注目の記事 PICK UP!

大阪万博は「黒字」で終わったのかそれでも消えないIR・外資・政治の構造的リスクをめぐって

はじめに
「黒字」という言葉が、すべての議論を止めてしまうとき

大阪・関西万博をめぐる議論は、ある時点から急速に単純化した。
「運営費は黒字だった」
「だから成功だ」
「反対していた人たちは間違っていた」

こうした言葉が、まるで最終判決のように流通し始めたからだ。

しかし、ここで一度立ち止まる必要がある。
万博が仮に運営費ベースで黒字だったとして、それは何を意味し、何を意味しないのか。
そして、万博が終わったあとも同じ場所――夢洲――が、IR(統合型リゾート、事実上のカジノを含む施設)として使われ続けるという前提に立ったとき、私たちは何を検証し、何を問い続けるべきなのか。

本稿は、

万博の黒字報道を否定するための記事ではない

かといって、それを免罪符として受け入れる記事でもない

あくまで、

「黒字で終わったから問題はなかった」と結論づけるには、あまりにも多くの論点が未整理のまま残されているのではないか

という問題意識に基づくものである。

第1章
万博の「黒字」とは、どこまでの話なのか
1-1 「黒字」という言葉の射程

まず確認すべきなのは、「黒字」とはどの会計の黒字なのかという点である。

報道で使われている「黒字」は、多くの場合、

万博協会が管理する運営費会計
に限定されたものである。

運営費とは、

会期中の運営
イベント実施
人件費
警備
物販・チケット収入
などを含む、いわば「イベントとしての万博」を回すための費用だ。

この枠内で、

チケット販売
公式グッズ
協賛金
などが好調だった結果、黒字見通しが立ったと説明されている。

ここまでは事実として受け止めてよい。

1-2 黒字が意味しないもの

しかし同時に、以下の点も冷静に確認しなければならない。

会場建設費は別会計である
インフラ整備費(道路・鉄道・港湾等)も別枠である
安全対策・警備の一部は公費負担である

つまり、
運営費が黒字だった=万博全体が黒字だった、とは言えない。

これは万博に限らず、大型国際イベントではよく見られる会計構造だ。
だからこそ問題なのは、「黒字」という言葉が、
どこまでの話なのかを説明しないまま、政治的評価として使われてしまうことにある。

第2章「黒字ならOK」という空気が生む、思考停止
2-1 成功ストーリーの政治的効用

「成功した」という物語は、政治にとって非常に都合がよい。

予算超過の議論が終わる
責任の所在が曖昧になる

次の計画(今回はIR)に進みやすくなる

特に万博のような国家的・都市的イベントでは、
成功か失敗かという二分法が使われがちだ。

しかし、現実はもっとグラデーションがある。

運営は回ったが、コストは膨らんだ

イベントは成立したが、恒久利用には別の問題がある

一部は評価できるが、別の部分は再検証が必要

こうした中間評価こそが、本来は必要なはずだ。

2-2 「反対派は間違っていた」という短絡

万博に慎重だった人々の中には、

財政負担
災害リスク
立地の特殊性
万博後のIR計画

といった点を懸念していた層がいた。

だが「黒字」という言葉が出た瞬間、
それらすべてが無効化されたかのような言説が出回り始めた。

ここには注意が必要だ。

万博が黒字だったとしても、
その懸念の多くは「未来の話」だからである。

第3章 万博後も使われ続ける「夢洲」という場所
3-1 夢洲は、万博のためだけに使われる土地ではない

大阪・関西万博の会場である夢洲は、
当初から「万博が終わった後の利用」が強く意識された土地だった。

その最たるものが、
IR(統合型リゾート)構想である。

万博は半年程度の期間限定イベントだが、
IRは数十年単位で稼働する恒久施設になる。

つまり、
万博の評価は、
「半年間をどう乗り切ったか」だけでなく、
「この場所を恒久利用する前提として適切だったか」
という視点からも行われる必要がある。

3-2 人工島という立地の特性

夢洲は人工島である。
これは事実であり、善悪の問題ではない。

しかし人工島である以上、

アクセスルートが限定される
地盤や地下構造が特殊である
災害時の避難計画が複雑になる

といった構造的制約を抱える。

万博期間中は、

臨時の交通計画
臨時の警備体制
臨時の人員配置

によって対応することができた。

だがIRは、

毎日稼働
夜間も集客
飲酒・ギャンブルを伴う

という、まったく異なる運用形態を前提とする。

ここに、新たなリスク評価が必要になる理由がある。

第4章 安全対策は「終わった話」なのか
4-1 工事中に起きた出来事が示すもの

夢洲の会場整備をめぐっては、
建設工事の過程で、
地下空間にガスが滞留する可能性が指摘された。

実際に、

工事中の施設でガスに引火する事故が起きた
継続的なガス測定が行われた

といった事実が公表されている。

これらは、
「危険だ」と断定する材料ではない。
同時に、
「完全に問題は解消された」と断言できる材料でもない。

重要なのは、
こうした特性を持つ土地で、
恒久的に多数の人が滞留する施設を運営することの妥当性である。

4-2 万博とIRでは「許容できるリスク」が違う

万博は、

期間限定
国家主導
臨時体制

という条件のもとで行われた。

一方、IRは、

常設
民間主導
採算性重視

という条件になる。

同じ土地であっても、
許容されるリスクの水準は異なる。

ここを混同して、
「万博で問題なかったからIRも大丈夫」
と短絡するのは、慎重さを欠く。

第5章 「孤立リスク」という現実的な問題
5-1 混雑と事故と災害は、同時に起きる

夢洲は、

鉄道
橋梁
幹線道路

といった限られたアクセス手段に依存している。

平常時には問題がなくとも、

大規模イベント
交通事故
台風・地震

が重なった場合、
人の流れが一気に滞留する可能性がある。

これは陰謀論でも過剰な想像でもない。
構造上の問題である。

5-2 万博では回避できたが、IRではどうか

万博では、

入場制限
時間調整
臨時輸送

といった手段で、
ピークをコントロールすることができた。

しかしIRでは、

利益を最大化するために集客を抑えにくい

夜間帯にピークが来る可能性
飲酒による行動制御の難しさ

といった要素が加わる。この違いを無視して、
万博とIRを同列に語ることはできない。

第6章 IRは「外資に富を奪われる」のか 議論を整理する
6-1 外資が入ること自体は珍しくない

IR事業に外資が関与すること自体は、
国際的には珍しいことではない。

日本の他産業でも、

製造業
IT
金融
など、外資が重要な役割を果たしている分野は多い。

したがって、
「外資=悪」と単純化するのは適切ではない。

6-2 問題は「収益構造」と「交渉力」

本当に問われるべきなのは、

誰がどれだけ出資し
誰がどれだけのリスクを負い
誰がどれだけのリターンを得るのか

という契約と構造である。

IRは、

カジノ収益
ホテル
会議場
商業施設

など複数の事業から成り立つ。

その中で、

運営ノウハウ
ブランド
システム

が海外企業側に集中する場合、
収益の相当部分が国外に流れる可能性は否定できない。

これは断定ではなく、
一般論として起こりうる構造の話である。

第7章 撤退条項と「リスクの非対称性」
7-1 民間は撤退でき、公は残る

大型公共事業と民間事業が組み合わさる場合、
よく問題になるのがリスクの非対称性である。

民間企業は、条件が悪化すれば撤退できる

公共側は、土地やインフラが残る

IRに関しても、
一定条件下で事業者が撤退できる条項があるとされている。

これ自体は、
民間投資を呼び込むためには珍しいことではない。

だが、
撤退した後のリスクを誰が負うのか
という点は、常に検証が必要だ。

第8章 維新の会と「改革」の系譜
8-1 維新は「改革政党」として支持を集めてきた

日本維新の会は、

行政改革
民営化

規制緩和

を掲げて支持を拡大してきた。

大阪においては、

万博
IR
といった大型プロジェクトを推進する中心的存在でもある。

この点で、
維新がこれらの事業に強いコミットメントを持つことは事実だ。

8-2 与党化によって変わる責任の重さ

近年、維新は国政においても、
与党に近い立場で政策に影響を与える存在になっている。

これにより、

「改革を主張する側」から
「結果に責任を持つ側」

へと立場が変わりつつある。

その分、
大型プロジェクトに対する説明責任と検証責任は重くなる。

第9章 竹中平蔵氏をめぐる「疑惑」という言葉の扱い方
9-1 個人を断罪することは目的ではない

一部で、
竹中平蔵氏と万博・IR・維新の関係について、
さまざまな疑念が語られている。

ここで重要なのは、
個人を断罪することではなく、
「疑惑が生じやすい構造そのもの」を見ることである。

9-2 政策と民間の距離が近いときに起きること

一般論として、

政策決定に影響力を持つ人物
民間企業とも関係を持つ人物

が存在する場合、
たとえ違法行為がなくても、
利益相反ではないか、という疑念が生じやすい。

これは竹中氏個人に限らず、
多くの国・多くの分野で繰り返されてきた問題だ。

だからこそ重要なのは、

透明性
情報公開
第三者チェック

であり、
「疑念が生じない制度設計」を行うことにある。

第10章 万博の「黒字」は、議論の終点ではない

万博が運営費ベースで黒字だったとしても、
それは評価の一要素にすぎない。

夢洲という土地の恒久利用

IRという事業の特性
外資を含む収益構造
災害・孤立リスク

政治と事業の距離これらの論点は、
万博が終わった後こそ、本格的に問われる。

黒字で終わったからといって、

危険性が消えるわけでも
疑念が晴れるわけでも
検証が不要になるわけでもない。

むしろ、
「成功した」という空気の中でこそ、
冷静な検証が必要になる。

さくらフィナンシャルニュース

YouTube
https://www.youtube.com/@sakurafinancialnews

公式X
https://x.com/sakurafina0123

公式note
https://note.com/sakurafina

関連記事

  1. 【深田萌絵涙の訴えから晴天街宣演説 萩生田光一の妨害に負けぬと丸1日街頭パフォーマンス 】

  2. 日本の司法は、未だに独立していないのでは?J・マーク・ラムザイヤーの「日本における司法の独立を検証す…

  3. 【2024最新】賃金見直しでいくら時給が上がったのか?

  4. 【異端系格闘YouTuber 便所太郎新曲リリース『非情成れ』あのご当地対決ギャグ映画『飛んで埼玉』…

  5. 【電動キックボードシェアLUUPの闇に溝口勇児あり】

  6. 【スクープ】 「ノーリスク」と甘言を弄した暗号資産詐欺の実態

  7. 【カルト政党NHK党信者が起こしたすすきの爆発事件 重傷の犯人『ヒロゆき』とは?】

  8. 弁護士法人浜田卓二郎事務所が負債総額5億円で破産、元衆議院議員で出光興産創業家の元代理人

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP