泉健太代表の任期満了に伴う立憲民主党の代表選挙が9月7日告示されました。
立候補したのは、届出順に、野田佳彦・元首相、枝野幸男・前代表、泉健太・代表、吉田晴美・衆議院議員の4人です。
4氏は、届出を行った後、共同で記者会見に臨むなどして政見や党運営などについて、意見を交わしました。
投開票は、臨時党大会となる9月23日に行われます。
4氏の政見などについてまとめました。【届出順】
野田佳彦・元首相「ほかの野党と連携しうみを出し切る」
【参考資料1 野田氏の推薦人や政見など選管提出資料】
野田・元首相は「信なくば立たずという政治状況に強い危機感を抱いている。『裏金』のような問題がまかり通っている政治に決別するため、政治改革を進めなければならない。ほかの野党と連携しうみを出し切る先頭に立つ」と述べました。
『政権交代前夜』という位置づけの代表選挙で、衆議院の解散・総選挙を意識した、政権をとりにいくための、心合わせ、力あわせの場だと思う」と述べました。
その上で「政治をただすことは自民党ではできず『うみ』を出すのはわれわれの役割だということを強調していきたい。代表選挙で議論されたことが、自民党の総裁選挙ではどうなるのかというふうにアジェンダを逆に作り、主導していくような展開をぜひ作っていきたい」と述べました。
野田・元首相は、衆議院千葉4区選出の当選9回で、67歳。
松下政経塾出身で、千葉県議会議員を経て1993年の衆議院選挙に当時の日本新党から立
候補して初当選しました。
2011年に民主党政権として3人目となる総理大臣に就任し、よくとしには、消費税率の引き上げを含む社会保障と税の一体改革の関連法を成立させましたが、直後の衆議院選挙で敗北し、政権を失いました。
その後、無所属などを経て、4年前の2020年に立憲民主党に参加しました。
枝野幸男・前代表「政治改革の道筋 日本経済のビジョン示す」
【参考資料2 枝野氏の推薦人や政見など選管提出資料】
枝野・前代表は「日本は今、大きな分岐点に立っている。アベノミクスが限界を迎え、経済の危機に直面している。自民党の『裏金事件』でかつてないほど高まった政治不信による政治の危機もある。政治改革の道筋と日本経済や社会のビジョンを示し、国民の期待に応えていく」と述べました。
枝野・前代表は「自民党は『刷新感』という言葉に象徴されるように、イメージだけ変えて旧統一教会問題や『裏金問題』などの腐敗政治をごまかそうとしているだけでなく、人を使い捨てにする、地方を使い捨てにする政策へさらに進もうとしている。いまの政権に対して私たちがきぜんと明確に、対抗軸をいかに高らかに掲げるかが問われている」と述べました。
その上で「この代表選挙に勝つことが目的ではない。代表選挙に勝ち、衆議院選挙に勝ち、来年の参議院選挙に勝って『人間中心の経済』で一人ひとりが支え合って、安心して暮らせる未来を皆さんと一緒につくっていく」と述べました。
枝野氏は衆議院埼玉5区選出の当選10回で、60歳。
弁護士で、1993年の衆議院選挙に、当時の日本新党から立候補して初当選しました。
かつての民主党政権では、官房長官や経済産業大臣、それに党の幹事長などを歴任しました。
2017年に、所属していた民進党が東京都の小池知事が立ち上げた希望の党への合流をめぐって分裂すると、立憲民主党を結党して代表に就任し、直後の衆議院選挙で野党第1党の議席を獲得しました。
立憲民主党はその後、当時の国民民主党と合流し、社民党の一部の議員も入党するなど、勢力を拡大しましたが、前回・3年前の衆議院選挙で議席を減らした責任をとって代表を辞任しました。
泉健太・代表「自民は政権から退場を 新しい政権つくろう」
【参考資料3 泉氏の推薦人や政見など選管提出資料】
泉・代表は「私たちは批判ばかりでも反対ばかりでもなく建設的に政策をつくってきた。私が代表の3年間は、政権を担える立憲民主党にしたいという一心で歩んできた。自民党はやはり政権から退場してもらわなければならず一緒に新しい政権をつくろう」と述べました。
泉・代表は、推薦人の国会議員とみずからを支援する地方議員らおよそ30人を前にオンラインで出陣式を開き「立憲民主党を政権政党にする。自民党の政治は劣化しており、政治は、自分のカネ集めではなく、真剣に国民の側を向いて生活を豊かにするものに変わらねばならない。古い政治から新しい政治へ、それがまさに訴えていきたいことだ」と決意を表明しました。
泉健太氏は衆議院京都3区選出の当選8回で、50歳。
参議院議員の秘書などを経て、2003年の衆議院選挙に当時の民主党から29歳で立候補して初当選し、民主党政権では内閣府政務官などを務めました。
4年前に行われた党の代表選挙では、現職の枝野代表に敗れたものの、その後、政務調査会長を務めました。
衆議院選挙で党が敗北したことを受けて行われた3年前の代表選挙では、4人による争いを制し、代表に就任しました。
泉氏は、当初、国政選挙で苦戦していましたが、自民党の政治とカネの問題で追及を強め、今年4月の衆議院の3つの補欠選挙で全勝するなど、党勢の回復に取り組みました。
党の方針として中道路線を掲げ、政権交代に向けて教育無償化など特定の政策課題の実現を目指す「ミッション型内閣」を打ち出しほかの野党との連携を図っています。
吉田晴美・衆議院議員「慣習にとらわれない等身大の政治を」
【参考資料4 吉田氏の推薦人や政見など選管提出資料】
吉田議員は「私がつくりたい政治の形は、これまでの政治の慣習にとらわれない、等身大の政治だ。これまでの代表選挙の常識も変えていきたい。教育と経済を掛け合わせることこそが国民生活の底上げになるという好循環を訴えていく」と述べました。
吉田議員は、江田・元代表代行とともに立候補に意欲を示し、両陣営は6日夜から一本化を含めた協議を続けてきました。
そして、7日午前に江田氏と吉田議員が再び会談した結果、消費税の食料品への非課税などで一致したとして、候補者を一本化することで合意し、吉田議員が立候補することになりました。
吉田議員は、記者団に対し「告示ギリギリのタイミングになったがこの一本化で、立憲民主党が自由かったつで、多様性に満ちた意見を尊重していることを明らかにできた。自民党では、あり得ないと思うが、1期生が代表選挙のステージに立たせてもらう」と述べました。
吉田晴美議員は衆議院東京8区選出の当選1回で、52歳。
旧民主党の流れをくむ政党の代表選挙に当選1回の議員が立候補するのは初めてです。
海外の航空会社の客室乗務員や経営コンサルタントを経て、民主党政権では、小川敏夫・元法相秘書官を務めました。
その後、旧民主党の候補者の公募に応じ、2013年の参議院選挙と2017年の衆議院選挙の2回、国政選挙に立候補しましたが議席を得られませんでした。
前回・2021年の衆議院選挙に東京8区から立候補して、自民党の石原伸晃・元幹事長らを破り初当選を果たしました。
代表選挙の仕組み
党所属の国会議員のほか、国政選挙の公認候補予定者、地方議員、党員・サポーターに割り当てられるあわせて740ポイントで争われ、過半数を獲得した候補者が代表に選出され
ます。
内訳は、◇衆参両院の副議長を含む136人の国会議員に1人2ポイントで272ポイント、◇98人いる国政選挙の公認候補予定者に1人1ポイントで98ポイントが割り当てられ、あわせて370ポイントとなります。
衆参両院の国会議員と公認候補予定者は、今月23日の臨時党大会で直接、投票します。
また、◇全国1236人の地方議員と、◇11万4792人の党員・サポーターには、それぞれ185ポイントが割り当てられます。
地方議員と党員・サポーターは、郵便かインターネットで投票し、得票数に応じていわゆる「ドント方式」でポイントが配分されます。
締め切りは、郵便が20日到着分まで、インターネットが22日の午後5時までとなります。
過半数のポイントを獲得した候補者が代表に選出されますが、過半数を獲得する候補者がいなかった場合は、上位2人による決選投票が行われます。
決選投票は、◇国会議員に1人2ポイント、◇国政選挙の公認候補予定者に1人1ポイント、◇各都道府県連の代表者に1人1ポイントを割り当て、合計417ポイントで争われます。
今後の日程
9月23日の臨時党大会・投開票までの間、候補者は全国を回り、討論会や立会演説会などを行います。以下のテーマが議論される予定です。
9月7日(土)19時~東海ブロック「政治行政改革・党改革」
9月8日(日)16時~九州ブロック「20年後を見据えた国家ビジョン」
9月11日(水)18時~北信越ブロック「防災・復興支援」
9月13日(金)17時~四国ブロック「地域活性化・農林水産業」
9月14日(土)16時半~近畿ブロック「経済政策」
9月15日(日)15時~東北ブロック「子育てを含む社会保障政策」
9月16日(月・祝)15時半~北海道ブロック「エネルギー・農政」
9月18日(水)19時~東京・南関東ブロック「世界の中の日本の安全保障戦略」
以 上
筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト
元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区
制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職事
件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。
その後、連合(日本労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。
政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。
☆出稿資料☆
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