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【経済評論】「アクティビスト規制」が日本株を壊す日財界主導の会社法改正に 海外マネー流出の懸念

芸能ライター 山本武彦

日本の株式市場を支えてきた海外マネーが、静かに日本から距離を置き始めるかもしれない。自民党と法務省で検討が進む会社法改正、いわゆる「アクティビスト規制」を巡り、海外ファンドや企業統治の専門団体から反対の声が上がっている。

焦点は、株主提案権の要件だ。現行法では、総議決権の1%以上に加え、議決権300個以上を一定期間保有する株主にも提案の道が開かれている。法制審議会の中間試案では、この「300個要件」を廃止し、原則1%以上に一本化する案が示された。時価総額1兆円の企業なら、単純計算で約100億円分を保有しなければ提案できない。これでは個人株主や小規模ファンドの声は、事実上、株主総会から締め出される。

背景に見えるのが財界の強い働きかけだ。経団連は2025年12月から、300個要件の廃止や、業務執行事項を定款変更の形で提案することの制限を要求。2026年5月にも法務省へ同趣旨の意見を提出した。政治側の検討内容がこれと重なる以上、「財界のゴリ押し」と批判されても仕方がない。もちろん、違法な圧力が確認されたわけではない。しかし、企業経営者側の要望が制度案に色濃く反映された構図は否定しにくい。

自民党側は、アクティビストが経営に健全な緊張感を与えた功績を認めつつ、不透明な共同保有や開示違反、短期的な還元要求が成長投資を妨げる危険を理由に挙げる。問題行為への監視強化には理がある。だが、違反者を取り締まることと、適法な少数株主の提案権を一律に狭めることは、全く別の話だ。

海外からは早くも警告が出ている。アジア企業統治協会(ACGA)は法務省に意見を提出。Corporate Action Japanも、1%未満の提案を無価値とみなす考えはコーポレートガバナンス・コードの趣旨に反し、「資産運用立国」とも矛盾すると批判する。英フィナンシャル・タイムズも、外国人投資家の間で日本が企業統治改革を後退させるとの懸念が広がっていると報じた。

危険なのは、海外ファンドが一斉に日本株を投げ売りすることだけではない。より現実的なのは、日本企業に対して投資家が払う価格そのものが下がることだ。経営陣に改革を求めにくい市場では、余剰現金、不採算事業、政策保有株式が温存されるリスクが高まる。結果としてPERやPBRに「経営者保護ディスカウント」が上乗せされ、低PBR企業やMBO候補、中小型バリュー株から資金が逃げる可能性がある。

JPXの2025年度調査では、外国法人等の日本株保有比率は時価総額ベースで34.7%、保有額は約420.6兆円と過去最高だった。この巨大な買い手に「日本は株主より経営陣を守る国だ」と見放されれば、影響は一部のアクティビスト銘柄だけでは済まない。指数連動型の海外資金が直ちに全て撤退することは考えにくいが、アクティブファンドが新規投資を減らし、日本株に求めるリスクプレミアムを引き上げるだけでも、株価の上値は重くなる。

不透明な共同保有や大量保有報告違反を厳しく取り締まることには合理性がある。だが、違反者対策を口実に正当な株主提案まで封じるのは別問題だ。アクティビストを追い出した後に残るのが、成長投資に挑む経営者ではなく、外部の監視を失った保守的な経営陣なら、日本株の再評価相場はそこで終わる。

改正内容はまだ確定していない。だからこそ今、問わなければならない。守ろうとしているのは日本企業の長期成長なのか。それとも、株主から追及されたくない現経営陣の地位なのか。

【 参考資料・関連リンク】

会社法改正・株主提案権に関する公的資料

・法務省「会社法制(株式・株主総会等関係)部会」
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00298.html

・法制審議会「会社法制(株式・株主総会等関係)部会 第10回会議資料」

株主提案権の300個要件の廃止・見直しをめぐる議論が収録されている。
https://www.moj.go.jp/content/001459690.pdf

・e-Gov法令検索「会社法」
株主提案権については、主に会社法第303条以下を参照。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086

経団連の提言・意見

・日本経済団体連合会「持続的な成長に向けたコーポレートガバナンスのあり方」

300個要件の廃止や、業務執行事項を定款変更議案として提案することへの制限を求めている。

https://www.keidanren.or.jp/policy/2025/083_honbun.html

・日本経済団体連合会「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案に対する意見」https://www.keidanren.or.jp/policy/2026/027_honbun.html

・日本経済団体連合会「コーポレートガバナンス改革の課題と提言」https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2026/0101_06.html

【 株主・機関投資家側からの意見】

・Corporate Action Japan

「会社法制の見直しに関する中間試案」へのパブリックコメント

・Asian Corporate Governance Association(ACGA)

アジア地域の機関投資家や企業統治関係者で構成される団体。日本の会社法改正案に関する意見も公表している。https://www.acga-asia.org

・ClientEarth「株主提案権を変更する会社法改正案に関する解説」
https://www.clientearth.asia/media/y1igqhyl/eng-briefing-on-amendment-proposals-to-the-companies-act-modifying-rights-to-make-a-shareholder-proposal.pdf

 海外報道・関連報道

・Reuters「Japan to tighten rules for shareholder proposals amid pushback against activism」

https://www.reuters.com/legal/government/japan-tighten-rules-shareholder-proposals-amid-pushback-against-activism-2026-04-27

・Reuters「Japanese firms field record proposals from activists at this year’s shareholder meetings」https://www.reuters.com/legal/government/japanese-firms-field-record-proposals-activists-this-years-shareholder-meetings-2026-06-08

・Reuters「Japan’s ruling party plans tighter oversight of disclosures by activist investors」https://www.reuters.com/legal/government/japans-ruling-party-plans-tighter-oversight-disclosures-by-activist-investors-2026-07-08

日本株の外国人保有比率・企業統治に関する資料

・日本取引所グループ「株式分布状況調査」

2025年度調査では、外国法人等の株式保有比率が34.7%となり、過去最高を更新した。https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/examination/01.html

・東京証券取引所「コーポレート・ガバナンス白書2025」
https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jb0-att/um3qrc000001isbf.pdf

・日本総合研究所「The Rise of Shareholder Activism in Japan and Implications for Japanese Listed Companies」https://www.jri.co.jp/en/MediaLibrary/file/english/periodical/jrirj/2026/9/yoshida.pdf

 用語解説・Wikipedia

・会社法
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E6%B3%95

・株主総会
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%AA%E4%B8%BB%E7%B7%8F%E4%BC%9A

・株主提案権
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%AA%E4%B8%BB%E6%8F%90%E6%A1%88%E6%A8%A9

・コーポレート・ガバナンスhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%9D%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%AC%E3%83%90%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%82%B9

・物言う株主
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%A9%E8%A8%80%E3%81%86%E6%A0%AA%E4%B8%BB

・機関投資家
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A9%9F%E9%96%A2%E6%8A%95%E8%B3%87%E5%AE%B6

・株価純資産倍率(PBR)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%AA%E4%BE%A1%E7%B4%94%E8%B3%87%E7%94%A3%E5%80%8D%E7%8E%87

・株価収益率(PER
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%AA%E4%BE%A1%E5%8F%8E%E7%9B%8A%E7%8E%87

・マネジメント・バイアウト(MBO)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%8D%E3%82%B8%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88

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