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クラリベイト引用栄誉賞(経済)シリーズ記事|ジェームズ・A・ロビンソン

 1 章 序―世界が注目する「制度が運命を決める」頭脳

ジェームズ・A・ロビンソンは、国家の繁栄と衰退を“制度”の違いで説明する政治経済学の旗手である。技術や資源だけでは豊かさは持続しない。誰がルールを作り、誰がそれを監視し、誰がその恩恵を受けるのか―その設計(制度)が、成長率から格差、紛争までを左右する。

ロビンソンは長期の歴史資料と実地調査、計量分析を束ね、包摂的(inclusive)な制度が多くの人に参入と所有の権利を開くとき、はじめて創意と投資が継続することを示した。

第 2 章 原点―幼少期と学問の出発点

英国に生まれ、政治・歴史・経済を横断して学ぶ。早くから「地理や文化の固定観念ではなく、変えられる“ルール”が運命を分ける」という問題意識を持ち、やがて制度を計測し因果を問う政治経済学へ。

アフリカ、中南米、南アジアなどでのフィールドワークを重ね、現場の制度運用と歴史的経路依存性を直接観察する姿勢を確立した。以降、長期史・現場・統計を一体化した研究スタイルが、彼の代名詞となる。

第 3 章 核心―研究の中核理論と主張

(1) 包摂的 vs. 収奪的制度

包摂的制度は財産権の保護、法の支配、広い参入、権力の分立を通じて発見と投資を誘発する。対して収奪的制度は少数が支配し、参入を塞ぎ、成果を取り上げる。同じ技術・資源でも、制度が違えば軌跡は分かれる――これがロビンソンの第一命題である。

(2) クリティカル・ジャンクチャー(分岐点)と経路依存

疫病、戦争、革命、資源発見などの歴史的ショックは、権力配列を変え、制度の方向を別の均衡へ押し出す。いったん走路が定まると、既得権と信認が補強し合い、制度は持続する。だからこそ、改革は分岐点の窓を捉える必要がある。

(3) 「細い回廊」と拘束されたリヴァイアサン

強い国家は開発の前提だが、社会からの抑制がなければ専制に堕ちる。国家の能力と市民社会の力が拮抗し、相互に拘束し合う“細い回廊”に入るとき、自由と秩序が両立する。ロビンソンはこの緊張関係を動学的に描き、単純な「国家強化」論や「小さな政府」論を超える設計原理を与えた。

(4) 身分・部族・地域――アイデンティティの政治経済

国家の境界とアイデンティティのずれは課税・治安・公共財供給を歪める。ロビンソンは 、局所の権威と中央の制度の相互作用を重視し、一律の制度移植が失敗する理由を理論化した。

第 4 章 挑戦―既存理論との対立と革新

地理決定論や文化決定論は、豊かさの差を“変えられないもの”に帰す。ロビンソンは、歴史比較と自然実験を駆使し、制度は選択であり設計できると反証した。
他方で、制度を「測る」難しさ、因果の同定、国内の多層ガバナンスの異質性といった批判にも向き合い、事例の厚み×統計的厳密さで応答してきた。核心は一貫している。ルールが人を変え、軌跡を変える。

第 5 章 波及―政策・社会への影響

国家能力の再設計:徴税・司法・統計の基盤整備が成長の前提条件であることを明確化。

権力分立と説明責任:強い国家に強いカウンターパワーを組み合わせる制度設計(独立規制、監査、選挙制度)。

包摂的成長戦略:参入障壁の撤廃、競争政策、金融アクセス拡大、教育投資の広域化。

紛争・資源の呪い:資源収入は統治の質を悪化させうるため、透明性・配分ルールが決定的。

分権の賢い設計:地域の自律を尊重しつつ、腐敗と分断を抑える標準と監督を併設。

第 6 章 展望―現在の研究と今後の課題

AI・データ・プラットフォームの統治
民間プラットフォームが準公共インフラ化する中、私的権力の統治と公共目的を両立させる制度が必要。

気候移行と国家能力
脱炭素は長期投資・規制・補償を伴う。国家の能力(計画・実装・説明責任)を高めなければ、移行は不公平になり、反発で頓挫する。

都市ガバナンスと包摂
都市は機会と排除が同居する最前線。住宅、交通、治安の制度デザインが人的資本の動員を左右する。

脆弱国家と回廊への復帰
治安と司法の“最初の一里”を回復し、信頼の閾値を越えるための最小制度バンドル(識別 、課税、記録、紛争解決)の設計。

第 7 章 結 ―「制度は設計できる、未来もまた」
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ジェームズ・A・ロビンソンが教えるのは、豊かさは偶然の副産物ではなく、社会が合意して作る制度の成果だということだ。
包摂か収奪か。拘束された国家か無拘束の権力か。分岐点での小さな選択が、世代を超える軌跡を決める。

だから私たちは、測り、学び、設計し直すことができる。
制度を変える力は、政治にも、市民にも、企業にもある。ロビンソンの政治経済学は、その力を理論と証拠と設計で支えるための地図である。

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