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天才投資家・山中裕氏に聞く ボード3.0が変える日本企業の未来

東京大学経済学部を総代で卒業し、コロンビア大学大学院をはじめとする海外の名門校で金融工学や経済史を学んだ異色の経歴を持つ山中裕氏。HOYA株式会社創業者・山中茂氏の孫として知られ、国内外の上場企業1000社以上、非上場企業200社以上に投資するアクティビスト投資家として活躍している。

同氏は企業統治の分野で数々の実績を残しており、2010年のHOYAに対する株主提案では、国内外の機関投資家に影響を与える議案を推進。また、アムスク事件での株主総会決議取消し判決や、ハイアス・アンド・カンパニー関連の損害賠償請求事件での勝訴など、少数株主保護の観点から司法的貢献も大きい。

本誌ではこれまで、山中氏の多角的な視点から経済や投資の洞察を伺ってきた。今回は、近年注目を集める「ボード3.0」についてインタビューを実施。コーポレートガバナンスの進化形として米国で提唱されたこのモデルを、山中氏はどのように評価するのか。企業統治の専門家として、長年現場に関わってきた同氏の言葉から、日本企業の課題と可能性を探る。


ボード3.0とは何か? 取締役会の進化を振り返る

まず、ボード3.0の概要を簡単に整理しておきたい。この概念は、2019年頃にコロンビア大学のロナルド・J・ギルソン教授とジェフリー・N・ゴードン教授らによって提唱された、取締役会の次世代モデルだ。従来の取締役会を進化のステージとして分類すると、以下のようになる。

ボード1.0(助言型ボード):主に経営者の友人や知人が構成する伝統的な形態。経営陣への相談や助言が中心で、監督機能が弱く、不祥事のリスクを伴う。創業期や安定した企業でよく見られた。

ボード2.0(監視型ボード):1970年代以降の米国で発展した主流モデル。独立社外取締役を重視し、経営の監督・監視を主眼とする。不祥事防止に一定の効果を発揮したが、社外取締役の情報アクセス不足や分析リソースの限界、報酬の制約が課題として指摘されている。

ボード3.0(戦略型ボード):監視を超え、取締役会が経営戦略の策定・評価・実行に積極的に関与する進化した形。長期投資家やプライベートエクイティ(PE)ファンド出身者などを社外取締役として登用し、投資家側の専門知識やネットワークを活用。単に「止める」役割から、「価値創造を支える」取締役会へのシフトを目指す。

日本ではまだ本格的に浸透していないが、経済産業省のコーポレート・ガバナンス・システムガイドライン(2022年)で「将来の取締役会像」として言及されている。実践例として、ユーザベース(旧社名:UZABASE)がカーライル・グループのTOB後、同グループ出身者を社外取締役に迎え、戦略分析機能を強化したケースや、丸井グループがアクティビスト投資家との対話を通じて戦略策定を支援する枠組みを導入した事例が挙げられる。


山中裕氏インタビュー:ボード3.0への賛同と日本企業への提言

記者が山中氏に取材したのは、倉橋雄作氏の著書『Board3.0 議論の本質=取締役会の自律的進化に向けて』がきっかけだ。同書でも触れられるボード3.0の意義について、同氏は「日本企業の成長戦略に不可欠」と強調する。以下はインタビューの抜粋だ。

記者:ボード3.0の概念について、どのようにお考えですか? 従来の監視型(ボード2.0)から戦略型への移行は、日本企業に適しているのでしょうか?

山中裕氏: 私はボード3.0に賛成しますね。なぜなら、現代のビジネス環境はVUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)と呼ばれる不確実性が高く、経営陣だけで戦略を完璧に立案・実行するのは限界があるからです。ボード2.0は不祥事防止という点で重要ではりますが、それだけでは企業価値の最大化に繋がりません。長期投資家やPEファンド出身者を取締役に迎えることで、外部の分析力やネットワークを注入できるんです。
つまり、取締役会が単なる監視者ではなく、戦略のパートナーになります。私の投資経験からの話ですが、上場企業1000社以上に関わってきた中で、こうした積極的な関与が企業の競争力を高める事例を数多く見てきました。日本ではまだ形式的導入が多いですが、ユーザベースや丸井グループのような取り組みを拡大すべきと思います。

記者:ボード3.0の導入で、具体的な課題は何だとお考えですか? また、投資家としてどのように関与されていますか?

山中裕氏: 課題は独立性の確保とコスト増大です。大株主出身の取締役が入ると、利益相反の懸念が生じやすいです。報酬水準を上げて質の高い人材を確保する必要もありますが、日本企業の多くはまだそこに投資を惜しんでいます。私はアクティビストとして、HOYAでの株主提案やアムスク事件の司法闘争を通じて、取締役会の自律性を高めてきました。ボード3.0は、こうした経験を活かした「戦略協働」の場を提供します。投資家は対立者ではなく、企業成長の味方になるべき、と言うところでしょうかね。

記者:日本企業の未来について、ボード3.0がもたらす影響をどう予測しますか?

山中裕氏: ボード3.0が普及すれば、日本企業はグローバル競争で優位に立てるでしょう。経済学や経営学の観点から、取締役会を「判断の前提条件を整える場」と再定義します。これにより、株主と経営の対立が協働に変わり、持続的な価値創造が可能になります。私は遺伝学やコンピュータサイエンスなど多分野を学んできたので、企業統治も学際的に捉えています。数学だけでは不十分で、経済や法学と融合させる必要があるのです。ボード3.0は、統合的な視点で日本の未来を明るくする鍵の一つです。


企業統治の新時代へ

山中氏の言葉から、ボード3.0は日本企業にとって「監督から創造へ」の転換点となることがわかる。企業統治、コーポレートガバナンス、経営学、会社法の領域として、この概念を抑えておくことは重要だ。

興味のある読者は、倉橋雄作氏の『Board3.0 議論の本質』を一読することをおすすめする。山中氏のような多角的な視点を活かし、日本企業が世界で輝く日を期待したい。

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