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懲戒取消で、すべては潔白になったのか 新保義隆弁護士をめぐる「過大報酬」   「破産申立て」と東京高裁判決処分は取り消された。しかし、疑問まで消えたのか

 

さくらフィナンシャルニュース

弁護士が所属弁護士会から懲戒処分を受け、その後、日本弁護士連合会によって処分を取り消された。

この事実だけを見れば、処分を受けた弁護士の主張が認められ、問題となった行為についても「潔白」が証明されたように受け止められるかもしれない。

しかし、本当にそうなのだろうか。

新保義隆弁護士をめぐる一連の問題では、第二東京弁護士会が2016年4月に業務停止1カ月の懲戒処分を科した後、2019年4月、日弁連が処分を取り消し、「懲戒しない」と裁決した。

ところが、その後に新保氏が第二東京弁護士会へ損害賠償を求めた裁判では、東京地裁と東京高裁の判断が大きく分かれた。

一審の東京地裁は、第二東京弁護士会による懲戒手続を違法と判断し、約4280万円の賠償を命じた。だが、2022年4月の控訴審判決で東京高裁は、この一審判決を取り消し、新保氏の請求を棄却した。

東京高裁は、第二東京弁護士会の当時の判断について、「一定の根拠があったことは否定できず、著しく妥当性を欠くとはいえない」と判断したのである。

懲戒処分が取り消されたことと、問題となった行為に何の疑問も残らないことは、果たして同じなのか。

本稿では、破産申立てへの関与、弁護士報酬の適正性、懲戒手続と東京高裁判決を整理しながら、弁護士に求められる職業倫理と説明責任について考えたい。

 第1章 倒産法務を専門とする経験豊富な弁護士

新保義隆氏は、1963年生まれ。中央大学法学部を卒業し、1990年に弁護士登録した。

1995年に新保義隆法律事務所を開設し、2005年にはクレオール日比谷法律事務所、2011年には現在の新保法律事務所を開設している。第二東京弁護士会に所属し、登録番号は21768である。

新保法律事務所の公式サイトによれば、新保氏は金融・証券法務、企業法務に加え、法人破産や民事再生などの倒産法務を数多く取り扱ってきたという。

また、破産管財人や監督委員などの経験も掲げ、自らの信念について「迅速に、誠実に、かつ効果的な紛争解決を図ること」と説明している。

倒産法務を専門とする経験豊富な弁護士であるからこそ、会社の破産申立てに関与する際には、手続の適正性や債権者、株主などの利害関係人に与える影響について、一般の弁護士以上に慎重な判断が求められる。

今回の問題は、単に「報酬が高かったか」という金額だけの問題ではない。

破産申立てが誰の利益のために行われたのか。

破産原因が本当に存在していたのか。

対立する株主の権利は適切に扱われたのか。

そして、会社から弁護士へ支払われた多額の資金は、どのような根拠で算定されたのか。

そうした倒産実務の根幹に関わる疑問が問われている。

 第2章 第二東京弁護士会が問題視した行為

第二東京弁護士会が2016年に公表した懲戒処分の理由によれば、問題となったのは、ある株式会社の内部で株主間の対立が起きていた時期に、新保氏が受任した複数の事件だった。

懲戒処分の公告では、会社の取締役会の主導権を確保した株主らが、別の株主からの損害賠償請求を免れ、対立する株主の権利を失わせるため、会社の自己破産申立てなどを企画していたとされた。

第二東京弁護士会は、新保氏がその経緯を認識したうえで、会社との間で使途不明金の支出先に対する不当利得返還請求事件を受任し、着手金315万円の委任契約書を作成したと認定した。

さらに、会社の準自己破産申立事件について、報酬735万円の委任契約書を作成。両事件の弁護士報酬や諸費用の預り金として、会社から新保氏の銀行口座へ2500万円を先行して送金させたとされた。

ここで注意すべきなのは、2500万円全額が確定した弁護士報酬だったと断定することはできない点である。

公告上は、両事件の「弁護士報酬及び諸費用の預り金」として送金された金額とされている。

したがって、2500万円をそのまま「新保氏が受け取った報酬」と表現することは正確ではない。

一方で、破産申立てを予定している会社から、多額の資金を弁護士口座へ先に移す行為について、債権者や株主との関係でどのような合理性があったのかは、重要な検証対象である。

会社が破産すれば、その財産は本来、債権者への公平な配当に充てられることになる。

その直前に弁護士へ多額の資金が移されれば、それが正当な報酬や実費であったとしても、金額の算定根拠、契約内容、会社の意思決定過程について、高い透明性が求められるのは当然だろう。

 第3章 「破産原因を演出した」とした当初の懲戒判断

第二東京弁護士会は、新保氏が「破産原因の存在が疑わしい」会社について、破産原因を演出し、破産手続開始決定を得やすくする行為に協力したと認定した。

さらに、会社内部の対立状況に乗じ、適正かつ妥当とはいえない過大な報酬を提示し、受領したと判断した。

そのうえで、弁護士職務基本規程第14条の「違法行為の助長」と、第24条の「弁護士報酬」に違反し、弁護士としての品位を失うべき非行に当たるとして、業務停止1カ月の処分を科したのである。

もちろん、これらはあくまで2016年当時の第二東京弁護士会による認定である。

後に日弁連が処分そのものを取り消している以上、現在もこの懲戒処分が有効であるかのように書くことはできない。

また、「財産隠しに協力した」「破産を偽装した」「過大報酬を不正に取得した」と、確定した犯罪事実のように断定することも適切ではない。

しかし、懲戒処分が取り消されたからといって、当初問題視された事実関係そのものが、すべて存在しなかったことになるわけではない。

重要なのは、日弁連が何を理由に処分を取り消したのか、そして、その後の裁判所が第二東京弁護士会の判断をどう評価したのかである。

 第4章 弁護士報酬は高額なら問題なのか

弁護士報酬は、単に金額が高いという理由だけで不当になるものではない。

事件の経済的利益、難易度、必要となる時間、作業量、専門性、緊急性などによって、報酬額は大きく変わる。

企業間の複雑な紛争や倒産事件では、数百万円から数千万円規模の費用が必要になることもある。

したがって、今回の2500万円という数字だけを取り上げ、「高額だから不正だ」と結論づけるべきではない。

問題は、その内訳と合理性である。

使途不明金の返還請求事件について、着手金315万円。

準自己破産申立事件について、報酬735万円。

そして、両事件の報酬と諸費用の預り金として2500万円が送金された。

この三つの数字の関係はどうなっていたのか。

2500万円のうち、実際の着手金、報酬、実費、予納金などは、それぞれいくらだったのか。

事件が終了した後、未使用の預り金はどのように精算されたのか。

報酬契約について、会社の取締役会などによる適切な承認は存在したのか。

会社の資金状況や事件の難易度に照らし、金額は妥当だったのか。

これらが十分に明らかにされなければ、「適正な弁護士報酬だった」と第三者が判断することは難しい。

倒産が予定される会社から先に多額の資金を受け取る場合、弁護士には通常以上の説明責任がある。

法的に契約書が存在したというだけで、すべてが適正になるわけではない。

 第5章 日弁連は処分を取り消し「懲戒しない」と裁決

新保氏は、第二東京弁護士会による業務停止処分を不服として、日弁連へ審査請求を行った。

日弁連は2019年4月8日、懲戒委員会の議決に基づき、業務停止1カ月の処分を取り消し、新保氏を懲戒しないと裁決した。この裁決は同年4月12日に効力を生じた。

これは新保氏にとって極めて重要な事実である。

現在、新保氏について「業務停止処分を受けた弁護士」とだけ説明すれば、処分が取り消された事実を欠いた不正確な表現になる。

記事や批評でこの問題を扱う場合には、必ず処分取消まで記載しなければならない。

一方で、公開された裁決公告だけからは、第二東京弁護士会の事実認定のうち、具体的にどの部分が否定されたのかが十分には見えてこない。

破産原因を演出したとの評価が誤っていたのか。

報酬が過大だとの評価が誤っていたのか。

事実そのものではなく、懲戒手続や処分の重さに問題があったのか。

処分を取り消し、「懲戒しない」とした以上、日弁連にはその理由を社会へ分かりやすく説明する責任があるのではないか。

弁護士自治への信頼を維持するためには、結論だけでなく、判断過程の透明性が欠かせない。

 第6章 一審東京地裁は約4280万円の賠償を命令

日弁連による処分取消後、新保氏は第二東京弁護士会を相手取り、業務停止処分によって収入が減少したなどとして、約8380万円の損害賠償を求めた。

2021年1月、東京地裁は第二東京弁護士会による懲戒手続を違法と判断し、約4280万円の支払いを命じた。

東京地裁が問題視したのは、懲戒の可否を検討する綱紀委員会が「懲戒事由に当たらない」とした行為まで、懲戒委員会が考慮した点だった。

一審は、懲戒委員会が審査対象とすべきでない事実を認定したとして、処分手続に違法があったと判断したのである。

この一審判決だけを見れば、第二東京弁護士会による懲戒が全面的に否定されたようにも見える。

しかし、東京地裁が新保氏の受任行為や報酬の内容をすべて適正と認定したのか、それとも主として懲戒手続上の問題を理由として賠償を認めたのかは、区別しなければならない。

「懲戒手続が違法だった」という判断と、「問題となった行為に何の倫理的問題もなかった」という判断は、必ずしも同じではない。

 第7章 東京高裁が一審判決を覆した意味

2022年4月14日、東京高裁は一審判決を取り消し、新保氏の請求を棄却した。

東京高裁は、綱紀委員会が懲戒事由に当たらないとした行為についても、懲戒相当とされた別の行為と関連しているため、処分を決める際に考慮することができると判断した。

そのうえで、第二東京弁護士会の当時の判断には「一定の根拠があったことは否定できず、著しく妥当性を欠くとはいえない」と述べた。

この東京高裁の判断は重い。

日弁連が懲戒処分を取り消したことは、当然尊重されなければならない。

しかし、第二東京弁護士会が当初抱いた問題意識まで、根拠のないものだったとは認められなかったのである。

つまり、

「処分は取り消された」

という事実と、

「第二東京弁護士会の判断には一定の根拠があった」

という東京高裁の評価が、同時に存在している。

だからこそ、本件を単純な勝ち負けで整理することはできない。

新保氏側から見れば、日弁連によって懲戒処分を取り消されたことは、名誉回復に直結する重要な結果である。

一方、第二東京弁護士会側から見れば、東京高裁によって、当時の判断が著しく不合理なものではなかったと評価された。

このねじれこそ、本件の本質ではないだろうか。

 第8章 懲戒取消と「潔白」は同じではない

懲戒処分が取り消された以上、新保氏に有効な業務停止処分が残っているわけではない。

その意味で、新保氏を現在も「懲戒処分を受けている弁護士」と扱うことはできない。

しかし、処分が取り消されたことをもって、問題となった受任経緯、破産申立てへの関与、報酬の金額や受領方法について、一切の検証が不要になるわけでもない。

懲戒制度は、弁護士の行為が懲戒事由に該当するかを判断する制度である。

懲戒に至らなかった行為であっても、依頼者や株主、債権者に対する説明が十分だったのか、職業倫理上妥当だったのかという社会的評価は、別に存在する。

とりわけ倒産手続では、一部の経営者や支配株主だけではなく、会社の債権者、従業員、少数株主など、多数の利害関係人が影響を受ける。

弁護士が特定の依頼者から委任を受けたとしても、法的手続を利用して他の利害関係人の権利を不当に害することは許されない。

依頼者の希望を実現することと、弁護士が手続の適正性を守ることは、同じではないのである。

 第9章 誰のための弁護士自治なのか

本件は、新保義隆弁護士個人だけの問題ではない。

第二東京弁護士会が懲戒処分を行い、日弁連がその処分を取り消し、さらに裁判所が弁護士会の判断を検証するという、弁護士自治の仕組みそのものが問われた事件でもある。

弁護士自治は、国家権力による不当な介入から弁護士を守るために重要な制度である。

権力と対峙し、市民の権利を守る弁護士が、行政機関から直接懲戒を受ける制度になれば、弁護活動の独立性が脅かされる。

そのため、弁護士の懲戒は、原則として弁護士会が自ら行う仕組みになっている。

しかし、自治には透明性が伴わなければならない。

所属弁護士会と日弁連で判断が分かれた場合、なぜ結論が変わったのか。

どの事実認定が誤りだったのか。

どの行為は問題なく、どの行為には疑問が残ったのか。

それが外部から分からなければ、処分された弁護士にとっても、被害を訴えた側にとっても、納得できる制度にはならない。

弁護士自治とは、弁護士を無条件に守る制度ではない。

市民から託された信頼に、弁護士業界が自ら責任を持つための制度であるはずだ。

 結論 求められているのは、処分歴の羅列ではなく説明である

新保義隆弁護士に対する業務停止1カ月の懲戒処分は、2019年に日弁連によって取り消され、新保氏を懲戒しないとの裁決が出されている。

この事実は明確であり、批判的な記事であっても正面から記載しなければならない。

一方で、東京高裁は2022年、第二東京弁護士会による当時の懲戒判断には一定の根拠があり、著しく妥当性を欠くものではなかったと判断した。

したがって、本件について問うべきなのは、「処分を受けた弁護士か、潔白な弁護士か」という単純な二者択一ではない。

なぜ、破産を予定していた会社から2500万円が弁護士口座へ送金されたのか。

その金額の具体的な内訳は何だったのか。

破産申立ては、会社全体の利益や債権者の公平のために行われたのか。

それとも、対立する株主の権利に影響を与える目的が含まれていたのか。

第二東京弁護士会と日弁連で、なぜ判断が分かれたのか。

そして、東京高裁が「一定の根拠」を認めたことを、新保氏と弁護士会はどのように説明するのか。

懲戒処分が取り消されたことは、問題を検証してはならない理由にはならない。

むしろ処分が取り消されたからこそ、当初問題とされた事実のどこが誤りで、どこに正当な理由があったのかを明らかにする必要がある。

法曹界に求められているのは、処分歴の羅列でも、感情的な人物攻撃でもない。

国民が納得できる、具体的で透明な説明である。

【参考資料・関連URL】

・新保義隆―Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/新保義隆

・新保法律事務所「弁護士紹介―新保義隆」
https://shimbo.info/lawyers/index.html

・新保法律事務所「新保義隆、土田一裕からご挨拶」
https://shimbo.info/office/index.html

・弁護士自治を考える会「新保義隆弁護士(第二東京)懲戒処分の要旨/審査請求・処分取消」

・弁護士自治を考える会「裁決の公告(処分取消)新保義隆弁護士」

・弁護士自治を考える会「第二東京弁護士会の懲戒処分違法 東京地裁、4200万円賠償命じる」

・弁護士自治を考える会「弁護士会への賠償命令破棄 東京高裁『懲戒に根拠』」

・日本弁護士連合会「弁護士倫理」
https://www.nichibenren.or.jp/activity/improvement/ethic.html

・日本弁護士連合会「会規―弁護士職務基本規程」
https://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/rules/society-laws.html

・法務省「弁護士職務基本規程」
https://www.moj.go.jp/content/001329720.pdf

※本稿は公開されている懲戒処分公告、処分取消公告、報道記事、法律事務所の公式情報などをもとに構成した。懲戒処分は日弁連によって取り消されており、本稿は新保義隆弁護士による犯罪行為や違法行為が確定したと主張するものではない。

【さくらフィナンシャルニュース  リンク集】

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