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【政治評論 ベネズエラ急襲が世界をどう変えるか】

2026年1月3日、米国がベネズエラで軍事作戦を実施し、ニコラス・マドゥロ大統領と妻のシリア・フローレス氏を拘束して米国へ移送、訴追すると報じられ現地ではカラカス周辺で爆発や停電が伝えられ、ベネズエラ政府は「米国の軍事的侵略」と非難し非常事態を宣言した。

ここで重要なのは、「この情勢が次にどんな行動を誘発するか」である。世界は道徳で動かない。派手な軍事行動ほど、直後に地味な現実が襲う。

マドゥロ氏拘束後も、ベネズエラ国内で米国が実際に統治している兆候は直ちには見えないとの報道がある一方、トランプ氏は「当面、米国が運営する」趣旨の発言をしたとも伝えられている。

治安維持、電力・物流、官僚機構の再起動、暫定政府の設計、選挙の道筋。政治は往々にして、軍事よりもこの後処理に悩まされる。軍事作戦の直後、必ず起きるのが「誰が合法政府を担うか」の争いであり反米勢力は「主権侵害」を掲げ、反マドゥロ勢力は「解放」を掲げるだろう。

だが国際政治では、理念より先にどこが治安を握るかが正統性を作ってしまうものだ。この局面で最も怖いのは、内戦そのものより、「軍・治安機関の分裂」だ。分裂すれば、抗議と衝突が増え、難民が増え、隣国が揺れる。

またベネズエラ側は国連安保理に緊急会合を求めたと報じられている。 しかし安保理が動くほど、逆説的に我々が感じるのは「止められない現実」だ。

常任理事国が割れれば、強い決議は通りにくい。言い換えれば、国連は「場」にはなっても「歯止め」にはならない可能性が高い。「止められない」という事実が広がれば、次の危機では各国がこう動くだろう。

国連に止める力がないなら先に動き「既成事実」を作る。この最も危険な連鎖が起きる可能性が高い。

今回、国際法学者らは国連憲章上の正当化が難しいと批判し、違法性を指摘している。しかし、この「既成事実」を元にしてロシアはウクライナに対し、中国は台湾に対し、これからはこう言うだろう。

「主権侵害?国際法違反?それならベネズエラはどうなんだ」

ここで重要なのは、彼らが本当に正しいかどうかではない。国内外向けに「正しい」と語れる材料が増えることが危険なのだ。国際政治はしばしば、理屈ではなく空気で決まり、空気は「前例」で作られる。

「前例は悪用される」

また懸念される「米国の国連脱退があるのでは」という議論は、いきなり国連憲章を破って出ていくというより、資金と関与を削って実質的に離れる方向で現実味を帯びるのではないか。

実際、ホワイトハウスは2025年2月に、特定の国連機関からの離脱・資金停止、国際機関への支援見直しを命じる大統領令を出している。さらに米議会には、米国の国連加盟を終了させることを目的にした「DEFUND Act of 2025」法案が存在し、米国議会サイトで内容が公開されている(政治の選択肢として置かれている事実が重い)。

今回のベネズエラ案件で国連安保理が機能不全に見えれば見えるほど、「国連は役に立たない」という物語が回りやすくなる。その結果、脱退宣言より先に、拠出金削減・協力縮小・決議軽視という実質離脱が進むシナリオが濃くなる。

ベネズエラ侵攻で幕が開いた流れが、ウクライナや台湾に直結するわけではない。だが、「前例」は、次の危機で必ず使われる。政治とは、出来事の善悪よりも、出来事が作った行動の型で決まる。

今回の急襲が作った型が「元首拘束・暫定運営・既成事実化」だとすれば、その代償は、南米の一国にとどまらないだろう。

コラムニスト:芸能ライター山本武彦

過去に夕刊フジで六本木パパラッチ日記、週刊実話にて六本木黒服の芸能界裏fileを連載。2024年からXで政治評論シリーズを投稿中。

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