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「玉造の低層本社」に眠る含み資産――コスモ株式会社【本社:大阪市東成区】に突きつけられる“資本効率”という現実

大阪・玉造駅周辺。再開発の波が押し寄せ、建物の高層化が急ピッチで進むこのエリアにおいて、周囲を高いビルに挟まれるようにひっそりと佇む3階建ての建物がある。女性用インナーウェアに欠かせない「バイアステープ」をはじめとするブラジャー専用パーツを扱う老舗、コスモ株式会社の本社だ。

一見すると、ニッチなモノづくりで業界を支え続けてきた長年の堅実な社風を体現しているかのような佇まいである。
しかし、金融や不動産のプロフェッショナルから見れば、全く異なる問いが頭をもたげる。「果たしてこの一等地の不動産は、本当に有効活用されているのだろうか」という疑問だ。

ニッチ産業の構造不況と資本効率のジレンマ

ブラジャーのバイアステープという極めて専門的なパーツ産業は現在、過酷な逆風に晒されている。国内縫製拠点の徹底した海外シフト、インナーウェア市場の縮小、そして熾烈な低価格競争がもたらす長期的な構造不況である。

この環境下で、特定の部材に特化してきた多くの老舗企業は、低水準のROA(総資産利益率)やROE(自己資本利益率)にあえぐだけでなく、成長投資へと回されない過大な現預金や、収益を生まない遊休不動産を抱え込むという、全体的な資本効率の著しい停滞に直面している。コスモ株式会社もまた、こうした業界共通の呪縛から無縁ではない。そして、その象徴としてひときわ目を引くのが、他ならぬ「本社不動産」の存在である。

「一等地の低層ビル」という機会損失

玉造エリアは大阪市内でも交通アクセスに優れ、土地の利用価値が極めて高い。現在の3階建てという低層利用は、本来認められている容積率や再開発のポテンシャルを考慮すると、「資産効率」の観点から大きな機会損失を生んでいる可能性が高い。

仮にこの土地の価値を最大限に引き出すとすれば、建替えや高層化による高度利用をはじめ、賃貸オフィス・商業テナントの併設による収益化を図ることが考えられる。さらに、セール・アンド・リースバックなどを活用した不動産の流動化や、本社機能そのものを縮小して思い切った資産圧縮を進めるといった選択肢も、当然の経営戦略として俎上に載るはずだ。

伝統という名の「思考停止」を越えて

しかし、日本の老舗企業には「昔からここにあるから」「自社ビルが信用の証だから」といった情緒的な理由で、莫大な資産が固定化・死蔵されるケースが後を絶たない。さらに深刻なのは、単価の安いニッチなパーツ製造という本業の収益力低下を、都心不動産がもたらす「含み益」のベールで覆い隠してしまう構造的陥穽(かんせい)に陥ることである。

本業の稼ぐ力が低迷し、ROAが伸び悩む中、一等地の資産すらも十分な利益を生み出していない状態。
それを、株主や取引先、そして従業員に対する「最適な経営」と呼ぶことは難しいだろう。現代の経営陣に求められているのは、過去の遺産を守り抜く「守りの経営」だけではない。手元にある資産をいかにダイナミックに活用し、次なる成長への投資へと転換していくかという「攻めの視点」である。

コスモの玉造本社は、単なる古い社屋ではない。それは、日本中の老舗モノづくり企業にひっそりと横たわる「眠れる不動産資産」の象徴なのかもしれない。

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