首班指名を行う第215回特別国会が11月11日に召集されることが正式に決まりました。
当面の政治、経済、国際、社会の動きをまとめます。
【別紙:参考資料1「永田町カレンダー」】
特別国会・首班指名に向けた動き
先の衆議院選挙を受けた特別国会は、11日召集されることが正式に決定しました。
これに先立ち、11月8日、衆議院の各会派の代表者による協議会が開かれ、特別国会が召集される11日に総理大臣指名選挙を行うとともに、衆議院選挙の結果を踏まえ、17ある常任委員長のうち予算委員長を含む7つを野党側に配分することなどを確認しました。
11日に召集される特別国会をめぐり、衆議院の各会派の代表者による協議会が開かれ、会期を4日間とし、召集11日に正副議長の選出に続いて、総理大臣指名選挙を行うことで与野党が合意しました。
正副議長については、自民党が議長に額賀福志郎・前議長を、立憲民主党が副議長に玄葉光一郎・元外務大臣を推すことを報告し、それぞれ選出される見通しとなりました。
一方、衆議院選挙の結果を踏まえ、17ある常任委員長のうち7つを野党側に配分することを確認しました。
17の常任委員長は、先の衆議院選挙の前の国会までは、立憲民主党が決算行政監視と懲罰の2つ、公明党が総務と経済産業の2つで、残りの13の委員長はすべて自民党が占めていました。
次の国会では、自民党が9、立憲民主党が5、日本維新の会、国民民主党、公明党がそれぞれ1ずつ配分されます。
具体的には、▽自民党は内閣、外務、財務金融、文部科学、厚生労働、農林水産、経済産業、国土交通、それに議院運営の各委員長、▽公明党は総務委員長、▽野党側は立憲民主党が法務、環境、国家基本政策、懲罰の各委員長、日本維新の会が、安全保障委員長、国民民主党が決算行政監視委員長です。
重要ポストである予算委員長はすでに立憲民主党に割りふられることになっています。
さらに、衆議院に3つある審査会長については、選挙の前の国会まではすべて自民党が占めていました。次の国会では、自民党に情報審査と政治倫理の各審査会長が、立憲民主党に憲法審査会長がそれぞれ割りふられる見通しです。
国会ごとに設置される、特別委員会の委員長をめぐっては与野党で調整が続いています。与党側は、これまで8つあった特別委員会について、災害対策と東日本大震災の復興を統合し7つにすることを提案しています。
特別委員会の数が決まってから、委員長の割りふりが固まるものとみられます。
こうした合意を受け、立憲民主党は、憲法審査会長に枝野幸男・元代表を、また、予算委員長に安住淳・前国会対策委員長を推すことを決めました。
立憲民主党は、党に割りふられた衆議院の委員長や審査会長などのポストについて人選を進め、常任委員会では法務委員長に西村智奈美氏、環境委員長に近藤昭一氏、国家基本政策委員長に泉健太氏、予算委員長に安住淳氏、懲罰委員長に菊田真紀子氏を推すことを決めました。
当初、立憲民主党への常任委員長の配分は6つでしたが、選択的夫婦別姓制度の議論を進めたいとして、法務委員長のポストを得た代わりに、与党側に2つのポストを譲ったため、配分が5つになりました。
また、特別委員会では政治改革特別委員長に渡辺周氏、、沖縄及び北方問題に関する特別委員長に逢坂誠二氏、北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員長に牧義夫氏を推すことにしています。
これらの人事は、11日に召集される特別国会で正式に決まる見通しです。
【参考資料2と3 立憲民主党委員会配置表】
11日は、衆参両院の本会議で総理大臣指名選挙が行われ、衆議院では、与党が過半数を割り込む中、30年ぶりの決選投票となる見通しですが、野党側による一本化は困難な情勢で、石破茂首相が再び選出される公算が大きくなっています。
石破首相は、再び首相に選出されれば、11日中に組閣し、第2次石破内閣を発足させる方針です。
【参考資料4 特別国会の日程案】
政治の動き
特別国会に先立ち、公明党は11月9日、臨時党大会を開催し、衆議院選挙で議席を減らした責任などをとって辞任した石井啓一代表の後任に、国土交通大臣の斉藤鉄夫氏が正式に就任しました。
斉藤氏は「衆議院選挙は、政治とカネの問題での逆風を押し返すだけの独自性を十分に発揮できなかった。党の持ち味である国と地方のネットワークによる政策実現力を発揮し、一丸となって立ち上がれば反転攻勢につながる。私が先頭に立ち戦っていく」と述べました。
また執行部人事では、浜四津敏子氏が務めて以来、14年ぶりに代表代行が置かれ、竹谷とし子・参議院議員が就任しました。
西田実仁・幹事長と岡本三成・政務調査会長はそれぞれ留任となりました。
【参考資料5 公明党新役員表】
この後、斎藤代表は、石破首相と会談し、自民・公明両党で連携して政権運営にあたることを改めて確認しました。
衆議院で与党が過半数を割り込む中、自民・公明両党が連携して政権運営にあたることなどを盛り込んだ政策合意を交わしました。
【参考資料6 自民・公明政策合意】
そして、新たな経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案の着実な成立を図る方針を確認しました。
自民・公明両党と国民民主党との政策協議が始まりました。
3党は電気代やガス代の引き下げなど当面、必要な対策について今週から合同で検討を進めることにしています。
自民・公明両党と国民民主党の政務調査会長は、11月8日、それぞれ個別に会談し、政府が今月中にも決定する新たな経済対策に向け政策協議をスタートさせました。
3党は、国民民主党が求める電気代やガス代などの引き下げや能登半島の復旧・復興に向けた支援策といった当面、必要な対策について今週から合同で協議することにしています。
自民・公明両党としては、国民民主党の要望を政府の経済対策に盛り込むことで、その裏付けとなる今年度の補正予算案の成立につなげるなど、政策を着実に進めたい考えです。
また、いわゆる「年収103万円の壁」を見直し所得税の基礎控除などを178万円に引き上げることなど税制改正が必要な項目については、税制調査会の幹部も加わって協議することにしています。
【参考資料7 国民民主党 令和6年度経済対策および補正予算に関する要望】
立憲民主党は、総額7兆4000億円規模の経済対策の対案をまとめました。
対案には、社会保険料負担に関わる「年収130万円の壁」の見直しや公立小中学校の給食費の無償化などが盛り込まれています。
立憲民主党としては、衆議院で補正予算案を審議する予算委員会の委員長ポストを獲得することも踏まえ、政府案とあわせて対案についても予算委員会で審議した上で、政府案の修正につなげたい考えです。
【参考資料8 立憲民主党 経済対策案】
経済の動き
11日、財務省から国際収支統計が、内閣府から景気ウォッチャー調査がそれぞれ公表されます。
また、民間信用調査期間から10月の企業倒産が発表されます。
国際収支は、一定期間における国やそれに準ずる地域の対外経済取引、例えば、財とサー
ビスおよび所得の取引・対外資産負債残高の増減に関する取引・移転取引の統計で、国際
通貨基金の基準によって作成されるもので、各国比較ができます。
景気ウォッチャー調査は、北海道、東北、北関東、南関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄の11地域を対象に、百貨店・スーパーマーケット・コンビニエンスストアなどの小売店や、タクシー運転手、レジャー業界など景気に敏感な職種で働く人たちにインタビューをし、調査結果を集計・分析したもので「街角景気」とも呼ばれています。
13日、日銀から企業物価指数、15日、内閣府からGDP速報値が発表されます。
企業物価指数は、企業間で取引される財(商品)の価格を結合して一つの指数に表し、その時系列的な変動を測定するもので、日本銀行が算出し、毎月公表しています。消費者物価指数(CPI)とともに、代表的な物価指数で、景気動向や金融政策を判断するうえでの経済指標の一つとして重視されています。
GDPとは、「Gross Domestic Product」の略で「国内総生産」です。1年間など一定期間内に国内で産出された付加価値の総額で、国の経済活動状況を示します。付加価値とは、サービスや商品などを販売したときの価値から、原材料や流通費用などを差し引いた価値のことです。付加価値とは儲けのことですので、GDPによって国内でどれだけの儲けが産み出されたか、国の経済状況の良し悪しを知ることができます。
一方、14日、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの決算が公表されます。
国際・社会の動き
11月7日、石破首相は、米国大統領選挙に勝利し再び就任することになったトランプ氏と電話で会談し、祝意を伝えた上で、できるだけ早期に対面での会談を行うことを確認しました。
この中で、石破首相は「今回の勝利に心からお祝いを申し上げる。『アメリカを再び偉大に』という訴えが、多くのアメリカ国民の賛同を得たことに敬意を表する」と述べ、祝意を伝えました。
これに対し、トランプ氏は「会って話をすることを楽しみにしている」と応じ、両氏はできるだけ早期に対面での会談を行うことを確認しました。
さらに、石破首相は、 11月中旬にペルーで開かれるAPEC=アジア太平洋経済協力会議
の首脳会議などに出席したいという意向を示したうえで、現地で中国の習近平国家主席やアメリカのバイデン大統領との首脳会談を調整していることを明らかにしました。
石破首相は、11日に召集される見通しの特別国会で行われる総理大臣指名選挙で再び総理大臣に選出されれば、11月中旬に相次いで開かれる、ペルーでのAPEC首脳会議(日本時間15~16日)やブラジルでのG20サミット=主要20か国首脳会議(同18~19日)に出席したいという意向を示しました。
そのうえで、現地で就任後初めてとなる中国の習近平国家主席との日中首脳会談や、日米首脳会談を調整していることを明らかにしました。以 上
筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト
元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職事件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。
その後、連合(日本労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。
政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。
☆出稿資料☆
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