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ドバイを介して「バヌアツのパスポートを取得」国籍ロンダリングの実態

日本国内で犯罪に関与した人物が、多額の資金を海外へ持ち出し、逃亡や身元の再構築を目的に新たな市民権を取得する。それは映画の中の物語ではなく、実際に確認されている犯罪の一形態である。

近年、振り込め詐欺や闇バイト型犯罪の指示役が海外に拠点を置く事例が増加している。国内での摘発リスクを回避し、国外から指揮を執る構図はすでに定着しつつある。その過程で浮上しているのが「国籍ロンダリング」とも呼ばれる手法だ。新たな市民権を取得し、別のパスポートを持つことで、身元の追跡や国際捜査を困難にする。

市民権取得の方法は大きく二つに分かれる。ひとつは他人になりすますなどの不正取得。もうひとつは、各国が実施する合法的な市民権投資プログラム(CBI=Citizenship by Investment)を利用する方法である。後者は、一定額の寄付や投資を行うことで合法的に市民権を取得できる制度であり、制度自体は違法ではない。しかし、これを犯罪後の逃亡・資産隠匿の手段として悪用するケースが問題視されている。

その象徴的事例として報じられたのが、南太平洋の島国であるバヌアツのパスポート取得問題だ。

トケマッチ事件とバヌアツ旅券

高級時計のシェアリング事業を展開していた「トケマッチ」を巡る事件では、同社社長の福原敬済容疑者が国外逃亡後に逮捕され、その際にバヌアツのパスポートを所持していたと報じられた。

トケマッチは、高級時計を預かり、利用者に貸し出すことで収益を分配するとうたうサービスだったが、2024年1月に突如サービスが停止。利用者が連絡を取ろうとすると音信不通となり、預けた時計の大半が返却されない事態となった。

被害者Aさんの訴えでは、返却されたのは比較的安価な時計17本のみで、高額なロレックスなどは戻らなかったという。全体では、1700本超のうち極めて少数しか返却されず、多くの被害者は時計が戻らないまま連絡も取れない状態に置かれた。

警視庁の推定によれば、時計の時価総額は28億円超、換金実績は18億円規模。被害者は650人以上、時計は2300本以上に上るとされる。事業実態は借り手がほとんど存在しないポンジ型で、預かった時計を即座に売却し、その資金を分配金として支払っていた疑いが持たれている。

被害者の多くは「高級時計を保有しているだけではもったいない」「自動巻き式は使わなければ劣化する。使ってもらい、メンテナンスも施され、さらに収益が得られるなら合理的だ」と考えたという。シェアリングエコノミー協会の認証を受けていたことも信用材料となった。時計愛好家の心理と投資志向を巧みに結び付けたビジネスモデルだった。

その果てに浮上したのが、国外逃亡とバヌアツ旅券の存在である。合法的な寄付型プログラムを通じた市民権取得であった場合、形式上は適法であっても、犯罪捜査の観点からは追跡を一層困難にする要素となる。

ドバイ拠点と複数旅券の実態

バヌアツ旅券を巡っては、ルイスシブヤこと秋田新太郎氏に関する事例がある。融資詐欺事件で有罪判決(執行猶予付き)を受けた過去を持ち、その後も海外を拠点に活動を続けている人物だ。

バヌアツのパスポートを所持し、さらにドバイ名義、マルタ名義など複数の旅券を取得。パスポートごとに名義が異なるようだ。

元参議院議員の東谷義和氏(ガーシー)の「暴露の指示役」とされ、現在は、旅券返納命令が出ているが、日本には戻らずに多くの仮想通貨詐欺に関与している。

彼の拠点とされるドバイは、富裕層や国外逃亡者が集まる都市として知られる。法人設立のハードルが低く、資金移動の自由度が高く、実質的な税負担が軽い環境は、巨額資金を扱う者にとって極めて都合がよい。多国籍社会ゆえに身元の追跡も容易ではない。こうした制度的な土壌が、国際的な資金移動や身分の再構築を可能にしているのだ。

海外拠点化する特殊詐欺

今どきの詐欺は、海外拠点型が主流になっている。そう断言できるだけの摘発事例と捜査当局の分析が積み重なっている。最大の理由は単純だ。日本国内で活動するよりも、摘発されにくいからである。

2023年、カンボジアのリゾートホテルやプノンペンのアパートを拠点とした特殊詐欺グループが摘発された。ホテルを丸ごと借り上げ、コールセンターのように部屋割りし、かけ子や出し子を管理するなど、組織のプロフェッショナル化が進んでいた。

フィリピン拠点の「ルフィグループ」のように、海外から日本国内の強盗を指示する事件も相次いだ。2026年1月には、香港で両替店前の現金強奪事件が発生し、日本人が関与したとして逮捕されるなど、闇バイトの海外展開も顕在化している。

海外で闇バイトを募集し、実行役を日本へ送り込む「ヒットアンドアウェー型」の手口も確認されている。犯罪は拠点を越境させ、資金は国際的に移動し、場合によっては国籍すら再取得されるのだ。

国際化する犯罪と制度の隙間

振り込め詐欺、海外拠点型特殊詐欺、闇バイト強盗、国際的資金洗浄、そして国籍ロンダリング。

グローバル化は経済だけでなく、犯罪の形も変えた。パスポートは本来、国家と個人を結ぶ公的な証明書である。しかし、それが資金と結び付いて取得可能な時代において、制度の透明性と国際的監視体制は十分なのかが問われる現状だ。善良な一般市民からは、想像も出来ない世界が広がっている。

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「闇人脈」秋田新太郎と久積篤史、次々と浮かび上がる疑惑の深層

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