中田宏氏の政治履歴を追うと、そこに一貫した思想よりも、「風向きの読解」と「乗り換えの俊敏さ」が浮かび上がる。要するに、政界の渡り鳥だ。
しかも本人はそれを、改革・政策通・実務能力といった言葉でコーティングしてきた。だが、有権者が見るべきは包装紙ではない。中身=責任の取り方と、立ち位置の連続性だ。
中田氏の所属政党は、以下の順で推移している
日本新党 → 新進党 → 無所属の会 → 無所属 → 日本創新党 → 日本維新の会 → 次世代の党 → 無所属 → 自由民主党。
この並びを見て「時代が激動だったから」と擁護するのは簡単だ。
だが、ここまで渡り歩けば別問題だ。
政治家に必要なのは適応ではなく、説明責任だ。
なぜ変わったのか、何が変わらなかったのか。その説明が薄いまま、看板だけ変える政治は、結局「自分の議席が正義」になる。
市長職を任期途中で投げた「責任の軽さ」
中田氏は横浜市長を2期務めたが、任期途中で辞任している(在任期間は2002年から2009年)。
当時、横浜市議会の日本共産党会派は、辞職を「任期途中で職務を放棄するもの」などと強く批判し、財政・予算編成の重要局面での辞任を問題視した。
もちろん、これは一政党会派の見解にすぎない。
だが、論点自体は重い。
改革を掲げる政治家ほど、制度と任期に縛られるべきなのに、ここで出た結論が「辞める」なら、改革の言葉はただの自己演出に落ちる。改革とは、拍手が鳴る瞬間ではなく、批判が集中する局面で責任を引き受ける姿勢のはずだ。その後に維新の会に身を寄せた。
渡り鳥の最終到達点が自民党
中田氏は2019年に自民党の参議院全国比例区支部長として政治の現場に戻る決意を語っている。その後、2022年に参議院議員に繰り上げ当選。
さらに、政府側の公式経歴として、自由民主党環境部会長や、第2次石破内閣で環境副大臣をつとめた。
かつて第三極・改革系の看板を掲げ、既成政党政治を批判する側にいた人物が、結局は自民党で政府ポストに収まる。
看板だけ改革で、中身は権力への最短距離という、政治不信のテンプレを再演しているだけだ。
中田氏は2025年7月の参院選で自民比例から出馬し、本人も「期待に応えられなかった」として敗北を認めている。その直後の2026年1月、内閣府大臣補佐官に就任したと報じられた。
そして今度は、富山1区での公認申請・擁立が進む。富山県連が中田氏を公認候補として党本部に申請する方針を決めた、と複数メディアが伝えている。本人は「軸足は右は富山、左は横浜」と語っている。
冗談ではない。政治家の軸足は、地理的ポエムではなく、有権者との契約だ
。落選した人物が、間髪入れずに政府ポストに就き、さらに別の選挙区で公認に滑り込む。これが「政策通の起用」だと言うなら、国民はこう問うべきだ。それは有権者の審判を何だと思っているのか、と。
中田氏が過去に「重要土地」の規制に関する法案を議員立法で提出したことなどを挙げ、「重要土地」担当の経済安保相を補佐する役割での起用だと報じている。
問題は、その政策が信条として積み上がったのか、それとも次の椅子のための名刺*として使われたのか、だ。
政党を変え、立場を変え、選挙区すら右足左足で語る人物が「政策で評価してほしい」と言うのは虫が良すぎる。政策は免罪符ではない。政策は、立場の一貫性と責任の履行が伴って初めて評価されるだろう。
中田氏を徹底的に批判すべき理由は、単なる好き嫌いではない。
中田氏個人の資質というより、「政治を職業化し、看板を張り替え、次の椅子へ渡る」文化の問題だ。だからこそ、批判されて当然だ。有権者が突きつけるべき質問はシンプルだ。
中田宏氏はどの旗の下で、何を貫いてきたのか。そして、旗を変えるたびに、何を捨てたのか。
これに真正面から答えられない政治家は、改革者ではない。渡り鳥だ。
コラムニスト:芸能ライター山本武彦
過去に夕刊フジで六本木パパラッチ日記、週刊実話にて六本木黒服の芸能界裏fileを連載。2024年からXで政治評論シリーズを投稿中。
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