漫画家のつげ義春氏が2026年3月3日東京都内の病院で亡くなった。死因は誤嚥性肺炎。
筑摩書房が3月27日に発表したところによると、つげ氏は2025年の9月頃から体調を崩していたという。
葬儀は親族のみで2026年3月9日に執り行われた。
筑摩書房は彼の月刊『ガロ』(今はなき青林堂)掲載後の作品を扱い、代表的な全集や文庫コレクションを積極的に保存、普及に貢献した出版社である。

筑摩書房の公式より
遺族は「公の場に出ることを好まず、静かに暮らしていた父でしたが、家では毎日家族と食卓を囲む、家族想いの人でした」とコメントした。
数々の名作 漫画界の歴史に名を刻む漫画家の1人と言える。
手塚治虫が立ち上げた『COM』か、白土三平、つげ義春『ガロ』か。
この問いかけは、1960年代後半の漫画史における二大潮流の対比としてよく挙げられる。
多くの人々に受け容れられる商業漫画か、作者の世界観に任せるオルタナティブな漫画か。当時の漫画界で実際に「COM派」と「ガロ派」に分かれるほどの象徴的な対立があった。
後者に位置するつげ氏は、シュールで幻想的かつ、独特の作風が特徴の孤高の漫画家として知られ、その殆どが短編作であるのにもかかわらず、特に漫画愛好家や評論家、多くの漫画家に高い評価を受け影響を与えた。
夢と現実が交錯する独特な世界観、実験的な試み、文学的な深み、細やかな筆致が魅力で、国内外に根強いファンを生み出した。
1965年頃から『ガロ』誌(今はなき青林堂)で発表されたものが多く、少年漫画の枠を超えた前衛性・芸術性で「つげブーム」を引き起こした。
夢幻譚から、貧困や旅を題材にしたリアリズム作品まで、幅広い表現で日本漫画史やアートワーク、文学会にまで大きな影響を与え続けている。
代表作の一部を紹介
代表作は主に石井輝男監督によって実写化されている。
✦『ねじ式』(1968年)—— つげ氏の代名詞とも言える不条理で非現実的な短編作品。発表当時、社会現象を巻き起こし、漫画の表現領域を広げたと評されている。メメクラゲに腕を噛まれた主人公のコマは多くの漫画でパロディ化されている。浅野忠信主演で1998年映画化。
✦『李さん一家』(1967年)田舎暮らしを始めた主人公が借りた家の二階に居候し始めた在日朝鮮人の李さん一家。四人との奇妙な日常。「実はまだ二階にいるのです」のラストは、これもまた有名なひとコマである。
✦『紅い花』(1967年)——少女が初潮を迎えて大人になることの隠喩である。 夏の日の少年と少女を描いた抒情的な名作。海外でも高く評価。1997年NHK BS2で石井監督によりドラマ化
✦『ゲンセンカン主人』(1968年)——前世・因果・輪廻の影が揺らめく、つげ義春の極めて日本的な幻想譚。ドッペルゲンガーと奇妙な心理的体験を描いたオカルト的な作品だ。
✦『無能の人』(1985)—— 日常の無力感や哀愁をリアルに描いた作品である。『COMICばく』連載。読切短編の多いつげ作品としては異例の連続シリーズとして知られる。1991年、竹中直人が監督、主演で映画化。
1993年に石井輝男監督により『つげ義春オムニバス ゲンセンカン主人・李さん一家・赤い花・池袋百点会』自らもつげファンという佐野史郎主演で実写映画化された。
つげ氏は1937年、東京・葛飾区生まれ。
幼少期に父を亡くし、貧しい環境で育つ。
小学校卒業後、メッキ工場などで働きながら漫画家を志し、1955年に貸本漫画でデビュー。
特別な教育を受けたわけではないにもかかわらず、独自の美学、文学性を備えた漫画作品を世に生み出し、その才能は高く評価された。
以降は寡作ながらも比類なき質の高い作品を発表し、漫画を芸術の領域にまで高めた存在として「つげ作品」の名を広く知らしめたが、『COMICばく』連載終了後の1987年以降は長期の休筆期に入っている。
その作風は、日本の古典文学やエドガー・アラン・ポーの作品などの影響がみられるが、最終的にはつげ氏自身の夢想世界を源泉として、独自のイメージとして結実したものである。
つげ義春
“Garo”: The Experimental Magazine That Took Japan’s Manga to a New Artistic Level
https://www.nippon.com/en/japan-topics/b11506/
つげ義春を悼む 里中満智子、秋本治が語る「アウトサイダーの旗手」
https://www.asahi.com/sp/articles/ASV3W34HRV3WUCVL02LM.html
雪舟、等伯、若冲よりも…つげ義春は「大切な存在」 山下裕二さん
https://www.asahi.com/sp/articles/ASV3W369JV3WUCVL002M.html
漫画家つげ義春さん死去、88歳…「ねじ式」「紅い花」で国際的にも高評価
https://www.yomiuri.co.jp/national/20260327-GYT1T00365/
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