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憲法裁判所の設置をなぜ今こそ憲法改正で実現すべきなのか

日本国憲法は、施行から70年以上が経過した。これほど長期間、実質的な改正なしに運用されてきた憲法は、世界的に見ても稀である。だが、その「安定性」の裏側で、私は日本の立憲主義が静かに空洞化してきたと感じている。その象徴が、憲法判断を通常裁判所に委ねたままにしている現在の司法制度である。

私は、憲法裁判所の設置を伴う憲法改正が不可欠であると考えている。
その理由は、イデオロギーではなく、制度の欠陥に基づく、きわめて実務的なものだ。

第一に、日本では「違憲審査制」が機能しているとは言い難い。
最高裁が違憲判決を出すことは極めて稀であり、しかも判断が下されるまでに長い年月を要する。その結果、明らかに憲法適合性が疑わしい法律であっても、「とりあえず施行され、既成事実化する」という状況が繰り返されてきた。これは立法府と行政府に対する司法のチェックが、事後的かつ消極的にしか働いていないことを意味する。

第二に、通常裁判所に憲法判断を担わせる構造そのものに無理がある。
民事や刑事の具体的紛争を解決する裁判官にとって、憲法判断はどうしても「余計な爆弾」になる。個別事件の妥当な解決と、国家権力全体の統制という二つの役割を同時に背負わせれば、慎重になりすぎるのは当然だ。結果として、日本の裁判所は「憲法問題には触れない」という合理的な自己防衛を選んできた。

第三に、政治の暴走を止める“即応装置”が存在しない。
緊急事態条項、行政立法の拡大、デジタル監視、課税や社会保障の設計など、現代国家は国民の権利に直接影響を与える政策を高速で実行する。ところが日本には、それらが憲法に適合しているかを迅速かつ専門的に判断する機関がない。違憲かどうかが争われる頃には、国民生活はすでに制度に縛られている。

ここで参照すべきは、ドイツやイタリア、韓国などの憲法裁判所モデルだ。

これらの国では、憲法裁判所が立法・行政を日常的に監視し、違憲な制度を明確に排除する役割を果たしている。重要なのは、これが「司法の政治化」ではなく、政治を憲法の枠内に閉じ込めるための技術だという点である。

私は、憲法裁判所の設置は「権力を縛る改革」であって、
「権力を強める改憲」ではないと考える。

むしろ、現行憲法の理念
立憲主義、権力分立、基本的人権の尊重を
21世紀の制度として本気で機能させるためのアップデートである。

憲法を守るとは、条文を神棚に飾ることではない。
守るための装置を、時代に合わせて整備することだ。

そのために、私は憲法裁判所の設置を明記する憲法改正を主張する。

これは改憲派・護憲派という二項対立を超えた、「憲法を本気で使う国」になるための提案である。

関連リンク

・ドイツ連邦憲法裁判所

Bundesverfassungsgericht – StartseiteHomepage des deutschsprachigen Auftrittswww.bundesverfassungsgericht.de

・韓国憲法裁判所

헌법재판소www.ccourt.go.kr

・イタリア憲法裁判所

Radware Captcha Pagewww.cortecostituzionale.it

・日本最高裁判所

最高裁判所www.courts.go.jp

・衆議院 憲法審査会

衆議院トップページwww.shugiin.go.jp



プロフィール
山中 裕(やまなか・ゆたか)
1976年東京都生まれ。HOYA株式会社の前身・保谷硝子創業家の孫。私立武蔵中高を経て、東京大学経済学部を総代卒業。 コロンビア大学大学院(金融工学専攻)修了。 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス(LSE)などに留学。
2007年以降、HOYAに対する株主提案を通じて、役員報酬開示や社外取締役強化などのガバナンス改革を主導。ISS・Glass Lewisから賛成推奨を獲得し、日本の株主運動の先駆者として評価される。
現在は国内外企業へ投資するアクティビスト投資家。企業統治・株主権保護に取り組んでいる。

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HOYAで骨肉の争い創業家が異例の株主提案光学機器大手のHOYAに対し、創業家の山中裕氏が経営の世襲禁止を求める異例の株主提案に踏み切った。鈴木洋…facta.co.jp

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