注目の記事 PICK UP!

元最高裁判所判事・草野耕一氏とは―企業法務と司法の現場を歩んだ法曹

日本企業を取り巻く法務環境は、この40年で大きく変化した。

企業買収という言葉がまだ一般には馴染みの薄かった時代から、国際的なM&Aやコーポレートガバナンスが経営の重要課題として語られる時代へ。その変化の過程で企業法務の実務に携わり、その後は最高裁判所判事も務めた法曹が草野耕一氏である。

1955年、千葉県千葉市に生まれた草野氏は、千葉大学教育学部附属小学校、同附属中学校、千葉県立千葉高等学校を経て東京大学法学部へ進学した。学生時代に司法試験に合格し、卒業後は弁護士としての道を歩み始める。

1980年に弁護士登録を行った当時、日本経済は国際化の波の中にあった。企業活動の舞台が国内から世界へ広がるなかで、法律実務にも新たな知識と視点が求められるようになっていた。

そのような時代背景のもと、草野氏はハーバード大学ロースクールで学び、さらにニューヨークの法律事務所で実務経験を積んだ。1987年にはニューヨーク州法曹資格を取得し、日本法だけでなく米国法にも精通する法曹として活動の幅を広げていく。

帰国後は企業買収(M&A)、企業再編、会社法、金融法務を中心に数多くの案件に携わった。1989年に発生した小糸製作所をめぐる案件では同社側の代理人を務めている。当時は海外投資家による日本企業への経営参加が大きな話題となっており、この案件も企業と株主の関係を考える上で注目を集めた事例の一つだった。

企業法務の現場で経験を重ねる一方、企業統治や教育の分野にも活動の場を広げていく。小糸製作所では長年にわたり監査役を務め、楽天株式会社では社外取締役として経営に携わった。また、東京大学や慶應義塾大学では教壇に立ち、企業法務や会社法を学ぶ学生の指導にもあたっている。

草野氏は企業法務分野の実務家として活動する一方、長年にわたり執筆活動も続けている。著書には『M&A法大全』『会社法の正義』『金融課税法講義』『数理法務のすすめ』のほか、『ゲームとしての交渉』『日本人が知らない説得の技法』『未央の夢 ある国際弁護士の青春』などがある。

企業買収(M&A)、会社法、金融法務といった専門分野に関する実務書に加え、交渉論や説得技法をテーマとした著作も刊行している。2018年に刊行された『株主の利益に反する経営の適法性と持続可能性―会社が築く豊かで住みよい社会』は、東京大学に提出した博士論文をもとに書籍化されたものである。

これまでの著作では、企業と株主の関係、企業統治、法と経済の接点、さらには交渉や意思決定のあり方など、幅広いテーマが取り上げられている。

最高裁判所判事を退任した後も、草野氏は司法制度や法曹界のあり方について積極的に発信を続けている。

2025年に行われたインタビューでは、「司法立国」という考え方を提唱し、司法の働きを通じて豊かで公正な社会の実現を目指すべきだと語った。また、裁判官が経済学や統計学などの知見を学ぶ機会の充実や、弁護士・裁判官・検察官の人材交流を活性化させる必要性についても持論を述べている。

同インタビューでは、最高裁判事在任中に約9,000件の事件に関与したことを振り返り、「国民に希望をもたらす判決」を意識していたとも語っている。法解釈が社会に与える影響を重視する姿勢は、企業法務の実務家として活動していた時代から一貫して見られる考え方の一つである。

現在は弁護士として活動を再開し、東京都港区六本木に草野耕一法律事務所を開設している。企業法務、M&A、会社法、金融法務の分野で培った経験に加え、最高裁判所判事としての経験を持つ法曹として、今後の活動にも注目が集まる。

【関連書籍】

『会社法の正義』(商事法務)

株式会社 商事法務 | 会社法の正義株式会社 商事法務。法律専門出版社としての活動を積極的に展開しております。www.shojihomu.co.jp

『株主の利益に反する経営の適法性と持続可能性―会社が築く豊かで住みよい社会』(有斐閣)

著作一覧:草野 耕一(クサノ コウイチ) | 有斐閣www.yuhikaku.co.jp

草野耕一法律事務所(主著一覧)

草野耕一法律事務所草野耕一法律事務所の公式サイトwww.officeofkk.jp

【関連資料】

草野耕一法律事務所、最高裁判所、第一東京弁護士会、東京大学大学院法学政治学研究科、慶應義塾大学大学院法務研究科の各公表資料を参照。

さくらフィナンシャルニュース

YouTube
https://www.youtube.com/@sakurafinancialnews

公式X
https://x.com/sakurafina0123

公式note
https://note.com/sakurafina

関連記事

  1. 【裁判官が金融庁出向中インサイダー取引 東京地検が告発も視野に】

  2. 【つばさの党 根本良輔幹事長 東京都15区立候補者 意見陳述書オール掲載 質問の権利を違法とするのは…

  3. 【安芸高田市の石丸伸二前市長への「どう喝」訴訟、広島高裁は一審判決を支持】

  4. 濱村聖一元社長らハイアス ・アンド・カンパニー旧経営陣三人の証人尋問が民事8部で行われる

  5. 【三浦瑠麗元夫 太陽光発電投資コンサル横領罪で懲役6年の実刑 三浦瑠麗はどこまで関与しているのか?】…

  6. ツイッターの逮捕歴に関する投稿を、最高裁が削除を命じる初の判決

  7. 和田恵弁護士がKollectアーツ法律事務所へ移籍、国際刑事裁判所に客員実務家として赴任

  8. 【冤罪】大河原化工機事件が示した「司法の闇」──警察・検察・裁判所が殺した命

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP