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災害とデマ、そして情報支配の仕組みを問う

熊本地震「ライオン放獣」から考えるメディアとファクトチェックの権力

災害時に現れる「もう一つの危機」

2016年の熊本地震で広まった「ライオンが動物園から放たれた」という虚偽情報は、SNS時代の象徴的な事件だった。市の動植物園に問い合わせが殺到し、最初に投稿した若者は偽計業務妨害容疑で逮捕された。幸い大事には至らなかったものの、この事件は「災害時に人々が頼りとする情報源」がいかに脆弱であるかを示した。

日本赤十字社が実施した最新調査でも、災害時に4人に1人が「虚偽情報に接した」と回答している。注意喚起やファクトチェックを行った人がいる一方で、一定数は誤情報を拡散し、さらにはそれを基に行動した。情報がライフラインそのものになる時代において、誤情報は「二次災害」を引き起こす危険性を孕んでいる。

テレビ・新聞は本当に「正しい」のか

調査では避難行動の判断材料として「テレビ」が最も多く、「インターネット」がそれに次いだ。確かにテレビや新聞は「信頼性が高い」と思われがちだ。しかし、大手メディアもまたスポンサー企業や政治的圧力から独立しているわけではない。

例えば、日本ファクトチェックセンター(JFC)。2022年に設立された同機関は、Google.orgから2年間で最大150万ドル、Yahoo!から2000万円の資金提供を受けている。大手プラットフォーマーの資本を背景に「誤情報対策」を担う姿は、一見公益的に見える。しかし逆に言えば「どの情報を正しいとするか」を資本とスポンサーがコントロールできる構造でもある。

つまり、テレビ・新聞、そしてファクトチェック機関が「唯一の正解」を提示する仕組みが完成してしまえば、そこには健全な多様性が失われる危険がある。

SNSは「混乱の場」か「意図的な実験場」か

SNSで流れるデマの中には、単なる悪ふざけを超えた「意図的な工作」があるのではないかという疑念も根強い。偽の救助要請を投稿し、実際に警察や消防を動かした例もある。これが組織的に行われているとすれば、災害対応を混乱させ、行政不信を生むことが目的だった可能性すらある。

さらに、SNS全体の信頼性を低下させれば「結局テレビや新聞しか頼れない」という空気を強められる。こうした情報工作の仕組みは、アメリカ国防総省が推進してきた「IIA(インタラクティブ・インターネット・アクティビティー)」の考え方と重なる。IIAは、インターネット空間で人々の認識や行動を操作するためのプログラムであり、国家や資本に有利な方向に世論を誘導する目的で活用される。

SNSに意図的に流されたデマが「自由な市民の声」を信用できないものにし、逆に大手メディアの権威を補強する――これは偶然ではなく、ある種の構造的必然と考えられる。

世界規模の支配構造と情報戦

こうした情報支配の背景には、金融資本家と軍事・技術開発の連携がある。イスラエルの「タルピオット・プログラム」はその典型だ。国家の精鋭プログラムで選抜された人材が、サイバー戦や軍事技術だけでなく世界のハイテク企業へと送り込まれている。サイバー空間の防衛と攻撃の両方を担えるエリートが、国際的な技術支配の要を形成しているのだ。

さらに「グレーター・イスラエル構想」と結びついた経済圏では、サウジアラビア北西部に建設中の未来都市「NEOM」に最新のIT・軍事技術が集積している。ここにはAI、監視技術、金融ネットワークが結合し、資本家の思惑に沿った「理想都市=管理社会」の青写真が描かれている。

私たちが日常的に利用するSNSや検索エンジン、その背後にあるプラットフォームの力学は、この世界的な流れと無関係ではない。

市民はどう向き合うべきか

では、一般市民はどうすればよいのか。

第一に、テレビや新聞を「絶対の真実」とせず、SNSも「無秩序な虚偽」と切り捨てない姿勢が必要だ。複数の情報源を突き合わせ、自らの頭で吟味する「情報リテラシー」が不可欠である。

第二に、ファクトチェック機関の存在を鵜呑みにせず、資金の出所や背後の意図を読み解くことだ。誰が資金を出し、誰が利益を得るのかを常に問うことで、情報の力学を透視できる。

第三に、地域の防災訓練や共助のネットワークを強めること。日本赤十字社の調査では7割が「訓練未参加」と答えているが、こうした基盤がなければ情報の真偽を見抜く力も育たない。実際の現場で信じられるのは、最終的に「顔の見えるつながり」だからだ。

「情報戦の時代」を生き抜くために

現代社会は「物理的な災害」と「情報の災害」が重なる時代である。地震や豪雨の被害に加えて、ネット空間では意図的なデマや情報操作が渦巻き、人々の判断を狂わせる。

テレビ・新聞、SNS、ファクトチェック、IIA、NEOM…。これらはすべて断片的な現象ではなく、グローバル資本と国家戦略が交差する「情報支配の地図」に描かれた線の一部である。

その中で市民ができるのは「受け身の視聴者」ではなく「主体的な読者・行動者」として立つことだ。情報の正しさを一つの権威に委ねず、複数の視点を検証し、時に疑う。小さな備えや地域の協力を積み重ねる。そうした行動が、金融資本や軍事エリートによる「情報統治」に対抗しうる唯一の道である。

世界の未来がNEOMのような管理社会に収束するのか、それとも多様な市民の声が共存する自由な社会を築けるのか。その分岐点に私たちは立っている。

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