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【さくらフィナンシャル司法人物研究】                      高須順一とは何者か 民法・債権法の実務と理論をつないだ                弁護士出身の最高裁判事



高須順一という法律家を一言で表すなら、「民事法の実務と理論をつないできた弁護士出身の最高裁判事」である。

最高裁判所判事には、裁判官出身、検察官出身、弁護士出身、行政官出身、学者出身など、さまざまな経歴の人物が就任する。その中で高須順一は、弁護士として民事実務に携わりながら、法政大学法科大学院で長く教育と研究を行い、さらに法務省の法制審議会民法(債権関係)部会にも関わった人物である。

最高裁の公式略歴によれば、高須順一は1982年に法政大学法学部を卒業し、1988年に弁護士登録、2004年に法政大学大学院法務研究科教授、2009年に法制審議会民法(債権関係)部会幹事、2019年に日本弁護士連合会司法制度調査会委員長を務め、2020年に京都大学

博士(法学)を取得、2025年3月27日に最高裁判所判事に就任している。

この経歴から見えてくるのは、単なる研究者でも、単なる実務家でもない、民事法の制度設計と現場感覚の両方を知る法律家像である。

1 法政大学から弁護士へ 民法実務への出発点

高須順一は、1959年10月9日生まれ。東京都葛飾区出身とされ、埼玉県立春日部高等学校を経て、法政大学法学部法律学科に進学した。法政大学では民法を学び、下森定教授のゼミナールに参加したとされる。

1982年に法政大学法学部を卒業し、司法修習を経て、1988年に東京弁護士会で弁護士登録を行った。最高裁の公式略歴でも、1986年に司法修習生、1988年に弁護士名簿登録とされている。

弁護士としての高須順一の特徴は、民事法、とりわけ債権法を専門としてきた点にある。民法の中でも債権法は、契約、損害賠償、金銭債権、保証、債権譲渡、詐害行為取消権など、経済取引や企業活動、個人間の紛争に直結する領域である。

刑事事件や憲法訴訟のように社会的注目を集めやすい分野とは異なり、債権法は一見地味に見える。しかし、実際には社会の取引秩序を支える基盤である。企業間取引、融資、保証、債権回収、倒産、相続、資産移転、不動産取引など、経済社会のほぼすべてに関わる。

高須順一は、この「社会の足腰」にあたる民事法を専門としてきた法律家である。

2 法科大学院教育者としての高須順一

高須順一のもう一つの重要な顔は、法科大学院の教育者である。

最高裁の公式略歴によれば、1990年に法政大学法学部非常勤講師となり、2004年には法政大学大学院法務研究科教授に就任している。さらに2018年には法政大学大学院法務研究科長を務めた。

法科大学院制度は、2000年代以降の司法制度改革の中核として導入された。従来の司法試験中心の法曹養成から、実務と理論を架橋する教育へと転換する目的があった。しかし、制度開始後は、多くの法科大学院が司法試験合格率の低迷、志願者減少、定員割れに苦しんだ。

法政大学法科大学院も例外ではなかった。法政大学法科大学院の「高須順一氏の最高裁判所判事ご就任を祝う会」に関する記事では、高須順一が2018年度から2023年度までの6年間、法務研究科長を務め、就任時には司法試験合格率や入学定員充足率で厳しい状況にあったことが紹介されている。

この時期に法科大学院を運営することは、単に授業をすることとは違う。学生募集、カリキュラム改革、司法試験対策、実務教育、教員組織、認証評価、大学経営との調整など、教育と制度運営の両面で手腕が問われる。

高須順一は、民法学者・弁護士として教壇に立つだけでなく、法科大学院という司法制度改革の現場で、次世代法曹の育成にも携わった人物である。

3 民法改正への関与――債権法の制度設計に関わる

高須順一の経歴で特に重要なのが、法務省法制審議会民法(債権関係)部会幹事を務めたことである。

最高裁の公式略歴では、2009年に法務省法制審議会民法(債権関係)部会幹事となったことが記載されている。

民法の債権法改正は、日本の民事法制における大改正だった。明治以来の民法典を、現代の取引社会に合わせて見直す作業であり、契約、保証、消滅時効、債務不履行、定型約款など、多くの実務に影響を与えた。

この改正作業に関わったということは、単に民法を研究していたというレベルではない。日本の民事取引ルールそのものの再設計に関与したという意味を持つ。

高須順一の著作にも、この問題意識は表れている。J-GLOBALの研究者情報では、研究キーワードとして「判決効」「詐害行為取消権」が挙げられ、著書として『Before/After 民法改正』『実務解説 改正債権法』『詐害行為取消権の行使方法とその効果』などが掲載されている。

つまり高須順一は、民法改正を外から論評しただけではなく、制度設計の議論に参加し、その後も改正法の実務的理解を広める役割を果たした法律家だった。

4 専門分野としての詐害行為取消権

高須順一の研究分野を語るうえで、避けて通れないのが詐害行為取消権である。

詐害行為取消権とは、債務者が債権者を害する目的で財産を他人に移転するなどした場合に、債権者がその行為の取消しを求めることができる制度である。たとえば、借金を返せなくなりそうな人が、債権者からの差押えを逃れるために、自分の不動産を家族に移すような場合が問題となる。

この制度は、債権回収、倒産、事業承継、相続、財産隠し、会社分割などと密接に関係する。表面的には民法の一制度に見えるが、実務上は非常に重要である。

高須順一は、2020年に京都大学大学院法学研究科法政理論専攻博士課程を修了し、京都大学博士(法学)を取得している。最高裁の公式略歴でもこの点は明記されている。

博士論文のテーマは『詐害行為取消権の行使方法とその効果』であり、同名の著作も商事法務から刊行されている。J-GLOBALにも、この著作が研究業績として掲載されている。

詐害行為取消権は、単に「悪質な財産隠しを取り消す制度」ではない。どの範囲で取消しを認めるのか。受益者や転得者との関係をどう扱うのか。取消しの効果は誰に及ぶのか。債権者平等や取引安全とどう調整するのか。非常に複雑な論点を含んでいる。

高須順一の専門性は、まさにこうした民事実務の細部にある。派手な憲法論ではなく、現実の財産移転、債権回収、取引安全をめぐる精密な法技術に強みを持つ法律家と言える。

5 日弁連・東京弁護士会での司法制度改革への関与

高須順一は、学者・弁護士としてだけでなく、弁護士会活動を通じて民事司法制度にも関わってきた。

最高裁の公式略歴では、2018年に東京弁護士会法制委員会委員長、同年に東京弁護士会民事司法改革実現本部委員、2019年に日本弁護士連合会司法制度調査会委員長、2020年に日弁連民事裁判手続に関する委員会幹事、同年に日弁連民事裁判手続のIT化に関するワーキンググループ委員、さらに最高裁判所民事規則制定諮問委員会委員を務めたことが確認できる。

ここからわかるのは、高須順一が単なる民法研究者ではなく、民事裁判手続そのものの改革にも関わってきたという点である。

民事裁判のIT化、手続の合理化、弁護士実務と裁判所実務の接続は、近年の日本司法における大きな課題である。裁判の遅さ、費用、書面中心主義、デジタル化の遅れは、企業・個人を問わず司法アクセスに影響する。

高須順一は、民事法の内容だけでなく、それを裁判でどう実現するかという手続面にも関与してきた。これは、最高裁判事としての資質を見るうえで重要である。

最高裁は個別事件を判断するだけでなく、日本の裁判制度全体に影響を持つ機関である。民事規則、裁判手続、司法制度改革に関わった経験は、最高裁判事としての役割にもつながる。

6 最高裁判事への就任 弁護士出身判事としての意味

高須順一は、2025年3月27日に最高裁判所判事に就任した。最高裁の公式略歴でも、同日付で最高裁判所判事に就任したことが確認できる。

最高裁判所は、日本の司法権の頂点である。民事、刑事、行政、家事、労働、知的財産、憲法問題など、あらゆる重要事件の最終判断を担う。最高裁判事は15名で構成され、その判断は日本社会に大きな影響を与える。

高須順一の特徴は、弁護士出身であることに加え、民法・債権法の専門家であり、法科大学院教育者であり、民事司法制度改革にも関わってきた点にある。

これは、最高裁の多様性という観点から重要である。

裁判官出身者は、裁判所内部の実務に精通している。検察官出身者は刑事司法に強い。行政官出身者は政策や行政法に強い。学者出身者は理論に強い。

一方、弁護士出身者には、当事者の代理人として紛争の現場を見てきた経験がある。依頼者の不安、証拠収集の難しさ、裁判手続の負担、和解の現実、企業間紛争の利害調整、個人の権利救済の難しさを知っている。

高須順一は、さらにそこに民法研究者としての理論的蓄積を持つ。最高裁において、民事法分野の精密な判断に貢献することが期待される人物である。

7 南御堂固定資産税訴訟で見せた反対意見

高須順一が最高裁判事として注目された事例の一つが、大阪市の寺院「南御堂」をめぐる固定資産税訴訟である。

報道によれば、寺院の山門とホテルなど商業施設が一体となった高層ビルについて、参道部分の土地に課された固定資産税などの取消しが争われ、最高裁第二小法廷は2026年1月26日、課税を適法と判断した。多数意見により寺院側の逆転敗訴が確定したが、高須順一は反対意見を述べ、多数意見の解釈について「いたずらに非課税の余地を狭める点で妥当性を欠く」と批判したと報じられている。

この事件は、宗教施設の非課税制度と、現代的な複合施設の課税関係が問題となったものと見ることができる。寺院の山門・参道という宗教的空間が、商業ビルと一体化した場合、どこまで宗教用施設として非課税の対象になるのか。伝統的な宗教施設と現代都市開発の境界が問われた事件である。

高須順一の反対意見は、課税当局に広い裁量を与えすぎることへの警戒とも読める。もちろん、宗教法人の非課税については、公益性と租税公平のバランスが必要である。商業施設と一体化した宗教空間が無制限に非課税となれば、不公平が生じる可能性もある。

一方で、多数意見のように非課税範囲を狭く解釈しすぎれば、宗教施設本来の空間や利用実態が過度に軽視されるおそれもある。

高須順一はこの事件で、形式的・画一的な課税判断に対して、非課税制度の趣旨を丁寧に見るべきだという立場を示したと考えられる。

ここには、民事法研究者らしい「制度趣旨へのこだわり」が見える。

8 国民審査で信任 罷免率14.15%

高須順一は、2026年2月8日執行の最高裁判所裁判官国民審査の対象となり、信任された。

毎日新聞の報道によれば、高須順一の罷免率は14.15%、同じく審査対象だった沖野眞已は13.73%で、いずれも罷免されなかった。国民審査では、罷免を求める割合が50%を超えた場合に罷免される。

東京都選挙管理委員会の開票結果でも、高須順一について、罷免可が1,151,064票、罷免不可が5,462,173票、有効投票数6,613,237票とされている。

国民審査は、日本の最高裁判事に対する唯一の直接的な民主的チェック制度である。しかし実際には、裁判官の個別判断や経歴が十分に知られないまま投票されることが多い。多くの有権者にとって、最高裁判事の名前は選挙のたびに突然現れる。

その意味で、高須順一のような民事法専門の最高裁判事についても、経歴、専門性、判決での判断傾向を社会が理解することが重要である。

最高裁は、国民生活と企業活動の最終的なルールを決める場である。そこに誰が座っているのかを知ることは、民主主義社会において不可欠である。

9 高須順一の著作から見える問題意識

高須順一の著作群を見ると、彼の関心が一貫して民事実務に根ざしていることがわかる。

単著には、『ロースクール民事法――要件事実とその先を目指して』『民法(債権法)改正を問う』『民法から考える民事執行法・民事保全法』『詐害行為取消権の行使方法とその効果』などがある。

共著・編著にも、『事案分析 要件事実』『ポイント整理 改正債権法』『Before/After 民法改正』『実務解説 改正債権法』『行為類型別 詐害行為取消訴訟の実務』など、法科大学院教育と実務家向けの著作が多い。

これらのタイトルからわかるのは、高須順一が「抽象的な法理論」だけではなく、実際の訴訟、要件事実、債権回収、民事執行、民事保全、改正法の運用に強い関心を持ってきたということである。

民事法は、条文を知っているだけでは使えない。裁判でどの事実を主張し、どの証拠を出し、どの法律効果を発生させるのか。これが要件事実論であり、民事訴訟実務の核心である。

高須順一の教育・研究は、まさにこの実務の核心に向けられてきた。

10 さくらフィナンシャルの視点 最高裁に必要な「民事経済感覚」

さくらフィナンシャルの視点から見ると、高須順一の最高裁入りには重要な意味がある。

日本の司法、とりわけ民事・商事事件では、経済取引の実態をどこまで理解できるかが極めて重要である。会社分割、債権譲渡、詐害行為、担保、保証、倒産、不動産取引、相続、事業承継、金融商品、企業間契約。これらは、条文解釈だけでなく、経済合理性、取引慣行、当事者のインセンティブを理解しなければ正しく判断できない。

高須順一は、債権法改正、詐害行為取消権、民事裁判手続、要件事実、法科大学院教育に関わってきた。その意味で、民事経済社会のルールを支える専門性を持つ最高裁判事だと言える。

もちろん、最高裁判事としての評価は、今後の個別判断を見なければならない。憲法問題、行政事件、労働事件、家族法、刑事事件など、民法以外の分野でどのような判断を示すのかは、まだ十分には見えていない。

しかし、少なくとも民事法分野において、高須順一は理論と実務の両方を知る人物である。

日本社会では、最高裁判事の存在があまりにも見えにくい。だが、最高裁の判断は、企業活動、個人の権利、税務、行政、宗教法人、労働、家族、表現の自由にまで及ぶ。

だからこそ、私たちは最高裁判事を単なる「偉い法律家」としてではなく、どのような

経歴、専門性、問題意識を持つ人物なのかという視点で見なければならない。

結論 高須順一は「地味だが重要な民事司法の専門家」である

高須順一は、派手な政治的発言で知られる人物ではない。メディア露出が多いタイプの法律家でもない。だが、その経歴を丁寧に見ると、日本の民事司法に深く関わってきた人物であることがわかる。

法政大学で民法を学び、弁護士として実務に入り、法科大学院で教育を担い、民法債権法改正に関わり、詐害行為取消権を研究し、日弁連や東京弁護士会で民事司法制度改革にも携わった。そして2025年、最高裁判所判事に就任した。

その歩みは、まさに民事法の現場、教育、制度設計、最高裁判断へと連なるものだった。

高須順一を理解するキーワードは、次の四つである。

民法。

債権法。

民事司法改革。

実務と理論の架橋。

最高裁判事としての高須順一が、今後どのような判断を示していくのか。特に、民事・商事・税務・行政分野で、どのような法解釈を展開するのかは注目に値する。

司法は、政治や金融市場ほど派手には動かない。だが、社会のルールを最終的に決める場所である。そこに、民事法の制度と実務を深く知る高須順一が入ったことは、日本の司法を考えるうえで重要な意味を持つ。

さくらフィナンシャルは、今後も最高裁判事の経歴、判決、反対意見、制度的役割を検証し、日本の司法が経済社会にどのような影響を与えているのかを追っていく。

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