第 1 章 序―世界が注目する「制度と技術の設計者」
ダロン・アセモグルは、国家の制度と技術変化が、成長・雇用・格差・民主主義をどう形づくるかを一体で解き明かした経済学者である。
彼は政治経済と成長理論、産業組織、労働経済を横断しながら、包摂的な制度が創意と投資を引き出す仕組み、そして技術の方向性が賃金分配や機会に及ぼす影響を定式化した。
要するに、ルール(制度)とエンジン(技術)の設計いかんで、経済の航路はまったく違う―それがアセモグル経済学の出発点である。
第 2 章 原点―幼少期と学問の出発点
1967 年生まれ。若い頃から「なぜ国によって豊かさがこんなに違うのか」という古典的難問にとりつかれ、歴史・政治・法と経済の交差点に関心を広げた。
研究初期は雇用・賃金のミクロ構造に迫り、やがて国家能力・所有権・参入の自由といった制度の質が、技術採用と成長の基礎条件を決めるという着想に至る。
以後は共同研究を重ね、制度の比較史と実証計量、理論モデルを往復しながら独自の体系を築いた。
第 3 章 核心―研究の中核理論と主張
(1) 包摂的制度と収奪的制度
包摂的(inclusive)制度は財産権の保護、法の支配、広い参入、政治的競争を伴い、多数の人が投資・起業に参加できる土台をつくる。
収奪的(extractive)制度は少数の利害に資源を集中させ、技術採用や人材投資の誘因を損なう。
同じ技術・資源でも、制度が違えば長期の軌跡が分岐する――この制度観が、国家の繁栄と衰退の説明軸になった。
(2) 方向づけられた技術変化(Directed Technical Change)
技術は中立ではない。どの技能・どのタスクを強化するかという方向性を持つ。
市場規模や相対価格、制度的誘因によって、技術は技能補完的にも自動化偏重にも進む。
その結果、賃金格差や雇用構成は技術の 量“だけでなく” 方向 によって決定的に変わる。
(3) ルーティン・バイアスと自動化の政治経済
IT・ロボティクスは反復的タスクの自動化を先導し、中間技能の雇用を圧迫しやすい。
しかし、自動化が常に厚生を押し上げるわけではない。「そこそこ自動化」が生産性を大きく高めないまま雇用需要だけを削る場合、賃金停滞と分配悪化が生じる。
鍵は、新タスクの創出と人間能力の補完を促す方向に技術を導くことだ。
(4) 国家能力・ガバナンスと成長
徴税、司法、インフラ、教育――国家能力が弱いと、よい制度も実装できない。
アセモグルは、国家の強さと市民の制約が均衡する設計を重視し、汚職・捕捉・エリート支配を抑えるメカニズムを政治経済学の言語で定式化した。
第 4 章 挑戦―既存理論との対立と革新
古典的な成長論は、技術進歩を外生の“贈り物”として扱いがちだった。
アセモグルは、技術は制度と利害の中で“方向づけられる選択”だと転換し、分配と技術の同時決定を主筋に据えた。
また、地理や文化の固定要因に過度に依存する説明に対し、制度の変化と政治の競争が経路を変えることを、歴史比較と実証で示した。
理論の美しさだけでなく、実装に耐える制度設計へ踏み込む姿勢が特徴である。
第 5 章 波及―政策・社会への影響
産業・イノベーション政策:人間を補完する方向の技術投資(人材育成、現場補助 AI、相互運用性、標準化)の重要性を提示。
労働市場・教育:中間技能の再武装(リスキリング、職業教育)と新タスク創出を結ぶ政策設計。
ガバナンス改革:公共調達・競争政策・独占規制・ロビー活動の透明化など、捕捉を防ぐ制度の整備。
グリーン転換:価格と規制に加え、クリーン技術への方向づけ(研究開発・ネットワーク投資)を組み合わせる設計。
デジタル監督:データ権、プラットフォームの開放性と相互運用性、アルゴリズム監査など、包摂的デジタル制度の骨格。
第 6 章 展望―現在の研究と今後の課題
AI の社会的方向づけ
生成 AI・自動化を人間補完型へ誘導するルール(データアクセス、標準、責任の割当、評価ベンチマーク)。
国家能力の再設計
脱炭素・安全保障・高齢化に耐える実装能力(統計・デジタル政府・監査)の強化と、市民側の説明責任装置の両立。
包摂的成長のメトリクス
GDP だけでなく、新タスク雇用・賃金分布・参入率・起業活力を組み込んだ評価指標の確立。
地政学とサプライチェーン
制度の相互依存を踏まえた信頼できるネットワーク設計(基盤技術・半導体・エネルギー)と、開放性の最適化。
第 7 章 結― 「制度が技術を、技術が社会を作る」
アセモグルが示したのは、制度と技術は別々に語れないという事実である。
包摂的な制度が人の参加と創意を広げ、方向づけられた技術が生産性と公正を同時に押し上げる。
逆に、捕捉された制度と誤った方向づけは、格差と停滞を生む。
だからこそ、私たちは設計できる。 透明なルールを整え、— AI を人間補完へ導き、新しいタスクと機会を開く。
「制度が技術を、技術が社会を作る」―― この往復運動の舵を取ることこそ、次の時代の経済学と政策の使命である。
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