今月12日告示、27日に投開票が行われる自民党総裁選挙に、きょう小泉進次郎・元環境相が正式に立候補を表明し、正式の立候補表明はこれで6人目となります。
また、高市早苗・経済安保相、加藤勝信・元内閣官房長官、上川陽子・外相、斎藤健・経済産業相、野田聖子・元総務会長も立候補に向け推薦人への依頼を続けています。
自民党総裁選挙は、現行制度が実施されてから最も多い候補者によって争われることになりそうです。
これまでに正式に立候補した皆さんの政見などをまとめました。
8月19日 小林鷹之・前経済安保相
【参考資料1 小林鷹之氏 政策】
小林氏は、8月19日、記者会見を行い、「自民党総裁選挙に覚悟を持って出馬することをここに表明する。当選4回、40代、普通のサラリーマン家庭で育った私が派閥に関係なく今、この場にこうして立っている事実こそが自民党が本気で変わろうとする象徴になる」と述べました。
そのうえで、政治とカネの問題で失った国民の信頼を取り戻すため政治改革と党改革に取り組む考えを示し「自民党は生まれ変われることを証明したい」と強調しました。
そして、総裁選挙の戦い方をめぐり「脱派閥選挙を徹底する。旧派閥に対する支援は一切求めない」と述べました。
一方、政策面では経済政策を最初に挙げ「『経済は財政に優先する』というのが基本的な考え方で、世界をリードする戦略産業を育成する。あわせて物価高への対策パッケージをことし中に打ち出す」と説明しました。
また、外交・安全保障政策をめぐってはグローバル・サウスの国々と欧米の先進国の懸け
橋となって国際秩序を強化し日本にしかできない方法で世界をリードすると訴えました。
社会保障政策では若者に過度な負担がかかっている今の仕組みを見直し、若者対策としてあらゆる政策を総動員し若者の手取りを大幅に増やす考えを示しました。
憲法改正については「政治の要諦は危機管理であり緊急事態条項の新設と自衛隊明記は喫緊の課題だ。早期の発議に向けて最大限の熱量をもって取り組む」と述べました。
最後にみずからの名前の「鷹」という文字に触れ「鷹は時折古い羽を新しい羽にかえる習性を持っている。自民党も時代に合わなくなった慣例という古い羽を勇気を持って脱ぎ捨てて新しい羽を生やす必要がある。大先輩から後輩まで協力を仰ぎ守るべきものを守るため新しい自民党をつくっていく」と意欲を示しました。
8月24日 石破茂・元幹事長
【参考資料2 石破茂氏 政策】
石破氏は、8月24日、地元の鳥取県八頭町の神社で支援者を前に演説しました。
石破氏は「自民党総裁選挙に立候補する。38年間の政治生活の集大成として、これを最後の戦いとして原点に戻り、全身全霊で支持を求めていく」と述べ、総裁選挙に立候補することを表明しました。
その上で「党よりも国民一人一人を見るのが私の政治生活の原点だ。子どものころ、ここで夏祭りがあり本当ににぎやかだった。日本は今ほど豊かではなかったが、若い人も、子どもたちも、高齢者も皆、笑顔だった。もう一度にぎやかで皆が笑顔で暮らせる日本を取り戻していく」と述べ、地方の再生に全力を挙げる考えを強調しました。
また、党の政治とカネの問題をめぐり「ルールを守り、政治のためのカネが必要なら、集め方は節度を持たなければならない。改正された政治資金規正法を守るのは当然で、さらに透明性を深めるための努力を最大限に行う」と述べ、政治改革に取り組む考えを示しました。
さらに、みずからが長く安全保障政策に携わってきたことに触れ、「抑止力の強化や防衛力の強化は平和のためのものであり、戦争をするためのものではない。どうすれば抑止力が確保でき、どうすれば多くの国と信頼関係を築くことができるか。安全保障を確立し日本を守る」と述べました。
そして、「ルールを守り国民に信頼される政治。日本を守り、国民を守り、地方を守り、そして未来を守る。そのために全身全霊で臨んでいく」と決意を示しました。
このあと石破氏は記者団の質問に応じ、政治とカネの問題への対応を問われたのに対し「いわゆる裏金事件の審判は、国民からいただかなければならない。自民党として国民に対して責任を持たなければならない。誰が総理・総裁になるにせよ審判を仰ぐのは、なるべく早い時期に行われるべきだ」と述べました。
一方、「選択的夫婦別姓」の考え方を質問されたのに対し「選択的に姓を選べることはあるべきだ。男性であれ女性であれ姓が選べないことでつらい思いをし、不利益を受けてい
ることは解消されなければならない」と述べました。
8月26日 河野太郎・デジタル相
【参考資料3 河野太郎氏 政策】
河野氏は、8月26日、記者会見を行い、「自民党の総裁選挙に出馬する。さまざまなところで直面している有事を乗り越えるため、これまでの経験を生かして、日本のリーダーとしてこの国をさらに前に進めたい」と述べました。
その上で「日本の果たすべき責任や役割は何なのか、明確に主張すると同時に行動に移さなければならない。次の総理大臣たる自民党の総裁を選ぶ選挙で、世界の形をしっかりと議論しなければならない」と述べました。
また、政治とカネの問題をめぐっては「捜査当局的には終わったのかもしれないが、国民から見てけじめがついたと言えるのか」と指摘し、さらに政治改革を進めていく考えを示しました。その上で、収支報告書に不記載があった議員には、不記載額と同額を返還するよう求め、返還に応じた議員は、次の選挙で党の公認候補にすると説明しました。
経済政策については「民間主導で経済を発展させるための妨げになっているような規制は、大胆に改革をしていかなければならない」と述べ、デジタルの活用や規制改革を推進して経済発展につなげていく考えを強調しました。
エネルギー政策については「当初の予想では人口減少と省エネの進展で電力需要は縮んでいき、再生可能エネルギーを今の2倍のペースで導入できれば需要と供給が合うと思っていた。しかし、最近の電力需要の急速な伸びで原発を再稼働しても足りなくなる。日本としてできることは、何でもやっていく必要が当面はある」と指摘しました。
「選択的夫婦別姓」の考え方を質問されたのに対しては、「認めた方がいいと思う」と述べました。
一方、衆議院の解散については「総理大臣の専権事項であり、解散する場合に申し上げたい。今の時点で将来の自分の手を縛ることは避けたい」と述べました。
9月3日 林芳正・内閣官房長官
【参考資料4 林芳正氏 政策】
林氏は、9月3日、記者会見を行い、「大変難しい状況の中だが、自民党総裁選挙への出馬を決意した」と述べました。
その上で政治とカネの問題について「大変信頼を損ねる事態となり深くおわびする。組織の長として責任を取るという岸田総理大臣の姿を目に焼き付け、その覚悟と心を深く刻み、全力で党の信頼回復に努めるとともに国民の共感を得られる政治を取り戻したい」と述べました。
そして「防衛大臣や農林水産大臣、外務大臣など閣僚を経験し、党では税制調査会や行政改革などの政策に取り組んだ。来年、議員生活が30年になるが持てる経験と実績をすべて生かしてこの国のために使わせてもらいたい」と訴えました。
さらに「仁」という字を記した色紙を掲げ「国民が安心できる人にやさしい『仁』の政治を行いたい。『仁』とは国民に対する慈しみや思いやりという意味だ」と述べました。
一方、政策については「3つの安心」をキーワードに格差の是正や地域活性化による人口減少対策や、地震や豪雨への備え、地政学的なリスクを踏まえた上での外交・安全保障政策に取り組むと説明しました。
エネルギー政策については「電力需要がこの先、想定よりも伸びていくことが予想され、しっかり対応していくため原子力は大変大事なベースロード電源だ」と指摘しました。
中国との向き合い方については「私に対して『媚中派』だという批判を時々耳にするが私は中国を知っている『知中派』だと思っている。中国と向き合うには相手を知って交渉しなければ結論を得ることは難しい」と述べました。
「選択的夫婦別姓」の考え方を質問されたのに対しては「個人的にはあってもいいのかなと思う」とした上で国民の中にはさまざまな意見があり合意形成が必要だという認識を示しました。
憲法改正については3年間の総裁任期中に発議したいという考えを示しました。
また、派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で処分を受けた議員への対応を問われ「党が手続きをとって決めたことを、総裁が変わったからと何も手続きをとらずに変えることはあってはならない。党の党紀委員会では選挙での非公認という処分もメニューにあるが、なされていない」と述べました。
そして、旧岸田派出身の議員から支援を受けていることについては「政策集団をカネや人事から完全に決別することが必要だ。岸田派=宏池会は正式に解散したが、これまで切磋琢磨した関係は派閥がなくなっても続くものだ」と述べました。
9月4日 茂木敏充・幹事長
【参考資料5 茂木敏充氏 政策】
茂木氏は、9月4日、都内で記者会見しました。
茂木氏は、「総裁選挙に立候補することを決意した。目標を掲げ、チームを束ね、結果を出す。これが目指す新政権の姿だ。実行力のある安定した政権で内外のさまざまな事態にしっかり対応する」と述べました。
重点政策の1つに経済政策を掲げ「成長力と生産性を向上し、一人一人の所得、年収をアップさせることを政権の最優先の目標に掲げる」と述べました。
その上で「増税ゼロの政策推進を実行する」と述べ、岸田政権のもとで決まった防衛力の抜本的強化のための増税と、少子化対策の強化のための支援金の保険料の追加負担、それぞれ1兆円を停止する考えを示しました。
代わりとなる財源として、経済成長により見込まれる税収増やいわゆる外為特会など税外収入の増加などを挙げ「必ず結果を出し、3年以内に結果が出なければトップが、総理大臣が責任を取る」と強調しました。
そして「『増税ゼロ』の政策推進は、これまでの政策を否定するものではなく、国民の負担増への不安を解消しながら政策をさらに前に進めるものだ」と説明しました。
さらに「半年以内に30年にわたるデフレからの脱却宣言をできる状況にする」と述べました。
また、地方活性化をめぐり「活力ある地方をつくり、地域の雇用を創出する。『日本列島の再改造』『東京一極集中の是正』を進める」と強調しました。
「選択的夫婦別姓」については「国民の間にもさまざまな意見がある。『こうだ』と決める前にもう少し世論が醸成されることが大切ではないか」と述べました。
一方、政治とカネの問題をめぐっては「まったく新しい自民党をつくっていく覚悟を示し政治改革と党改革を断行する」と述べ、党から議員に支給される「政策活動費」を廃止するとともに、政治資金パーティーの収益を課税対象とするための法改正に取り組む考えを
示しました。
その上で、今回の問題について幹事長としての責任をどう考えるか問われたのに対し「反省の思いも強く持っており幹事長として政権を支えきれなかったという指摘があるなら謙虚に受け止めたい」と述べました。
9月6日 小泉進次郎・元環境相
【参考資料6 小泉進次郎氏 政策】
小泉氏は、9月6日、都内で記者会見しました。
冒頭、小泉氏は「自民党総裁選挙に立候補する。自民党が真に変わるには改革を唱えるリーダーではなく改革を圧倒的に加速できるリーダーを選ぶことが必要だ」と述べました。
その上で「長年、議論ばかりを続け、答えを出していない課題に決着をつけたい。総理・総裁になったら1年以内に実現する改革と中長期を見据えた改革の方向性を説明する。そしてできるだけ早期に衆議院を解散し、中長期の改革プランについて国民の信を問う」と述べました。
また、改革の前提になるのは政治の信頼回復だとして、政治とカネの問題を受けて党から議員に支給される「政策活動費」を廃止するとともに、国会議員に支給される旧「文書通信交通滞在費」、現在の「調査研究広報滞在費」の使い道を公開し、残った金額の国庫への返納を義務付ける考えを示しました。
さらに政治資金収支報告書に不記載があった議員を次の選挙で公認するかどうかは説明責任を果たしてきたかや地方組織の意見などを踏まえ、新たな執行部で厳正に判断する方針を示しました。
そして「政治資金問題の当事者となった議員は、国民への説明責任を果たし選挙で信認を受けるまで要職に起用しない」と述べました。
一方、経済政策をめぐっては、聖域なき規制改革を進めるとして成長分野のスタートアップや中小企業に人材が流れる仕組みをつくるために解雇規制を見直し、リスキリングや学び直しの環境整備を進めると説明しました。
また、一般のドライバーが有料で人を運ぶ「ライドシェア」を、全面的に解禁する考えを示しました。
憲法改正をめぐっては「自衛隊を明記することがダメなのかどうか、国民に聞きたい」と
述べ、国民投票を実施したいという意向を示しました。
「選択的夫婦別姓」については、認める法案を国会に提出する方針を示し、「30年以上議論を続けてきたこの問題に決着をつけ、一人一人の人生の選択肢を拡大する」と強調しました。
この他、9月7日、野田聖子・元総務会長は、地元・岐阜市内で総裁選に関する記者会見を行うのをはじめ、高市早苗・経済安保相は9日、加藤勝信・元内閣官房長官は10日が正式に立候補を表明する見通しです。
また、斎藤健・経済産業相も立候補に向けた推薦人への依頼を求める取り組みを進めています。以 上
筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト
元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職事件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。
その後、連合(日本労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。
政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。
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