2019年総選挙での労働党大敗を受け、党首選に立候補し、2020年4月に労働党党首になったキア・スターマー氏(61歳)の労働党が
政権を14年ぶりに奪還したのは、右派であるブレグジット派、ナイジェル・ファラージ氏(60)党首率いるリフォームUKが5議席を
確保したからです。保守派の票を分散させ、初当選にこぎつけたナイジェル・ファラージ氏。どんな人物なのでしょうか?
「EU(欧州連合)は平和と調和をもたらすどころか、反乱と暴力を引き起こすだろう」
「若者の21%が仕事を見つけられない時に大量の移民を誘致するのは問題だ。公的財政が大きな負担にさらされている時にEUに1日5000万ポンドを寄付するのは問題だ。」
「ユーロ(EU)・タイタニック号は今や氷山に衝突した。そして、救命ボートの数が足りないのだ。」
マシンガンのように矢継ぎ早、次から次へとEUに親でも殺されたかのように捲し立てるこの男こそブレグジットの立役者と言われるナイジェル・ファラージ氏。下院選で7度も落選し、ついに七転び八起きとなりました。
〈英国議会選挙[UKエレクション]で初当選!〉
ナイジェル・ファラージ氏は、改革法案でブレグジット(EU離脱)を求める「離脱党」を前身とするポピュリスト政党リフォームUKは、2024年7月5日、英国クラクトン・オン・シーで行われた英国議会選挙で初の議席を獲得した後、初の記者会見で挨拶、我健在をアピールしていました。
5年後に予定される次回選挙に照準を合わせ、長期戦を見据えていると言います。
「2029年をにらむと同時に、コモンセンス(良識)のための大衆運動を英国全土で起こすことを狙う長期目標に向けた最初の重要な一歩だ」と語りました。
自身にとっての成功は、リフォームUKが5年後に、サイレントマジョリティー(物言わぬ多数派)」が望む英中道右派の
「劇的な再編」のきっかけになることだそうです。
英国のEU離脱運動の推進力であり、ドナルド・トランプ前米大統領の親しい友人で“イギリスの側近““火炎放射器“とも言われているナイジェル・ファラージ氏が初めて国会議員に選出され、同氏が率いる新興右派政党リフォームUKは英国の政治に革命を起こそうとしています。
ファラージ氏の改革(リフォーム)UK党は、合法および不法移民率を引き下げることができなかったとして保守党を攻撃。そのメッセージは社会的に保守的な有権者の相当数の支持を得たようで、リフォームUK党の候補者は右派票を分裂させ、保守党の敗北に貢献しました。
ファラージ氏が現在、ここまで来るには波乱万丈の人生がありました。
南ロンドンのパブリック・スクール、ダリッジ・カレッジ時代にジョン・スチュアート・ミルの『自由論』を読み、それ以来古典的
自由主義思想の熱心な支持者となります。
また保守党内で右派的な言動を以て知られたキース・ジョセフ氏がダリッジ・カレッジを訪れた際、その言動に感銘を受けて保守党に入党。
ジョセフ氏に連なるマーガレット・サッチャー氏が保守党党首→首相になると、その熱烈な支持者となります。
ファラージ氏は左翼の英語教師らに敵視されていたと言います。
これが原因かはわかりませんが
1981年、17歳のファラージ氏と全然面識のなかった英語教師クロエ・ディーキンが、ダリッジ・カレッジのデイビッド・エムズ校長に手紙を書き、ファラージ氏の「ファシスト」的見解に対する懸念を他者が表明したことを理由に、17歳のファラージ氏を学長に任命する決定を考え直すよう求めています。
エムズ校長はその懸念を否定し、カレッジのテリー・ウォルシュ副校長も同様に否定しました。
ウォルシュ副校長は後に、ファラージ氏のことを「特にユーモアのセンスのない左翼の英語教師達を、挑発することで有名だった。」と発言しています。ファラージ氏はのち「私が極右政治に関わっていたという非難は全くの虚構」と述べました。
ファラージ氏はパブリックスクール卒業後大学に進学せず、シティ・オブ・ロンドンの商品先物取引市場で主に鉛や亜鉛などの
非鉄金属売買取引等、金融機関などの仕事を転々とします。
《1度めの大事故》
1985年に、ファラージ氏はケント州オーピントンのパブで過ごした後、交通事故に遭い重傷を負ってしまいます。
当初左脚を切断しなければならないと言われましたが奇跡的に切断することなく怪我から回復、牽引装置(滑車と重り)をつけ足をギブスで固定し1年以上過ごすこととなり、この頃に最初の妻となる人と出会います。
彼女はグリアンヌ・ヘイズさん。アイルランド人で、彼の治療を担当している看護師でした。
《精巣癌にかかるも》
その後の1986年、ファラージ氏は精巣癌になり1つの睾丸を取り除く手術を受けます。
斯くして看護師、グリアンヌさんと結婚。サミュエルさん(1989年生まれ)とトーマスさん(1991年生まれ)の2人の息子をもうけました。
しかし2人の関係は1997年に終止符を迎えました。その2年後にドイツ国籍の女性と再婚します。
伝えられるところによると、1996年にグリアンヌさんと結婚していたときに、ドイツ国債ブローカーのキルスティン・メアさんと出会いました。ファラージ氏もドイツ系の曾祖父を持つと言われ、気が合い、浮気か?と言われていますが、グリアンヌさんは既にこの時ファラージ氏と別居状態が続いていたと言います。
彼はまた、キルスティンさんとの間に2人の娘、ビクトリアさん(2000年生まれ)とイザベルさん(2005年生まれ)をもうけました。2人はドイツ語と英語のバイリンガルです。バイリンガル教育はファラージ氏の希望でした。
結婚15年目にして既に長年の別居生活とされるキルスティンさん曰く
「英国はファラージ氏と対決しなければ、取り返しのつかない変化を招く恐れがあるわよ」
と脅し「彼は、規則正しい生活が出来ておらず心配している」と言い、「アドレナリンがいつもみなぎっているわ」と話していました。
そして現在ファラージ氏はまた別の女性と一緒になっています。お相手はフランスの政治家、ローレ・フェラーリさん。
彼女は2017年からこのEU離脱支持者と密かに交際しているが、これまで二人の人生について公に語ったことはありません。
ファラージ氏は、1999年に欧州議会(EP)に初当選。
2004年、自由と直接民主制の欧州代表に就任。
2006年に極右UKIP(イギリス独立党)の党首に選出され、2009年の欧州議会選挙では英国で2番目に多くの票を獲得。
《2度目の大事故 飛行機墜落》
ファラージ氏はまたしても大事故を起こしてしまいます。
飛行機は選挙当日2010年5月6日、横断幕を掲げた二人乗りの飛行機をノーサンプトンシャーのヒントン・イン・ザ・ヘッジズ飛行場から離陸させた直後に墜落。
ファラージ氏(46歳)とパイロットのジャスティン・アダムス氏は重傷を負いました。航空事故調査局(AAIB)の報告書によると、
この時の横断幕が尾翼に絡み付いて機首が下がったそうです。アダムス氏は、機首が上がらなかったと操縦不可能に陥ったと話していました。
《漁業団体は落胆》
2016年の国民投票でイギリスのEU離脱をそれはもう強く訴えていたナイジェル・ファラージ氏は、合意を「完璧からはほど遠い」と批判。特に漁業分野では「ひどい合意」だとしたが、「5年前よりはずっとまともだ」と述べた。
「私は漁師であり、生涯保守党員で、ブレグジットに投票した。けど二度と彼らに投票するつもりはない」
漁師たちはブレグジットに振り回されました。
「私は絶対にもう保守党に投票しません。私は生涯ずっと保守党に投票してきました。しかし、すべてがめちゃくちゃです。ブレグジットで約束されたことの後では、もう保守党を信頼しません。英国、あるいはスコットランドの漁業業界の大多数が同じように感じていると思います。」
スコットランド、ピーターヘッド の漁師、ジェームズ・スティーブンは40年以上ヨーロッパ最大の漁港があるアバディーンシャーのピーターヘッドを拠点にして働いてきました。彼は2016年にブレグジットに投票。ブレグジットによって自分のコミュニティが英国海域での漁業でより大きなシェアを獲得できると期待したからです。
しかしあの国民投票2016年から月日が経ち、同氏は「嘘の塊」を売りつけられたと感じており、総選挙で保守党に票を奪われたと述べました。
結果その漁師たちは、EUの割当量のために何トンもの良質の獲った魚を海に戻すという無駄な慣行をしなければならなかったのです。
シェフであるファーンリー・ウィッティングストール氏はこうした廃棄に反対するキャンペーンを立ち上げ彼の請願書には87万以上の署名が集まりました。この指示の結果、EUは廃棄政策を変更したのです。
一方、ファラージ氏は、既存のEU法の改正案を提出する権限を持つ欧州議会の漁業委員会のメンバーでした。
ファラージ氏は、招待された42の予定された会議のうち、たった1つしか出席しませんでした。
実際、ファラージ氏の出席記録は、750人の欧州議会議員の中で最も低い結果となりました。
EUの共通漁業政策では、各加盟国が自国の漁獲割当量を自国の漁船団にどのように配分するかを決定するものです。
したがって、漁獲割当量の配分は英国政府によって決定され、ブレグジットよりもEUに従ったほうが広い漁獲割当を得られたのです。
EUは数年前から、持続可能な小規模漁業と地域社会を支援するために社会的配分を推奨してきましたが、英国政府のせいで、現在、小規模漁業者が保有しているのはわずか4%です。
これはファラージ政策にとって大失敗となりました。未だにスコットランドの一部漁業関係者に、根に持たれています。
2020年1月にボリス・ジョンソン首相になり、ブレグジット(EU離脱)は実施されました。
欧州議会でファラージ氏率いるブレグジット党はイギリス国旗を振って議会を後にした。残った欧州議会議員は蛍の光を合唱し、さよならに応じた歴史的一幕となりました。
2024年の総選挙でファラージ氏は再び改革UKの党首となり、ウェストミンスター議席獲得に向けた8度目の挑戦でクラクトンで勝利したわけですが
率直で物議を醸すファラージ氏は、移民問題について議論する際には、人騒がせで対立的な言葉を使うことで長年知られています。立候補を表明して以来、ファラージ氏は支持者に対し、英国亡命希望者の「侵略」を警告しており、
中でも西側諸国が、ロシアのウクライナ侵攻を「挑発した」と発言して政敵の怒りを買ってしまったばかりでした。
ファラージ氏はUKエレクションの前6月3日に記者会見し「医療や交通、公共サービス、英国の何もかもが機能していない。
政治的反乱を起こす」と強調していました。
友人のトランプ氏に助言を求めたかどうかを聞かれ「彼はほかにやることがある。TikTok(ティックトック)の
アカウント開設などで忙しい」と冗談を飛ばしていました。
その繋がりはあると思いますが、ファラージ氏の末娘、イザベラさんはイギリスのアナウンサーでもあり、米国下院でインターンとして働いており、以前は下院でインターンシップを終えていました。
しかしイザベラさんの長年付き合っているボーイフレンドの両親が、麻薬・薬物所持で逮捕されました。この事はファラージ氏直接には全く関係の無い事ですが、末娘イザベルさんに降り掛かったゴシップでした。しかしファラージ氏は娘のボーイフレンドはとても信頼できる良い子だとして彼を庇いました。
とかく波乱万丈な人生はその人となり故か、その人物像はかなり日本人像とは逸脱しています。また、7/13日(アメリカ日付)
ペンシルベニア州で暗殺未遂に遭った友人のトランプ元大統領に、ファラージ氏はどんな言葉をかけたのでしょうか?
Xにポストした書き込みによると、「主要メディアは私の友人ドナルド・トランプに対する憎悪の物語を広めています。
彼らが自分自身に誇りを持ってくれることを願っています。 最低な人々よ」メディアはトランプ氏の暗殺未遂で、支持者を
団結させ揺動票をまとめられることを恐れていると見られます。
《日本の政治家に例えたら》
何回も命を失いそうになりながらも戦う姿は、立憲民主党、佐賀選出衆議院議員原口一博氏(65歳)にも似たものを感じさせます。
原口一博氏もがんを発症しましたが、克服し、現在政治活動を精力的に行っています。
尚、小池百合子氏も2回ほど、乗る予定だった飛行機が墜落したと発言し、運命の女性(ひと)として過去に新聞やテレビで話題になりましたが、『女帝 小池百合子』で、全くの嘘と暴露されています。
また、過激な言論や時には体を張るパフォーマンスはつばさの党党首黒川敦彦氏も負けてはいません。NHK日曜討論出演中に「海外に不透明な金の動き宗教団体が海外の勢力に金を流している」「安倍のせいだー」と歌い出し「おじいちゃんの代からCIA」と言い放つ、かと思えば体に有刺鉄線を巻き街宣、ガードレールの上に立ち飛び跳ねる、電話ボックスの上にひざまずき、とパフォーマンスなら、45歳の黒川氏の方が上です。
尚、東京15区衆議院議員補欠選挙で都知事続投の小池百合子氏の逆鱗に触れて現在拘留中です。
総じて、ファラージ氏は議会活動では消極的だが、政治的メッセージの発信では過激な面があるものの、トランプ元大統領とも今後の親交、日本の政治家とも一定の類似点が見出せることを期待しています。
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