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【特集】石破氏はガザでイスラエルを断罪したそれでも高市氏・小泉氏は、なぜイランで米国とイスラエルに踏み込めないのか伊勢崎賢治氏の“正論”が暴いた、日本外交の二重基準対米従属のままでは、日本に「本当の外交」はできない

さくらフィナンシャル 編集部

国家が戦争を語るとき、本当に問われるのは兵器の数ではない。

どんな言葉で戦争を裁くのか。誰に対しては「国際法」を振りかざし、誰に対しては「状況が違う」と言葉を濁すのか。その一貫性こそが、その国の外交の本質を映し出す。

いま日本政治のなかで、その矛盾を最も鋭くあぶり出したのが伊勢崎賢治氏の国会質疑だった。しかもこの質疑が重かったのは、単なる政府批判ではなく、石破茂氏、高市早苗氏、小泉進次郎氏の違いを「国際法を誰に、どう適用するのか」という原則の問題として可視化したからである。

まず、ここは曖昧にしてはいけない。

ガザでイスラエルを明確に批判したのは石破氏である。2025年9月の国連総会一般討論演説で、石破首相はイスラエル軍によるガザ市での地上作戦拡大について、「断じて容認できず、この上なく強い言葉で非難」し、「作戦の即時停止」を求めた。これは、日本の首相が米国に近いイスラエルに対し、国連の場でかなり踏み込んだ言葉を使ったという点で重い意味を持つ。

つまり、日本政府は少なくともガザについては、「友好国側に近い相手」であっても、人道危機と民間人被害を理由に強い言葉で批判できることを、石破氏の演説で示していたのである。ここが出発点だ。

ところが、その原則は高市政権のイラン対応になると急に見えにくくなる。

2026年2月末のイラン攻撃後、日本政府が前面に出したのは、NSC四大臣会合の開催、邦人保護、情報収集、事態の早期沈静化、そしてイランの核兵器開発阻止という論点だった。だが、添付文書が整理している通り、今回の武力行使について日本政府は「国際法違反である」とは一度も明言していない。ロシアのウクライナ侵攻では違法性を明確に断じたのに、今回は法的評価を避けている。そこにあるのは偶然ではなく、政治判断だというのが文書の問題提起である。

この違いを、伊勢崎賢治氏は3月17日の国会で真正面から突いた。

伊勢崎氏はまず、「昨年の国連総会で、石破前総理はイスラエルのガザへの軍事行動をこの上なく強い言葉で非難し、即時停止を求めた」と確認したうえで、日本政府は「国際法や国連憲章に反する、そして民間人の被害を伴う攻撃については、たとえそれが友好国であっても、是々非々で向き合う姿勢をこれからも変えないでいただけるでしょうか」と高市首相に迫った。

この問いは非常に鋭い。

伊勢崎氏はイランを特別扱いせよと言っているのではない。逆だ。ガザで使った原則を、そのままイランにも適用せよと言っているのである。

だが高市首相の答弁は明快ではなかった。

高市氏は、「当時のイスラエルの軍事行動と今般のイランに対する軍事行動では、それぞれ経緯と状況が異なりますので、両者を単純に比較することは困難だと考えております」と述べた。

政治家としては逃げ道のある答弁だろう。

しかし、外交原則として見ると弱い。なぜなら、戦争の背景や当事者の主張が違うことと、国際法や民間人保護の原則まで変わってよいことは、本来同じではないからだ。

伊勢崎氏はさらに踏み込む。

添付文書によれば、伊勢崎氏は、イスラエルと米国によるイラン攻撃は国連憲章上の「武力の行使」に該当し、それが許容されるには自衛権の根拠か安保理の許可が必要だと整理したうえで、「アメリカとイスラエルはイランの脅威に対する自衛と主張しておりますが、国連憲章上の自衛権の要件となる差し迫った脅威の証拠は未だ提示されておりません」と指摘した。

そして何より重いのは、その先である。

伊勢崎氏は、ガザでイスラエルに即時停止を求めたように、「アメリカとイスラエルに対し、同じ強さで即時停止を求めていただけないでしょうか。これは質問というより嘆願に近い」と述べた。

ここに、伊勢崎氏の“正論”がある。

それは、敵か味方かで法を変えるな、ということだ。

国際法はロシアにだけ適用するものではない。

民間人保護は、友好国相手なら後景に退いてよい原則ではない。

法の支配を掲げるなら、その適用は普遍でなければならない。

対照的に、小泉進次郎防衛相の答弁は、危機管理と運用の言葉にとどまった。

小泉氏は、自衛隊は法令を遵守して任務を行うよう厳しい訓練をしている、現地住民との良好な関係を維持し事故の未然防止に万全を期している、そして海外派遣部隊の隊員の過失行為に係る国外犯処罰規定の在り方も含め「不断に検討してまいります」と述べた。

これに対し伊勢崎氏は、それは精神論だと切り返し、「過失を裁く国内法が未整備のままでは、隊員も、そして現地の人々も守れません。国家が命令した行動の結果を法で立証することのできない状況を放置するのは、これは法治国家としての不作為にほかなりません」と述べた。

この差は大きい。

小泉氏が語っているのは管理である。

伊勢崎氏が語っているのは責任である。

安全保障を精神論や運用論だけで済ませず、国家が武力を扱う以上、その法的責任をどう担保するのかまで問う。ここに、紛争現場を知る専門家としての伊勢崎氏の重みがある。

さらに重要なのは、伊勢崎氏が単なる批判者ではないことだ。

彼は出口も示している。質疑の終盤で伊勢崎氏は、「唯一の道は、第三者が対話と交渉の突破口を開くことであります」と述べ、訪米を控える総理に対して、湾岸諸国の大使たちの表に出ない本音に耳を傾け、トランプ大統領に停戦を説得してほしいと訴えた。

これは「何もしない中立」ではない。

日本は第三者として、停戦と交渉の回路を作る役割を果たせ、という提起である。

戦争が始まったあとに「情勢を注視する」「邦人保護に万全を期す」と言うだけでは危機管理にすぎない。本当の外交とは、戦争の拡大を止めるために、対話の回路を作ることだというのが伊勢崎氏の立場だ。

ここで石破氏と高市・小泉の差が、いよいよ鮮明になる。

石破氏はガザでは、少なくとも人道危機と軍事行動に対して、国連の場で明確に言葉を発した。

それに対して高市氏は、イランでは「単純比較は困難」と比較そのものを避けた。

小泉氏もまた、法と原則の問題を管理論へとずらした。

この構図を見ると、石破氏のガザ批判と伊勢崎氏の質疑は、本来一本につながるはずだったことがわかる。

石破氏が示したのは、「友好国側に近い相手でも、人道危機と軍事行動には明確に言う」という姿勢だった。伊勢崎氏が求めたのは、その姿勢をイランにも適用せよということだった。だが高市政権は、その地点で後退したように見える。

その背景にあるのが、対米従属という問題である。

添付文書は、日本が2003年のイラク戦争でも、小泉純一郎政権の下で米国の武力行使を支持した歴史を持つことを想起させる。そして「ロシアには厳格な法理を適用し、アメリカには抑制的な言語を使う。この傾向は一過性ではない。構造的である」と指摘する。

もちろん、日米同盟の存在そのものを否定する話ではない。

しかし、同盟があることと、同盟国側の武力行使に法的評価を言えなくなることは別問題だ。

本当に自立した同盟関係なら、友好国に対しても「ここは国際法上問題がある」「ここは民間人保護の観点から受け入れられない」と言えるはずである。

それができなければ、「法の支配」も「価値外交」も空洞化する。

添付文書が言うように、理念が普遍であるなら、適用も普遍でなければならない。ロシアには「違反」と言い、米国とイスラエルには「状況が違う」と言葉を調整するのであれば、それは法ではなく、政治的レトリックになってしまう。

さくらフィナンシャルとしてこの問題を見るなら、国家の信用を支えるのは軍事力だけではない。

一貫性である。

国民に「法の支配」「国際秩序」「価値外交」を語るなら、その理念は敵にだけ適用する飾りであってはならない。

伊勢崎賢治氏の正論とは、結局そこに尽きる。

法は敵にだけ適用するものではない。

民間人保護は友好国相手なら後回しでよい原則ではない。

外交とは、開戦の理屈を整えることではなく、停戦の道を作ることである。

石破氏はガザでそれに近い姿勢を見せた。

高市氏と小泉氏は、イランではそこまで踏み込めなかった。

そして伊勢崎氏は、そのズレを国会で可視化した。

日本が本当の外交をするなら、必要なのは勇ましい言葉でも、ただの同盟礼賛でもない。

相手が誰であれ、国際法を一貫して適用し、戦争の拡大を止めるために第三者として交渉の回路を作ることだ。

その意味で、いま国会で最も外交らしい外交を語っているのは、政府側ではなく伊勢崎賢治氏なのかもしれない。

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