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特集|「改憲派の」の正体―高市・麻生・神谷を結ぶネットワークと“戦前回帰 ”の危うさ


9月19日、高市早苗氏が総裁選出馬を正式表明。「連立の枠組み拡大」を示唆しつつ、給付付き税額控除の制度設計や不法滞在対策・土地取得規制の検討など、保守層に響く看板政策を並べた。少数与党化する中での政権設計と、より強硬な安全保障・移民管理の
メッセージは、改憲を軸とする右派アジェンダの 仕切り直し を告げる狼煙に見える。ここに麻生太郎氏、参政党・神谷宗幣氏の軌道を重ねて観察すると、憲法改正/国家強靭化/移民・宗教・外交観を貫く共通レイヤーが立ち現れる。本稿は、その政策線と人的ネッ
トワークを丹念にたどり、「改憲勢力」がもたらすリスクを俯瞰する。高市氏の出馬表明 内容(連立拡大・給付付き税額控除・外国人政策強化)と公約の主要点は、当日の各社報道に裏づけられる。


1|高市早苗が描く「強い政治」の設計図
高市氏は会見で、基本政策が合致する野党となら「連立政権を組むことまで考えたい」と踏み込み、少数与党局面をにらんだ政権デザインを提示した。経済面では「責任ある積極財政」を掲げつつ、所得に応じて現金給付や控除を組み合わせる給付付き税額控除の制度
設計に着手。治安・安全保障面では不法滞在対策の強化や外資系主体による土地取得規制の検討を打ち出し、支持離れが指摘される保守層の求心力回復を狙う。これらの発言と公約の骨子は、ロイター、朝日、ブルームバーグがそれぞれ確認している。
読み筋:連立拡大は、国民民主や維新が掲げる「年収の壁」見直しや副首都構想と接続可能な接点を作る一方、移民・土地・治安のキーワードで右派的アジェンダを明確化する布陣。公約の線は、のちに論じる改憲論(緊急事態時の統治運営・国土保全)とも親和的だ。


2|麻生太郎の 制度ドライブ 自民「改憲実現本部」の司令塔――
いま改憲アジェンダの「制度ドライブ」を握るのが自民党の憲法改正実現本部だ。その役員名簿では、麻生太郎氏が最高顧問として名を連ねる。組織としては、選挙困難事態に備えた国会機能維持条項などを中心に条文化の詰めを進め、緊急時の統治継続を前面に出し
てきた。高市氏の掲げる「強い政治」「国力強化」の言説は、ここで蓄積された論点の政治パッケージ化と見ると腹落ちする。
読み筋:改憲の 入口 を緊急時対応の合理化に置くのは、国民的合意を得やすい定石。だが、後述のとおり権限集中・自由制限の拡張リスクが常につきまとう。


3|「戦前回帰」をめぐる価値軸 日本会議とその周辺

改憲のイデオロギー的な背骨としてしばしば指摘されるのが日本会議だ。政府寄り・保守系の言論活動と連動し、新憲法制定/教育改革/皇室関連の保守価値の強化を掲げて国民運動を展開してきた歴史を、自らの機関誌や公式アーカイブが伝える。政治サイドでは国
会議員懇談会を通じて改憲運動の母体を支え、安倍政権期には政権中枢と近接していたことが各社の解説記事からも読み取れる。


高市氏は日本会議系の国会議員懇談会で副会長格を務めたとする経歴が広く報じられ(人物略歴の項でも触れられる)、政策・価値観の近接は周知の事実だ。こうした人脈的・理念的な地合いが、今回の出馬表明に見られる「強い政治」「国土保全」「教育・家庭観の
再定義」へと通底している。
読み筋:日本会議のフレームは、戦後民主主義の再設計を志向する**“歴史連続派 の旗印”として機能してきた。問題は、その「連続」が前近代的な同質性の強制や統治の統制強化**に傾く時、少数者の自由と市民的権利が摩耗しやすい点にある。


4|旧統一教会・勝共連合という回路
21~22年の一連の報道・国会審議を通じ、政府は国際勝共連合(IFVOC)を旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の関連団体と認定している。政治と宗教団体の接近が政策・人事・選挙運動に及ぼす影響は、いまなお検証が続く。
参政党・神谷宗幣氏をめぐっては、(1)自身の公式発信で**「統一教会の思想は保守」と位置づけた過去の言及が確認される一方で、(2)組織的な関係や支援は事実無根だと党として否定し、悪質な風説には法的措置も示唆している。また、ネット上で拡散した
「教団前で撮影した合成写真」はファクトチェックで否定**された。ここに見られるのは、思想的共鳴と組織的関係否認が併存する、現代右派運動に特有のゆらぎである。
読み筋:政策や価値観の接点(反共・家族観・反グローバリズム)がある限り、**票や運動員の「ゆるやかな流入」**は構造的に起こり得る。可視化されにくい接合部をどう透明化するかが、今後の統治の健全性を左右する。


5|「イスラエル礼賛」という符牒
神谷氏は過去、ヤマト・ユダヤ友好協会の理事を務め、同協会のイスラエル訪問企画に参加したとされる(本人言及や記録に残る)。のちに理事名簿からは名前が外れ、現在は距離を置くとみられるが、親イスラエル的な文化・宗教観への共鳴は自身の語りにも表れる。
右派ポピュリズムが国際政治で「イスラエル支持」を価値シグナルとして用いる傾向は各国で観察され、日本でも一部の保守運動がこの符牒を共有している。
読み筋:外交の価値軸が宗教・文明対立の語彙へ回収されると、内政(治安・移民・教育)における善悪二分法が強化されやすい。国内の多様性ガバナンスと緊張関係を生む点は要警戒だ。


6|三者に共通する政策レイヤー
改憲(統治の継続・権限配分の再設計)①
麻生氏を最高顧問とする自民の改憲実現本部は、緊急時の統治連続性を出発点に改憲項目を条文化する。高市氏の「強い政治」は、これと同方向の政治技術を必要とする。一方、参政党は「創憲」を掲げ、現行改憲案(特に緊急事態条項)に否定的な立場も示すが、
「自主憲法」志向という点では改憲志向の同心円に位置する。問題は、緊急時の名の下に人権制約・権限集中が常態化するリスクである。


治安・移民・国土②
高市氏の不法滞在対策強化/土地取得規制は、保守陣営の合言葉である「国土と生活の安全」を直撃する政策パッケージ。参政党も「日本人ファースト」を掲げて移民・教育・文化の同質性を重視する傾向が強い。治安の名の下に行政裁量が拡大し、差別や萎縮を生みやすい点は、海外の先行事例が警鐘を鳴らす領域だ。


教育・家族・価値観③
日本会議が一貫して推す教育改革と家族観の保守化は、戦後的価値の見直しを通じて国家個人関係を再定義する企てだ。高市氏の言説や周辺の政策論は、そこで培われた「国—柄」の語彙を踏襲する。


7|何が「危険」なのか 三つのレッドライン――
A. 緊急事態条項が 常態化 する危険
災害・感染症・有事を口実に、行政権限の恒常的な拡張と立法・司法の統制が進む。とりわけ選挙困難時における国会機能維持の条文化は必要だが、要件・期間・司法審査の厳格な限定がなければ、政治的便利装置に堕す。
B. 「安全保障」の名による弱者の可視化と排除
不法滞在対策・土地規制は、安全保障/経済安保の正統性を帯びやすい。だが運用が恣意・過剰になれば、特定国籍・民族への偏見や投資萎縮を導く。透明なデータ、公正な審査、異議申立ての実効化が不可欠だ。
C. 宗教・運動体との不透明な接合
IFVOC=旧統一教会関連団体という政府見解が示すように、政治と宗教運動の境界は政策や選挙で繰り返し曖昧化されてきた。思想的共鳴(反共・家族観)と組織的関係否認が併存する状況のもとでは、資金・動員・人事の透明化と情報開示が唯一の防壁となる。

8|提言 「強い政治」を民主主義に縛り付ける――
改憲の前提条件を法技術的に明文化
緊急事態条項は発動要件・期間・国会統制・司法審査の四点セットで限定。情報公開の即時性と事後検証の義務を憲法・法律に明記する。
移民・治安政策の人権影響評価(HIA)を制度化
土地取得規制や不法滞在対策には、差別禁止・比例原則を貫く評価様式を法制化し、第三者監視と司法アクセスを保障する。
宗教・運動体の政治関与の透明化
政党・政治家は、宗教関連団体・友好協会等との関係開示プロトコルを策定。金銭・人的支援・イベント参加を標準化フォーマットで公開し、第三者監査の枠組みを導入。


エピローグ:「保守」とは何か
高市・麻生・神谷の三者に共通するのは、 強い国家 の再設計だ。だが、強さは人権と多様性を削る力ではなく、それらを守りきるための制度的しなやかさで測られるべきだろう。
改憲は手段であって目的ではない。憲法の名の下に、国家が自由と開かれた社会に手を伸ばすとき、私たちは「どこまで許すか」を一つひとつ条文で縛り直さなければならない。
結論:改憲勢力が掲げるアジェンダは、「緊急時」を入口に権限集中/価値同質化/境界の強化へと滑走しやすい。民主主義の健全さは、透明性・限定性・救済可能性という“3つの歯止め をどれほど制度に刻めるかにかかっている。

さくらフィナンシャルニュース

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