今週は月末のため、私たちの暮らしに関わる様々な経済指標が公表されました。
今年10月以降に適用される全国の平均の最低賃金は1055円と過去最大の引き上げ幅になりました。有効求人倍率も1.24倍と4か月ぶりに前の月を上回り、月例経済報告では「景気の一部に足踏みが残るものの緩やかに回復している」と判断が引き上げられました。
一方、完全失業率は2.7%と前月よりも0.2ポイント悪化し、東京23区の消費者物価指数は政府が続けてきた電気・ガス料金への補助金がいったん終了したことが主な要因となり、2.4%上昇しました。
公表された「指標」と日々の「暮らしの実感」についてまとめます。
月例経済報告:「景気の一部に足踏みが残るものの緩やかに回復している」
【参考資料1 月例経済報告@内閣府】
29日、政府は関係閣僚会議を開き、8月の月例経済報告をまとめました。
それによりますと景気の現状について、「一部に足踏みが残るものの緩やかに回復している」と判断を引き上げました。
これまでは、「このところ足踏みもみられるが緩やかに回復している」としていました。
基調判断を引き上げるのは去年23年5月以来1年3か月ぶりです。
個別の項目では「個人消費」について、「一部に足踏みが残るもののこのところ持ち直しの動きがみられる」と判断を上方修正しました。
消費マインドの改善の動きが停滞している一方、国の認証取得をめぐる不正で一時、落ち込んだ新車の販売台数が持ち直しているほか、外食の消費も緩やかに増えているとしています。
また、「住宅建設」についても、建築費が高止まりする中で大手住宅メーカーの受注は底堅いとして、これまでの弱含んでいるという見方から「おおむね横ばいとなっている」と判断を引き上げました。
このほか、企業の「業況判断」については、好調な業績を背景に「改善している」としました。
一方、先行きについては、物価上昇や金融資本市場の変動などの影響に十分、注意する必要があるとしています。
鉱工業生産指数:上方修正
【参考資料2 鉱工業生産指数@経済産業省】
30日、経済産業省が公表した7月の鉱工業生産指数は2か月ぶりに上昇し、経済産業省は基調判断を「一進一退」に上方修正しました。
鉱工業生産指数は、企業の生産活動を示す指標のひとつで、30日に経済産業省が公表した7月の鉱工業生産指数によりますと、2020年を100とした指数で102.8となり、前の月を2.8%上回りました。
全体の15業種のうち14業種で上昇し、特にレーダー装置で大規模な受注があった「電気・情報通信機械工業」で7.5%、中国や台湾向けの半導体製造装置の受注が増えた「生産用機械工業」で7.0%、それぞれ上昇しました。
幅広い業種で在庫調整が進み、今後は生産に転じると見込まれることから、経済産業省は企業の生産活動の基調判断を「一進一退」に上方修正しました。上方修正は去年23年3月以来、1年4か月ぶりです。
今後の見通しについて、経済産業省は「台風10号で自動車メーカー各社が工場の稼働を停止していることが生産活動全体に与える影響などを注視したい」と話しています。
有効求人倍率:1.24倍 前月0.01ポイント上回る
【参考資料3 有効求人倍率@厚生労働省】
30日、厚生労働省から7月の有効求人倍率が公表されました。
仕事を求めている人1人に対して何人の求人があるかを示す有効求人倍率は、先月、全国平均で1.24倍となり、前の月を0.01ポイント上回りました。有効求人倍率が前の月を上回るのは4か月ぶりです。
都道府県別の有効求人倍率を就業地別でみると最も高いのは、◇福井県で1.83倍、◇山口県で1.72倍となりました。
また、最も低かったのは、◆大阪府で1.03倍、◆北海道で1.05倍となりました。
新規求人を産業別にみると、去年の同じ月に比べて◇「学術研究、専門・技術サービス業」で7.4%◇「情報通信業」で6.6%増加した一方、◆「教育、学習支援業」で5.1%◆「製造業」で2.9%減少しました。
厚生労働省は「物価高や円安による原材料費の高騰の影響で、製造業を中心に多くの企業で新しい求人を出せない状況が続いている。一方で、仕事を探す人は企業の賃上げの状況などを見ていて申し込みまで至る人が少なく、求職者数がマイナスとなり、全体としては求人倍率がプラスに転じたとみられる」と分析しています。
完全失業率:2.7% 0.2ポイント悪化
【参考資料4 労働力調査(完全失業率)@総務省】
一方、7月の全国の完全失業率は2.7%で、前の月より0.2ポイント悪化しました。完全失業率が悪化したのは、ことし2月以来となります。
30日、総務省が公表した7月の全国の完全失業率によりますと、7月の就業者数は6795万人で、前の年の同じ月と比べて23万人増え24か月連続で増加しました。
7月の完全失業者数は188万人で、前の年の同じ月と比べて5万人増え、4か月連続の増加となりました。
この結果、季節による変動要因を除いた全国の完全失業率は2.7%で、前の月より0.2ポイント悪化しました。完全失業率が悪化したのは、ことし2月以来となります。
総務省は「待遇や休暇の取りやすさなど、よりよい条件を求めて離職した人が増えており、前向きな失業傾向とも言えるが、引き続き状況を注視していきたい」と話しています。
最低賃金 全国平均時給1055円
【参考資料5 都道府県別最低(時給)賃金@編集部まとめ】
29日、今年10月以降、順次、適用される都道府県ごとの最低賃金が出そろいました。
人材流出への危機感などから国の目安の50円を上回る引き上げが相次ぎ、平均の引き上げ額は過去最大の51円で、全国平均の時給は1055円となりました。
厚生労働省の審議会が先月7月、最低賃金を全国で50円引き上げるという目安を示したことを受け、各都道府県の審議会は29日までに引き上げ額をまとめました。
厚生労働省によりますと、全国平均の引き上げ額は国の目安より1円高い51円で、その結果、全国平均の時給は1055円となりました。
51円の引き上げは、現在の方法で決めるようになった2002年以降で最大です。
人材流出への危機感や物価高騰を背景に27の県で国の目安を上回り、引き上げ額が最も高かったのは徳島県で目安より34円高い84円、次いで、愛媛県と岩手県が9円高い59円、島根県で8円高い58円などとなりました。
20の都道府県は目安どおりの50円の引き上げでした。
また、引き上げ後の時給をみると、最も高いのは東京都で1163円、最も低いのは秋田県で951円でした。
最高額と最低額の差は212円でこれまでよりも8円狭まりました。
新しい最低賃金は10月から11月にかけて順次、適用される見通しです。
東京23区消費者物価指数:2.4%上昇
【参考資料6 東京23区消費者物価指数@総務省】
30日、総務省が公表した東京23区の8月の消費者物価指数は速報値で、天候による変動が大きい生鮮食品を除いた総合で、去年の同じ月より2.4%上昇しました。
総務省によりますと、東京23区の8月の消費者物価指数は、速報値で生鮮食品を除いた総合で、2020年を100として107.9となり、去年の同じ月より2.4%上昇しました。
上昇率は7月の2.2%から0.2ポイント拡大し、3か月連続で2%台となりました。
政府が続けてきた電気・ガス料金への補助金がいったん終了したことが主な要因で、「電気代」は去年の同じ月から24.2%、「都市ガス代」は16.9%、それぞれ上昇しました。
「生鮮食品を除く食料」も2.7%上昇し、上昇率は前の月から0.1ポイント拡大しました。
上昇幅が大きかったものでは、◇「コシヒカリを除くうるち米」が28.2%◇「果実ジュース」が25.8%◇「輸入の牛肉」が14.7%◇「チョコレート」が8.7%◇「おにぎり」が8.3%などとなっています。
東京23区の指数は全国の先行指標として注目されていて、全国の8月の指数は9月20日に公表されます。以 上
筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト
元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職
事件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。
その後、連合(日本労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。
政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。
☆出稿資料☆
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