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【政治評論】「遠い男系」は、どう皇統と結ばれてきたのか 光仁天皇と光格天皇の先例が示す、旧宮家養子論の本当の論点

芸能ライター・山本武彦

旧宮家養子論で見落としてはならない「二重のつながり」だ。

旧宮家の養子論では、「男系なら十分だ」と「約600年前に分かれた遠縁では意味がない」という両極端な議論が目立つ。

しかし、どちらも一部しか見ていない。

旧11宮家は、父から父へとたどる男系では、室町時代の伏見宮貞成親王を現在の皇室との共通祖先とする。

現在の皇室は後花園天皇の流れ、旧宮家側はその弟・貞常親王の流れであり、男系上の分岐は約600年前である。

男系だけを見れば、確かに遠い。

だが、皇室の歴史は、遠い男系をそのまま放置してきた歴史ではない。

傍系の男系男子が、皇女や内親王との婚姻によって、直前の皇統との血縁を重ねてきた例がある。

奈良時代、称徳天皇の崩御後に即位した光仁天皇は、天智天皇系の白壁王だった。

光仁天皇は、聖武天皇の皇女・井上内親王を皇后とし、その子である他戸親王を皇太子とした。

研究上も、この構図は光仁天皇を聖武天皇系の継承者として示す意味を持ったと分析されている。

江戸時代の光格天皇も、閑院宮から迎えられた傍系の天皇だった。

後桃園天皇の唯一の皇女・欣子内親王を中宮に迎え、近年の研究は、欣子内親王が光格天皇の正統性を支える役割を担ったと指摘している。

もっとも、これは「皇女との婚姻が全てを解決する」という意味ではない。

歴史上の婚姻は、血縁上の連続性を補う役割を果たし得たが、継承の安定を自動的に保証する制度ではなかった。

この視点で、現在の皇室と旧宮家の関係を見る必要がある。

久邇家では、久邇宮邦彦王の娘・良子女王が香淳皇后となった。

邦彦王は今上天皇の父方曾祖父であり、3親等の直系尊属である。

これは旧宮家系統の中で最も近い血縁だ。

賀陽家の邦憲王は邦彦王の兄であり、今上天皇から見れば5親等の傍系尊属に当たる。

朝香宮鳩彦王と明治天皇第8皇女・允子内親王の子孫は、明治天皇を共通祖先として今上天皇と6親等となる。

東久邇宮稔彦王と明治天皇第9皇女・聡子内親王の子孫も、明治天皇を通じて今上天皇と6親等である。

また稔彦王の長男・盛厚王と昭和天皇の第1皇女・成子内親王の子は、昭和天皇を共通祖先として今上天皇と4親等、父方のいとこに当たる。

竹田宮恒久王と明治天皇の皇女・昌子内親王の子孫も、明治天皇を通じて今上天皇と6親等となる。

竹田家は父系では伏見宮系の男系に属しながら、昌子内親王を通じて明治天皇の外孫につながる。

間違えてはならないのは、女性皇族を通じた血縁があることは、男系を否定しないという点だ。

男系は父方を連続してたどる線であり、皇女との婚姻による血縁は、別の線として重なる。

竹田家や東久邇家は、その典型である。

ただし、血縁の近さは直ちに皇位継承資格を意味しない。

旧11宮家は1947年に皇籍を離脱しており、現行制度では皇族ではない。

養子案も、国会の取りまとめでは旧11宮家の男系男子の子孫を対象に制度設計する方向が示される一方、養子として皇族となった本人には皇位継承資格を認めない考え方が示されている。

旧宮家養子は「ただちに皇位継承者を増やす万能策」ではない。

男系の条件だけを確認して終わりにしてよいわけではない。

男系の連続性に加え、明治天皇・昭和天皇・香淳皇后らを通じた近い血縁がどこにあるのかは、皇室との関係を国民に説明するうえで重要な材料になる。

皇室養子論は、家名の人気投票でも、単純な血筋比べでもない。

男系という原理、女性皇族を介した近い血縁、本人の意思、そして国民の理解。

この四つを切り分け、なおかつ一つの制度として整合させる必要がある。

歴史が示すのは、遠い男系を切り捨てることでも、血統だけで全てを決めることでもない。

男系の連続を守りながら、時代ごとに皇統との結び付きをどう可視化し、社会の納得につなげるか。

その知恵こそ、旧宮家養子論に求められている。

 #皇統  #女性皇族  #男系

関連資料・参考URL

・内閣官房「安定的な皇位継承に関する有識者会議報告」

・参議院「『安定的な皇位継承』をめぐる経緯」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/taii_tokurei/pdf/houkoku_20211222.pdf

https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2019pdf/20190910143s.pdf

・宮内庁「天皇系図」}
https://www.kunaicho.go.jp/about/kosei/keizu.html

・宮内庁書陵部「光格天皇宸翰 南無阿弥陀仏」
https://shoryobu.kunaicho.go.jp/Toshoryo/Detail/1000694760000

・御霊神社「井上内親王―物語・歴史」
https://goryojinja.or.jp/profile/history

・立命館大学父母教育後援会「日本の古代を築いた人びと Vol.15」
https://www.ritsumei-fubo.com/fudoki/k15

・伏見宮貞成親王(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/伏見宮貞成親王

・光仁天皇(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/光仁天皇

・光格天皇(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/光格天皇

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