同一労働同一賃金を掲げながら地域格差を固定化する日本の異質さ
2025年度の最低賃金改定は、政府とメディアが「過去最大の引き上げ」「平均66円アップ」と大きく報じた。しかし、その裏で起きている事態は、むしろ逆だ。適用時期を遅らせる都道府県が14県にのぼり、労働者に本来届くべき恩恵は大幅に目減りしている。
政府が胸を張る「賃上げ実現」とは程遠く、国民生活の改善にはつながっていない。しかも、同一労働同一賃金を推進すると言いながら、最低賃金は都道府県ごとにバラバラ。世界的に見ても極めて異質な制度設計を、政府は“当たり前”として温存し続けている。
なぜ地域別最低賃金が維持され、なぜ日本だけが極端な賃金停滞と格差拡大を続けるのか──。そこには、アベノミクス以来の「金融偏重政策」「大企業優遇」「財界忖度」という、政権の根深い構造が横たわっている。
本稿では、最低賃金制度の異様さとともに、高市政権・自民党政権が抱える構造的問題を整理しつつ、日本の賃金停滞の“本当の原因”を明らかにする。
■1.「過去最大の66円アップ」は実質的に“誤魔化し”2025年度の全国平均最低賃金は 時給1121円(前年度比+66円)。
政府は「物価上昇に負けない賃上げ」と強調し、メディアも一斉に「過去最大の引き上げ」と報じた。しかし、現実は違う。
●適用時期が大幅に遅延例年10月スタートが原則だが、
10月:20都道府県
11月:13府県
12月以降:14県福島など4県は 翌年1月開始これでは年間の実質賃上げ額が激減する。
“66円アップ”とは、「年間フルで66円上がった場合の理論値」にすぎず、遅らせた分だけ労働者は損をする。
●地域間格差はむしろ拡大東京1226円に対し、高知等は1023円。その差は 203円。
同一労働同一賃金どころか、賃金格差は5年連続で拡大し続けている。「最低賃金引き上げ」の効果は、開始時期の遅延と地域格差によって大幅に薄まっている。これが現実だ。
■2.同一労働同一賃金と言いながら地域別最低賃金を放置する矛盾
日本政府は「同一労働同一賃金」を掲げてきた。しかし、最低賃金そのものが都道府県でバラバラという矛盾を抱えたままだ。
●世界では“全国統一”が常識主要国では最低賃金は“全国統一”が基本だ。
フランス:全国一律
イギリス:全国一律
ドイツ:全国一律
韓国:全国一律
カナダ:州別だが、州は日本の「省」レベルの強い自治を持つ
アメリカ:連邦最低賃金 + 州最低賃金(州は独立国に近い権力)
日本の「都道府県別」は、行政単位として世界でも例がない。
県境を1km跨いだだけで賃金が100円以上違う。
同じ仕事でも、住所が違うだけで賃金が違う。
これは同一労働同一賃金の理念に真っ向から反する。
●物価差は「言い訳」にすぎない政府がよく言う理由:
「物価が違う」
「土地代が違う」
「地方は賃金水準が低い」
しかしこれは破綻している。
地方の方が食品は高いことが多い
ネット通販は全国一律
東京の離島は土地代が都会より高くない
企業の仕入れ価格は地域差がない
公共料金・燃料費は全国ほぼ同じ
物価差を根拠にした地域格差は、経済合理性が崩れている
地域別最低賃金は、国際的には「奇形制度」であり、労働者の移動・成長を阻害する仕組みになっている。地価の問題ならば、別途、家賃補助などの対応を考えたほうが良いのでは?
■3.アベノミクスが「実体経済の賃金」を押し下げた真の理由
最低賃金がいつまで経っても上がらない理由は、アベノミクスがつくりだした「金融偏重構造」にある。
●(1)アベノミクスは“金融経済”にしかお金を流さなかったアベノミクスの三本の矢。その中核は「金融緩和」だった。だがその実態は――
日銀 → 市中銀行 → 日銀
という、ただの“資金往復”だった。企業や中小事業者、家計にはほとんど流れなかった。
●(2)市中銀行は「日銀当座預金」で儲けた日銀が巨額の当座預金に利払いするため、銀行は“貸さずに貯めるほど儲かる”という異常な構図になった。銀行は貸し渋り起業・設備投資は停滞賃金は上がらず地方は高度に疲弊アベノミクスは、金融機関を太らせただけだった。
●(3)日銀はETFを爆買いし「株高演出」日銀はETF購入で日本株の最大株主になった。
株価の上昇は、政府・メディアが“成果”として強調したが、実体経済とは無関係だ。大企業の株主=外資が利益を確定して売り抜け株価上昇の果実は労働者に届かず給料は上がらず、非正規が増えた日本史上最大の“株価だけ好景気”が作られただけだった。
●(4)GPIFの株比率を上げ、外国投資家を潤わせただけ年金基金(GPIF)の株式投資比率を大幅に増やした結果、株価は押し上げられた外資は売り抜けて莫大な利益を得た国民の賃金には何も還元されずこれが「アベノミクスの正体」だ。
●(5)“トリクルダウン”は完全に嘘だった大企業を優遇すれば労働者にも恩恵が降りてくるという理屈。しかし実際には、大企業の内部留保だけが過去最大に増加非正規雇用比率が過去最高実質賃金は30年間で最低水準物価上昇に賃金が追いつかず家計が崩壊労働者に「滴り落ちてきたもの」は何一つ無かった。
■4.法人税を下げ続け、消費税を上げ続けた30年
日本の賃金が上がらない最大原因のひとつは、税制の方向性を完全に誤ったことにある。
●法人税:30年間下げ続け1980年代:法人税率43.3%
2025年:実効税率29%前後大企業は莫大な減税メリットを享受してきた。
●消費税:逆に延々と引き上げ
1989年:3%
1997年:5%
2014年:8%
2019年:10%
消費税は弱者ほど負担が重い逆進課税。
この30年、日本は 「企業優遇」「国民負担増」 を続けてきた。
●企業利益は史上最高、賃金は史上最低
企業利益:過去最高
内部留保:過去最高
実質賃金:1990年代より下つまり、国家の“配分装置”としての税制を30年間誤り続けた結果、国民生活は破壊された。
■5.輸出大企業が太り続けた「輸出戻し税」の問題
自民党政権が財界に忖度し続けた象徴が「輸出戻し税」である。消費税は「輸出時には非課税」とする制度だが、実際には――
●「払ってない税金」が戻ってくる仕組み輸出企業は、仕入れ時に払った消費税分を“還付”される。しかし、現実には多重下請け構造のため、実際には末端の下請けが消費税を負担トヨタや大企業は「消費税を払わずに」数千億円規模の還付を受ける経団連は消費税増税を強力に推進結果、大企業だけが肥え、労働者には回らなかった。国民が払った消費税が、輸出大企業の利益として消えていく。これが日本の税制の歪みそのものだ。
■6.最低賃金が上がらないのは「これを変えないから」最低賃金を本気で上げるなら、地域別をやめ全国統一消費税減税法人税見直し中小企業への社会保険料軽減金融緩和依存からの脱却これが必要だ。しかし高市政権はこれらに手を付けず、むしろアベノミクス路線を継承する姿勢を見せている。金融緩和で株価を維持し、財界と外資が利益を得る構造を温存しながら、
国民には「努力」「自助」を求める。
その中で、最低賃金だけを“数字上”引き上げても、国民生活は改善しない。
●最低賃金は本来、賃金政策の“出口”である賃金の源泉は、技術投資生産性向上設備投資
中小企業支援
税制の再配分
実体経済への資金供給
最低賃金とは“結果”であり“最終値”だ。
そこだけを上げても、構造を変えなければ国民は貧しくなるだけである。
■7.高市政権の本質:アベノミクスの失敗を継承し続ける高市政権は、「過去最大の賃上げ」を誇示
「物価に負けない賃上げ」
「成長と分配」などのスローガンを掲げるが、その内実はアベノミクスと完全に連続している。
●本質は「財界と外資の利益確保」
輸出戻し税
株価維持のための金融緩和
法人税減税
直接税依存から消費税・社会保険料への転換
これらの政策の“負担”を背負ってきたのは、すべて日本の労働者だ。
●最低賃金の遅延もこの延長線上にある適用時期が遅れる理由として「企業への配慮」が挙げられる。
ここにも、経団連への忖度が確実に潜む。国民生活よりも企業利益を優先する政治が、最低賃金の地域格差と遅延を生んでいる。
■8.日本は「低賃金国家」として固定されつつある
実質賃金:30年前より低い
税負担:過去最高
社会保険料:過去最高
賃金水準:OECD最下位圏1人あたりGDP:ついに韓国に抜かれた
労働生産性:世界30位以下
貧困率:先進国で最悪レベル最低賃金の遅延と地域格差は、この現象の“末端”にすぎない。
問題の根本は、政治が30年間にわたり国民ではなく企業利益を最優先してきた構造だ。
■9.必要なのは「全国統一最低賃金」+「本格的な再配分」
今日本に必要なのは、スローガンではない。構造改革だ。
●最低賃金:全国一律1500円を目標地域差を無くし、全国どこでも暮らせる国家へ。
●消費税:5%へ減税(または生活必需品は無税)可処分所得を増やす。
●法人税:内部留保に課税滞留した富を賃金へ循環させる。
●社会保険料:中小企業の負担軽減最低賃金引き上げとセットで行うべき。
●金融緩和の出口戦略株価維持のための国民負担をやめる。
●実体経済への直接投資IT化支援中小企業の設備投資支援地方のインフラ教育投資科学技術投資これらを同時に進めて初めて、最低賃金の引き上げが“本物の賃上げ”となる。
■10.まとめ:最低賃金は「社会の健康状態を測る体温計」
最低賃金とは、最も弱い立場の労働者の賃金であり、
国民の生活水準を映す“体温計”だ。今回の「過去最大66円」という見せかけの数字は、体温計に細工をして“熱が下がったように見せる”ようなものだ。実際には、
物価は上昇実質賃金は下落
地域間格差は拡大
適用時期は遅延
国民の生活は苦しくなり続けている
高市政権が掲げる「賃上げ」の多くは、数字上のマジックに過ぎず、国民の生活改善にはつながっていない。日本が低賃金国家から抜け出すためには、
アベノミクス以来続く「金融偏重」「大企業最優先」「地域格差温存」の政策を根本から見直す必要がある。最低賃金の遅延は、単なる“スケジュールの問題”ではない。
この国の経済政策が、誰に向いているのか──その答えが表れている現象そのものだ。
さくらフィナンシャルニュース
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