内に掲示されている開廷表でも被告の名は伏せられているため、明らかに閉鎖された異様さを隠しきれませんでした。
公判後、裁判所の外でスーツ姿の女性に傍聴に来た理由を尋ねると「誘われたので」「興味があるので」。ぶっきらぼうな短い返事。しかしその強い口調から、取材を受けたくないんだなという空気を感じ取りました。
そこで東京新聞記者は4月の公判後、傍聴人の1人の後を追ってみることに。乗り込んだ地下鉄の同じ車両で様子をうかがっていると、10分ほどで下車。横浜市南部学校教育事務所(港南区)が入居するビルに入っていったというのです。
傍聴人は市教委職員で、被告も市に関係していると確信。ただちに市教委に、地裁への職員の出張記録、具体的な指示が分かる文書の開示を求めたところ、通常は2週間以内に開示するかの通知があるはずだが、今月15日に「期間内の開示決定が困難」と延長の連絡が来たといいます。
これまでにわかったところでは、
強制わいせつ罪に問われた小学校校長(実刑・失職)
他教員が4名被告となった各4件の公判(懲戒免職)
これにおいて、教員を動員し席を埋めていたということです。
さらに市教委によると教員の動員は2019年度に3回、2023年12月から2024年4月までの8回、
計11回、傍聴席を埋めさせるよう平均最大50人を業務として出張させていた事が明らかになりました。
2019年度の動員は延べ125人に命じ、
2023年度12月以降は延べ371人が地裁に赴きました。
旅費を支給していたケースもあったとの事です。
この、動員が始まったきっかけは被害者の保護者が2019年度の公判で一般傍聴者に事件の内容を知られる事を望まなかったからと説明しました。それ以降、当時の鯉渕信也教育長とも話し合って、職員が傍聴席を埋める方針を決めたそうです。
市教委は他の3件も保護者の要望に基づく対応と主張しています。
職員に出張を命じる文書によると、注意事項として「関係者が集団で来たということが分からないよう裁判所前での待ち合わせは避けて」等が記載されており、市教委は「市の事案だと悟られないようにしろというのはあった」と事実を認めました。
5月7日に外部からの問い合わせにより、市教委は20日、関係部署に今後は実施しない旨を通知しました。
村上謙介教職員人事部長は記者会見し、プライバシー保護を求める被害児童・生徒側の要請を受けた対応で
「教員を保護しようという意図はない」と釈明し、「行き過ぎだった。一般の方の傍聴の機会が損なわれたことについて、大変申し訳なく思う」
と謝罪しました。
参考サイト:
なぜか満席の横浜地裁…記者は1人の傍聴者の後を追い、確信した 横浜市教委の「傍聴ブロック」発覚の経緯 、東京新聞5月22日朝刊より
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