芸能ライター 山本武彦
赤い羽根を胸につけた子どもたち。
駅前で募金箱を抱えるボランティア。
自治会を通じて回ってくる封筒。
日本人なら、
一度は見たことがある「赤い羽根共同募金」。
それは長い間、「困った人を助ける善意の象徴」として扱われてきた。
だが、その象徴にいま、深い疑惑の影が落ちている。
北海道共同募金会で、赤い羽根共同募金などに関わる寄付金のうち、約1億8000万円が使途不明になっていると報じられた。
会計責任者だった事務局長による着服疑いも浮上している。
まだ刑事上の結論が出たわけではない。
だから「横領が確定した」とは書けない。
しかし、寄付金を預かる組織で、あるべき金が相当額不足している可能性が公式に認められた。
その時点で、制度への信頼は大きく傷ついた。
この問題の怖さは、単なる一職員の不正疑惑では終わらない点にある。
寄付金とは、余った金ではない。
子どもが小銭を入れ、地域住民が付き合いで差し出し、企業が社会貢献として拠出する
金である。
その一円一円には、「どこかの誰かのために使われるはずだ」という信頼が乗っている。
その信頼が、もし内部の杜撰な管理によって失われたのなら、これは福祉の問題である前に、公共性の看板を掲げた組織統治の問題である。
赤い羽根共同募金は、1947年に「国民たすけあい運動」として始まった。
戦後の混乱期、福祉施設や地域福祉を支える資金が必要だった。
その歴史的役割は否定しない。
だが、戦後に必要だった制度が、令和の時代にもそのまま正しいとは限らない。
いまは寄付の選択肢がある。
クラウドファンディング、NPOへの直接寄付、ふるさと納税、企業の支援プログラム。
寄付者は「誰に、いくら届き、何に使われたか」を見たい時代に生きている。
にもかかわらず、赤い羽根共同募金は「地域で集め、地域に配る」という古い安心感に寄りかかってきた。ではない。
そこに今回の使途不明金問題が突き刺さった。
中央共同募金会は北海道の事案を受け、全国の都道府県共同募金会に対する経理事務体制の一斉点検を行うとしている。
裏を返せば、全国的な点検が必要なほど、今回の問題は重いということだ。
善意を集める仕組みが、善意に甘えていたのではないか。
この疑念に正面から答えなければならない。
もちろん、赤い羽根共同募金で支えられてきた福祉団体や地域活動があるのは事実である。
だからこそ、問題を曖昧にしてはいけない。
「福祉のためだから批判するな」という空気こそ危険だ。
福祉を守るために、募金制度を疑う必要がある。
寄付者の信頼を守るために、組織の甘さを突く必要がある。
本当に必要なのは、謝罪文ではない。
全都道府県共同募金会の会計点検、役員報酬・人件費・管理費率の公開、配分先と配分額の一覧化、外部監査の義務化、不正発覚時の即時公表ルールである。
これができないなら、赤い羽根共同募金は「善意の受け皿」ではなく、「善意を集めるだけ集めて、中身が見えにくい古い募金システム」と見られても仕方がない。
赤い羽根は、きれいな言葉で守られるものではない。
寄付者が知りたいのは、美談ではなく金の流れである。
どれだけ集めたのか。
誰に配ったのか。
管理費はいくらか。
誰が監査したのか。
そこを説明できない募金制度に、これ以上、無条件の信頼を置く理由はない。
赤い羽根共同募金の疑惑は、日本の寄付文化に突きつけられた警告だ。
善意は尊い。
だが、善意を預かる側が透明でなければ、その善意は簡単に食い物にされる。
もう役目を終えた昭和の集金システムではないか。
その答えを出す時が来ている。
#赤い羽根共同募金
#使途不明金問題
#寄付金の透明性
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