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菊池洋一裁判官の「業」人を裁く十字架を背負う、裁判官という職業

菊池洋一裁判官─1953年生まれのベテラン。東京大学法学部を卒業し、エリート街道を歩んできた。1978年に裁判官に任官して以来、地方裁判所での勤務をはじめ、法務省出向や在外公館勤務などを経て、2013年頃には東京高等裁判所の部総括判事に就任した人物である。彼の名が刻まれた判決は、連れ去り親権争いの現場で、「15年」という歳月の重みを象徴する結果となった。

この裁判については前回の記事でも取り上げたが、今回は父親の無念さと、裁判官という職業に宿る「業」について考えたい。父親の叫びは、ただ一言「娘を返してください」だった。15年もの空白を埋めるため、手紙を書き続け、裁判所にすがり続けた末に待っていたのは、冷たい「継続性」という言葉であった。

一方で、裁判官という職業は、日々人を裁き続ける宿命を背負い、エリート意識の中で後悔を知らずに決断を重ねる。「無罪」を出しすぎれば出世の道は閉ざされ、組織の「正しさ」に忠実であることが、時に個人の悲劇を量産する。こうした十字架を、菊池裁判長のような長年の判事は、静かに背負い続けているのだろう。

15年目の絶望 「娘を返してください」と叫び続けた父親が最後に見た裁判所の冷たさ

法廷の扉が閉まる音が響いた瞬間、50代半ばの男性は放心していた。最後に娘を抱きしめたのは、娘がまだ2歳のとき。それから丸15年─。妻が突然長女を連れ去った日を境に、彼の人生は「娘を取り戻す戦い」そのものとなった。

2016年、千葉家裁松戸支部が出した判決は、まさに奇跡だった。

「連れ去りや面会拒否を繰り返した側ではなく、他方親との面会交流に極めて積極的な親を親権者とすべき」

日本で初めて明言された「寛容性の原則」である。

彼は「隔週末+連休+誕生日」で年間約100日という、父親としては異例の寛容な姿勢を示していた。裁判所はその努力を認めた。法曹界では「連れ去り被害者の希望の星」と呼ばれ、多くの父親たちが涙を流して喜んだ。

しかし、9年後のいま。東京高裁第8民事部(菊池洋一裁判長)は、わずか数ページの判決でこう書いた。

「継続性を重視する」
たったそれだけ。

15年という時間の重みも、妻が一方的に引き起こした連れ去りの責任も、父親が示し続けた圧倒的な寛容さも、すべて「継続性」という一言で消された。法廷を出た彼は、後にこう語っている。

「娘はもう、『お父さん』って呼んでくれないかもしれない」

人を裁くことを職業にした人たち

裁判官という仕事は、毎日「誰かの人生を終わらせる」決断を下す仕事だ。そして、その決断は「正しい」と信じて下される。だからこそ怖い。

彼らは司法試験を突破し、司法修習を終えて、裁判所という巨大な組織の中で生きていく。一度下した判決を後から「間違っていました」と認めることはほとんどない。なぜなら、それは自らのキャリアを否定する行為だからだ。

無罪判決を出しすぎれば「甘い」と見なされ、出世コースから外れる。逆に、世論や上層部の意向に敏感であれば、「組織に忠実」と評価される。冤罪事件が後に発覚しても、当時の裁判官が自ら頭を下げることはまずない。「当時の判断としてはやむを得なかった」で終わるのだ。

松戸支部の庄司芳男裁判官は、2016年に勇気を出した。「連れ去りは許さない」という、組織の中では異端ともいえる判断を下した。そのため、あの判決は「名判決」と呼ばれた。

しかし、東京高裁の菊池裁判長は、その火を消した。リスクを取らず、波風を立てず、無難に「継続性」で片づけた。おそらく彼にとっては、これが「正しい判断」だったのだろう。後から「父親が可哀想だった」と胸を痛めることもない。それが、裁判官という職業に長い年月を費やした者の感覚なのである。

最後に残ったもの

父親には、もう訴える場所がない。最高裁へ上告することはできるが、「15年」という継続性の壁はほぼ崩せない。長い歳月は、連れ去った側に味方した。そして裁判所はそれを「子の福祉」と呼んだ。

娘はすでに17歳、まもなく成人する。父親は、娘が自分のことをどう思っているのかさえ知る術がない。

人を裁くことを仕事にしている人たちは、今日もどこかの法廷で誰かの人生を終わらせている。そして、きっとそれを「正しい」と信じている。一方で、父親はただ、娘の声をもう一度聞きたいと願いながら、心の中で静かに泣いているのだ。それだけである。

関連記事:

“連れ去り救済”の名判決を15年後に覆した東京高裁・菊池洋一裁判長「面会100日」提案の父が再び涙

https://note.com/sakurafina/n/nc3823f033730

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