人工知能(AI)サービスを手掛ける東証グロース上場企業「オルツ」(東京都港区、民事再生手続き中)の元社長・米倉千貴こと姜 千貴容疑者(48)をはじめとする旧経営陣4人が、東京地検特捜部により金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕された。
容疑者らは、架空の取引を繰り返し売上高を水増ししたとされ、急成長を装った経営実態が明るみに出た。特捜部は同日、港区の本社に家宅捜索に入り、帳簿や電子データを押収。AIブームの裏で起きた不正の全容解明が急がれる。
○逮捕された4人と容疑内容
逮捕されたのは、創業者の米倉千貴こと姜 千貴容疑者(48)、前最高財務責任者(CFO)の日置友輔容疑者(34)、および前取締役2人。
特捜部は、4人が共謀して2020年4月から2024年12月期の有価証券報告書に虚偽の売上を記載したとみている。
特に、主力サービス「AI GIJIROKU」の売上高約41億円(2024年12月期)の大半が、実際には存在しない取引によるものだった疑いが強い。米倉千貴こと姜 千貴容疑者は不正の主導的役割を担い、日置容疑者は財務資料の改ざんに関与したとされる。
○不正の仕組み:巧妙な循環取引
オルツの主力製品「AI GIJIROKU」は、会議の音声を35カ国語で文字起こし・要約するAIツールで、年間利用料は16,500円から220万円。2024年12月時点で有料会員2万8,699件を公表していたが、第三者委員会の調査(2025年7月公表)で、これらの数字が大幅に水増しされていたことが判明。
○主な不正の手口は以下の通り:
• 広告費の循環:広告代理店4社に約138億円を「広告宣伝費」として支払い、販売委託先を通じて約137億円を回収する架空取引。実質的な資金移動はほぼゼロ。
• 開発費の還流:事業者2社に研究開発費名目で約16億円を支出後、代理店経由で回収。
• 架空ライセンスの計上:実態のない9,000ライセンス分の売上を計上し、売上高60億円を捏造。社員20名規模の企業としては異常な数字。
• 過大計上の規模:過去の決算で売上の最大9割が虚偽。2024年12月期の粗利率94.6%や販管費80.5億円(売上の75%超)も、異常値として監査で問題視された。
これらの不正により、オルツは2024年10月の上場時に公開価格540円、初値570円で資金調達に成功したが、実際の資金繰りは極めて悪化しており、2020年4~9月の預金残高は月内1,000万円を下回る時期もあった。
事件の経緯:上場から崩壊まで
• 2014年11月:米倉氏がオルツを設立。AIを活用した議事録ツールやパーソナルAI「P.A.I.」を開発し、キーエンスやシンガポール政府との提携を発表。
• 2020年:AI GIJIROKUの提供開始。競合サービスとの差別化で注目を集める。
• 2024年10月:東証グロース市場に上場。主幹事は大和証券、監査法人はシドー。上場後、業務提携の発表で株価が上昇。
• 2025年4月:売上水増し疑惑が浮上し、決算発表を延期。第三者委員会を設置。株価はストップ安(337円、19%下落)。元社員がYouTubeで循環取引の内部資料を公開。
• 4月:証券取引等監視委員会(SESC)が強制捜査を開始。広告代理店など関係先も対象。
• 6月:粉飾疑惑が報道され、補助金返還の可能性が浮上。
• 7月:第三者委員会が報告書を公表。米倉社長が辞任。監査法人と大和証券の審査責任が問題視される。
• 9月:東証が上場廃止を決定(上場後わずか10カ月)。オルツは民事再生法適用を申請し、事業継続が困難に。従業員の大半に雇用終了を通知。
• 10月9日:特捜部が米倉千貴こと姜 千貴容疑者ら4人を逮捕。本社に家宅捜索。
○事件の背景と影響
オルツはAIブームに乗って急成長をアピールしたが、実態は脆弱だった。有料会員数は公表の8万アカウントに対し実数5,170件で、大半が無料トライアル。
提携発表も実質的な成果を伴わない「見せかけ」が多かった。株価は上場時の570円から90円台に暴落し、投資家に多大な損失をもたらした。
• 監査と証券会社の責任:大和証券の事前調査や監査法人シドーの検証不足が批判の的。X上では「上場審査の甘さ」「監査法人の責任」を指摘する声が相次ぐ。
• 業界への波及:AIスタートアップの信頼性に疑問符がつき、東証グロース市場全体のガバナンス強化が課題に。金融庁は上場基準の見直しを検討する可能性。
• 世論の反応:Xでは「投資家への補償を」「上場制度の失敗」との怒りが広がる。一部で「AI業界全体が怪しい」との誤解も見られ、業界関係者は風評被害を懸念。
○今後の展開
特捜部は、米倉千貴こと姜 千貴容疑者らが否認する中、不正の全貌解明を急ぐ。オルツは民事再生手続き中だが、事業譲渡やスポンサー確保の目途が立たず、清算の可能性が高い。投資家からの損害賠償訴訟(総額10億円規模)も増える見込みだ。
この事件は、急成長を装う新興企業のリスクを浮き彫りにし、AI業界や新興市場の信頼回復に向けた議論を加速させそうだ。
さくらフィナンシャルニュース
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