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【企業法務・ガバナンス】HOYA、株主代表訴訟を巡る開示

― 2016年自己株取得の分配可能額超過が争点、元取締役ら7名に損害賠償請求 ―

HOYA株式会社(東証プライム・7741)は2026年2月24日、同社株主1名により株主代表訴訟が東京地方裁判所に提起されたことを開示した。同社は2026年2月19日付で訴訟告知書を受領したとしている。本件は、過去の自己株式取得をめぐる会社法上の責任を問うものであり、企業法務およびコーポレートガバナンスの観点から注目される。

■訴訟の概要

発表によれば、原告は同社株主1名。被告は、

元取締役兼代表執行役1名
元社外取締役5名
現取締役兼代表執行役1名

の計7名とされる。

争点となっているのは、2016年2月16日の取締役会決議に基づき、同年4月8日までに実施された総額300億円の自己株式取得のうち236億2,400万円である。原告側は、この取得が会社法および会社計算規則に基づく分配可能額を超過する違法なものであったと
主張している。

請求の根拠として、

会社法462条1項に基づく填補責任
会社法423条1項に基づく任務懈怠責任

が挙げられており、被告らに対して同額および遅延損害金を会社へ支払うよう求めている。

■分配可能額規制と資本政策

会社法上、自己株式取得は剰余金の分配と同様の性質を持つため、分配可能額の範囲内でのみ実施できるとされる。分配可能額は計算書類を基礎に一定の算定式で導かれるものであり、資本維持原則の観点から厳格な制約が設けられている。

本件では、2016年当時の取締役会による意思決定プロセスや財務計算の妥当性が審理の焦点となる可能性がある。具体的には、

分配可能額の算定方法
取締役会における審議・判断過程
財務情報の検証体制

などが争点として整理されることが想定される。

自己株取得は近年、日本企業において株主還元策として一般的に採用されている一方、法的な分配可能額規制との関係は企業法務上の重要論点となっている。

指名委員会等設置会社における監督責任

HOYAは指名委員会等設置会社であり、経営執行と監督機能の分離が制度上想定されている。本件では元社外取締役5名も被告に含まれており、監督機関としての社外取締役の注意義務・監督義務の範囲がどのように評価されるかが企業統治実務上の論点となる。

資本政策に関する意思決定は取締役会の重要事項であり、社外取締役がどの程度まで財務的前提や法的適合性を検証すべきかについては、近年の株主代表訴訟でも議論が蓄積されている領域である。

会社側の対応と開示

同社は会社法第849条第5項に基づき電子公告を実施し、令和8年(ワ)第70053号として東京地方裁判所に訴訟が提起された旨を公表した。

開示では、本件は株主が役員個人に対して責任追及を行うものであり、現時点では同社の業績に影響を及ぼすものではないとの見解を示している。今後、開示すべき事項が発生した場合には速やかに公表するとしている。

株主代表訴訟制度と企業統治への示唆

株主代表訴訟は、会社が役員に対する責任追及を行わない場合に、株主が会社に代わって損害賠償請求を行う制度である。日本では1990年代以降、株主権の強化やガバナンス改革の流れの中で活用が進んできた。

本件は過去の資本政策に関する意思決定をめぐり、役員責任の範囲や社外取締役の監督機能の実効性が改めて問われる事例となる可能性がある。自己株式取得という一般的な株主還元策であっても、法的枠組みとの整合性が重要であることを示すケースとして、今後の審理の進展が注目される。

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